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前田 陽一郎
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前田 陽一郎

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前田 陽一郎

雑誌「LEON」副編集長

ここではレオンを日々作っていて思うこと、もしくは掲載できなかったけど個人的に買ったものや、興味をもったこと、レオンをさらに楽しんでいただくための裏読みの方法(ここが一番読んでもらえそう!)また至極個人的趣味までを、ブログというより、コラムとして書いてみようかな、と。 (ネタには困らないと思うのですが、元来の筆不精、というより無精者なので、どれほど続くかは不明ですが…、お付き合いくださいませ)

雑誌「LEON」のホームページ
http://www.shufu.co.jp/
magazine/leon/

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LEON
ファッション専門誌でもクルマ専門誌でも時計専門誌でもありません。いつまでも艶っぽさを失わない「モテるオヤジ」のためのクオリティ・ライフ実用誌です。

> 雑誌「LEON」のホームページ

持っていて恥ずかしい本を作りたい!
Sep 08, 2011

『LEON』の発売日になると問い合わせの電話が鳴りやまない、という相変わらずの完売伝説を更新し続ける『LEON』も今年9月で10年目を迎えます。大きな時流の変化もあり世の中の気分もより安定志向へと向かいつつある今、編集長代理として前田さんはこれからのメンズファッションをどう考えているのでしょうか。

大和 前田さんが編集長代理として現場を統括されるようになってからの3年間、「ボリオリ」の楽ジャケや「PT01」のブレイクといったように、新しいベーシックが次々に生まれてきましたよね。

前田 この3年間、その時々ではトレンドが動いていないような言われ方をしてきたけれど、振り返って見てみると、実は大きく動いていたんだよね。トレンドを引っ張るイメージリーダーとなるブランドがその時々できちんと現れていたっていうのがその証拠。それでもここ最近はさすがに新しい流れが見えづらくなってきていて、あらためて“定番”というキーワードがクローズアップされつつあるかな。

大和 それは『LEON』そのものにも影響を与えるんですか?

前田 もちろん。でも『LEON』が安定志向に走ることは絶対にないから、むしろ今を“タメ”の時間に使いたいと思ってます。『LEON』では今までも「2枚目で美しい、エレガントな男になりましょう」なんて言ったことは一度もないのね。僕自身、二枚目ってすごく損だと思っているし。そもそも疲れちゃうでしょ!そんなの(笑)。ともかく『LEON』はむっつりスケベなオッサンよりも、よく働きよく遊ぶ前向きなオヤジでいたいぞ、というスタンスでいたい。けれども振り返ってみるとここ何年かは『LEON』ってちょっと格好いい路線だったかなぁ、と(笑)。今は「モテるって何だったっけ」という事を見直したい時期に入りつつあるかな。

大和 ファッションも『LEON』も“タメ”の時間、と。

前田 そういう意味ではファッション的に定番が気になるというのはあながち間違ってはいないんじゃないよね。

大和 なるほど。今月の『LEON』のタイトルも「モテるオヤジは定番が新しい」ですもんね。

前田 例えば自分が持っている2Bの金ボタンブレザーや、白シャツ、デニムだったり、シューズの一足一足だったりとか。べーシックなものがきちんと揃っていれば次に大きな流行が来たときにしっかり対応ができる。今はそのタイミングなんじゃないかな。今年は節電の影響もあって“スーパークールビズ”なんていう言葉もあったでしょ? そうするとトレンドと並列してどうしても実用的なものが必要になる。実用の中で差別化したくなるというのが当然消費の原理原則であって。例えばビジネスでポロシャツを着るとすると台襟なしのポロシャツを着るより、台襟付きのポロシャツを着ているほうが断然サマになるわけだし。だから『LEON』で提案する夏の涼感スタイルは全て台襟付きの鹿の子のポロシャツで組んできたのね。実用面を配慮したうえでのスタイル提案が必要となってくる夏だったからね。じゃあ今年の秋冬はどうなのよ?というと、さっきも言ったとおり、トレンドが見えづらい年になっている。であればファッションの傾向にフィットするためにもいまベーシックなものを着ておく必要があるというのが僕の考えかな。

大和 なるほど。この世の流れを考えたときにこれからの『LEON』が目指すところ、そして編集者として前田さんが理想とするところってなんでしょうか?
 
前田 僕はね、本当は持っていて恥ずかしい雑誌が作りたいのね! 男同士では見られるけれども女の子にはできれば見られたくない、というような雑誌。でもって部屋には飾っておきたくなるような装丁のもので。その最高の例が1950年代から70年代までの『PLAYBOY』。実は僕、1950年代中頃から1970年代中頃までの『PLAYBOY』が本当に好きで、普段は全然引っ張り出さないけど、段ボールの中にはあちこちのジャンクヤードで買ってきたのが箱詰めになってるほど。自分のなかではちょっとした宝物かな。ただオンタイムでそれを見ていた世代の人たちって、きっと彼女や奥さんには見られたくなかったんじゃないかなあ(笑)。でも編集者の視点で見ると、この時期の『PLAYBOY』は非常に高度でクオリティの高いアートディレクションと、骨太でジャーナリスティックな政治経済記事が入っていてとても男っぽくできている。ヌード写真やピンナップも、実はすごく綺麗なのね。まさに男の欲望をギュッと詰めました!みたいな(笑)。自分がいま作りたい本や求めている雑誌のイメージはそこにあって。

大和 それはインターネットでは表現できないものだったりするんですか?

前田 インターネットっていうのはかなりパーソナルなメディアでしょ。エッチな画像だって噂話だって、いくらでも内緒で閲覧できちゃう。しかも、無料で! でも雑誌というのはいまや唯一の有料メディアであるわけで。新聞は有料メディアではあるけれども月払いという仕組み上、一部あたりのペイは実際は購読者は意識していないはずで、それはケーブルテレビも同じだよね。ある情報をキャッシュオンでしか手にできない唯一のメディアが雑誌だとすると、なにを目的に買うか、がポイントになる。僕はこれってとても大切なことだと思っている。お金を払ってまでして読みたいものってなんだろう、場所をとってでも保管しておきたいものってどういうものだろうってね。ただそれとは同じではないけれども『LEON』はもともとちょっと恥ずかしい本だったはずなのね。

大和 モテたい、というオヤジの欲望に素直という意味で。

前田 だって、“モテるオヤジ”なんてタイトル、恥ずかしいじゃない?でもそこで紹介されているファッションは非常に的を得ていて、格好よくて・・・。書かれている内容を読むと理屈的にも凄く納得できる。それが『LEON』だと思うし、もちろんいまでもそこは変わらない。けど人は刺激には慣れてしまうもので、今では他誌まで「モテる」とか「オヤジ」とか使いはじめちゃってるでしょ。

大和 うちのお客さんもよく言っていたんですが、初期の『LEON』は家では読むけれどもカフェでは読みたくない、と。だけど最近『LEON』が恥ずかしいという風潮は確かに
ないですね。

前田 そうそう。でもそれは、時代が追いついてきちゃったんだよね。

大和 なるほど。

前田 いい歳をした男がお洒落をする。それからいい歳をした男が“モテる”ために頑張る。そういう事が決して恥ずかしいことではなく、それこそ肉食系という言葉に代表されるようにむしろ“今の40代、50代のほうがガツガツしていて格好いいじゃん!”というのが主流にすらなっている。だから恥ずかしくなくなったんだと思うよ。そこで『LEON』に更に恥ずかしさをプラスするにはどうすればいいかっていうと、これは難しい。それこそ『PLAYBOY』みたいに裸のピンナップを載せるぐらいしないと恥ずかしくならないもの(笑)。

大和 確かに(笑)。

前田 当たり前のその先や10年目、そして15年目を考えないといけないのが本当に今やらなきゃいけないこと。それこそ自分の中にあるトレンドの読み方や、昔から好きな本や雑誌が頭のなかをグルグル駆け巡っているというのが今の状態(笑)。だからモナコGPにしてもミッレミリアの取材にしても、自分が知らないことに首を突っ込むことをこれからも積極的にやっていきたいなぁ、と。

大和 やっぱり前田さんは現場が好きなんだ。

前田 そうだねえ。自分で経験するという事ってすごく大事。知っているつもりで実は知らない事って沢山あるんだよね。せめてこの目で見るという事を改めてきちんとやってみたい。それが10年目の『LEON』に繋がるのかなぁ。


モテる男はスカーフがお好き!?
Apr 13, 2011

むむっ、ここはフィレンツェ!?なんともお洒落でワルそ~な方々が・・・。と思ったら『LEON』編集長代理・前田陽一郎さんではありませんかっっ。そして隣は副編集長の石井洋さん、それに編集の渡辺豪さん。それに見れば皆さんネイビーのジャケットじゃありませんか。偶然のカブりがあまりに面白かったのでスリーショットで撮らせていただきました。

いまやアップするたびに脅威のアクセス数を誇る『LEON』編集長代理・前田陽一郎さんのインタビューブログをリニューアルします。今までは「モテ」をひとつのキーワードとして語っていただきましたが、今回からは前田さんがいま気になっている「モノ」に焦点を絞って、聞いてみたいと思います。
第一弾はスカーフ。でも前田さん自身は、実はスカーフはあまり好きではないとか・・・。でもやっぱり気になる存在!?
それではいったい、どんな話になるのでしょうか。

前田 ここのところ、あらためて定番と言われるスタイルやアイテムが気になってます。今日着ているのも白いシャツにネイビーのブレザーにデニムっていうすごく当たり前の合わせでしょ? むしろ気にしているのはサイジングやこなし方ですね。例えばジャケットから出る白シャツの袖の量というのはずっと「1.5cmが正しい」とされてきてますが、今日のこれだと4〜5cmは出てるんじゃないかな。チーフも出過ぎでしょ。でもこうしてポイントになる場所がちょっと過剰な演出だと、コンサバティブな印象にはならないでしょ?

大和 なるほど。今月号の『LEON』じゃないですけど、ワルっぽく見えますよね。

前田 この白いチーフをTVフォールドで挿したら、ちょっと面白くないかなぁと。

大和 巻き物はどうですか?

前田 いま世間的には巻き物が流行っているって言われているけれども、個人的には正直好きじゃないですね。第1キザっぽいでしょ(笑)。キャラじゃないかな、と。しかもせっかくネクタイをとって首元が解放されて自由になったのに、また何かを巻くって、すごく窮屈じゃないですか。

大和 でも、今日の前田さんは巻いている(笑)

前田 そう! これはね、自分の中ではお洒落のためと同時に、衿の汚れ防止でもあるから。ほら、僕の基本的な移動手段ってバイク、でしょ? 一日バイクで都内を走っていると白いシャツの衿って、すごく汚れるのね。でもこうして首になにかを巻いているとぜんぜん汚れなくて便利なんだよね!

大和 さっきの話だとキザっぽく見えて嫌だというお話でしたけど。

前田 だから極力無造作にはしているつもり。いかにもキメてます、とならないように。

大和 なにかコツってあるもんでしょうか?

前田 う〜ん、基本、結ばないことかな? ほら、ヒーローものの主人公みたいに小さく首もとで結ぶ、ってのは僕のなかでは相当に恥ずかしい(笑)。こうしてラフに使っているときには僕のなかでは“巻物=過剰なお洒落”というよりも、実はとっても便利で使い勝手がいいもの、という位置づけなんだよね。

大谷 今日、チェックのストールをされてましたよね。パッと見て、一瞬チェックのシャツを着ているのかと思いました。あっ、良く見ると違うんだ、みたいな。

前田 これはストールをササッと入れているだけね。チェックシャツも僕はあんまり着ないんだけど、小面積だったらむしろ定番的な合わせのポイントになってくれるかな、と思って。しかもこれ、確かどこかの雑貨店さんでふらっと買った安〜いものです(笑)。

大和 確かにスカーフも結ぶと過剰に見えますね。とすると、中に入れちゃうというのはいいかもしれない。

前田 シャツの袖が結構長いとか、チーフが結構出ちゃってるとか。それらも全部、無造作だから嫌みがないように思うんだよね。

大和 計算しているのに、見ようによってはそう見えないところが格好いい、と。

前田 男性のファッションって難しくて、作為的なものが見えれば見えるほど見透かされちゃうんですね。でも一方で作為的では無い事って、すごく受け入れてもらいやすい。

大和 そこが女性と大きく違いますよね。実は今度からスタートする「ペルノイ」のスカーフなんですけど、薄くて“いかにも”じゃないところがけっこうイイと思うんですよね。僕自身も恥ずかしくてなかなか巻き物に抵抗があるので。これだったらアリかなぁと。

前田 ほんとだ。ふーん。こうやってシャツの襟に無造作に入れても過剰なボリュームが出なくていいよね。ただ巻いているだけならいいんだけど、いかにも「スカーフ巻いてます」みたいなのは恥ずかしいから。

大谷 チラッと見えているのがいいですね。

前田 そうそう。こういうモノは控えめに見せるくらいが丁度いいよね。

大和 これ実は素材がポイントなんですよ。カシミアと化繊の混紡なんです。わざとユルい感じを出しているんです。

前田 例えばシルクとかでキラキラっと素材が光ると恥ずかしいよね。女性の場合は作為的であるほどファッションに繋がっていくんだけれども、男性の場合は飾り過ぎないことが案外、大事だったりするから。

「変形の巻き方かたをすると、もしかしたら面白いかもね。こうやって巻いてみるとどうだろう。ネクタイがわり、みたいな」(前田)

胸元に挿せばチーフにも。

デニムは前田氏の最近の大ヒットという「リーバイス399」。

前田 ジャケットは「ディストリクト」のもの。4年前のかな。古いね~。でもいっちばん着ているかな。当時から芯なしですっごい着心地も良くて」

大谷 モチーフが付いているボタンがとっても可愛いいですね!

前田 金と銀になってるんだよね。ほんとに良く出来てるよ。

ティアドロップのサングラスはレイバン。「ジロー(ジローラモ)さんに貰ったの。ゴールドミラーは珍しいよね」(前田)

東北地方太平洋沖地震
Mar 26, 2011

東北地方太平洋沖地震において被災された方々にお見舞い申し上げるとともに
お亡くなりになられた方々と、そのご遺族の皆様に深くお悔やみ申し上げます。

じつはレオンのホームページともあわせて
こちらでも震災直後になにかを書こう、とは思っていたんですが
日を追うごとに
いま、ここで、なにか自分が口にすることが
じょじょに憚れるようになってきて…。

正直に言えば、お見舞いやお悔やみの言葉を上のように書くことが精一杯なのです。

言葉は、やっぱり、とても難しいんですね。

立場や環境、時代やタイミングによっても同じ言葉が違う意味をもってきます。
たとえば今回被災された方々を映す、あるニュース番組のヒトコマのことなんですが
(このことはレオンのブログにも書きましたが)
ある年配の女性が子供に肩をたたかれ
「ありがたい」
とおっしゃっているんです。
その女性はもしかしたら
家をなくしているかもしれないし、
ご家族や知人の方になにかあったかもしれない。
にも関わらず思わず出る
「ありがたい」という言葉ほど、重いものはないと思うんです。

今日もテレビで被災された方がおっしゃってました。
「家も、電気も、原子力もいらない。ただ家族がいてくれればいい」と。

その一方で

「もちろんいま大切なのは被災地救済だと思う。でも、停電や放射能問題で、ウチだけでなく、近く廃業に追い込まれる人たちが出るかもしれない」という小料理店を営む友人の言葉もまた切実なものだと思うんです。

僕は今回の計画停電に関しては、ある部分ではそれもいいのではないかと思うところがありました。もちろん被災地への電力供給を優先すべき、との考えがありながら、便利になりすぎた世の中、それが当たり前になってしまっている我々は非常に危うい、とも思っていたからです。
さらに、今回あらためてわかったのが、我々が得ていた電力は、放射能という恐怖と背中あわせの原子力に頼っていたこと。そしてその原子力は地球温暖化という観点から見れば、やむを得ない装置でもあること。水力、風力その他の発電装置では電気料金がとんでもなく高くなってしまうこと。それを黙認してくれない“平和なときの”市場があったこと。
すべては矛盾とともにギリギリの均衡を保っていたんですね。

とにかく、先の料理店さんにしてみれば、冷蔵庫がとまり、営業時間が不規則になることは死活問題なんですね。
僕にとっての正義や倫理観は、ある人にとっては間違いかもしれないわけで。

だから、言葉を発することに躊躇するのです。

ダラダラと書いてすみません。

悲しいかな、僕は原子力発電を修理することも、救急医療のヘルプも、ヘリコプターで救援活動ができるわけでもありません。

じゃあ我々のようなエンターテイメントが不必要か、悪か、といえば、それは違う。
ふつうに生きていれば必ず皆が持つだろう余暇や欲求を充実させることへの渇望は、人間として当たり前だと思うし、それこそが経済活動、人間活動の根本原理だとも思うから。

だからLEONはいつものままに、今現在を昨日とかわりなく、明日をより楽しく生きたいという方々に向かって作っています。

とりとめもない話でした。

次回からはいつもどおりで!
だっていつもどおりに、こうして言葉を発せさせていただけることって、「ありがたい」ですからね!

では。

モテる男は両極が好き?Vol.2
Feb 28, 2011

前田 洋服も、今年買ったモノと10年前に買ったモノをどうやってミックスさせようかなぁ、と考えたり。

大谷 それは今後の『LEON』のテーマにもなり得る?

前田 どうなんだろうねぇ。そういうメンタルな部分はあってもいいかな。そういうモノの考えが隅にあったうえで新しいものを紹介していく雑誌だと思うから。

大和 じゃあ最新のもなら何が欲しいですか?

前田 それこそクルマでいえば電気自動車でポルシェよりも加速がいいといわれている「テスラー・ロードスター」かな。近々発表されるはずの「アウディ イートロン」もいいよねえ。これは両方とも資金さえあったら欲しい(笑)。けど、「それらを除いて欲しいクルマは?」と聞かれたら、「’60年代から70年代前半のクルマが欲しい」って素直に答えると思う。’90年代半ばを過ぎるとクルマのベース技術は完成されてしまっていると思っているのね。だからいま現在所有しているクルマはすべて‘90年代のものだったりするわけだけど、それは今のクルマが駄目、という事ではなくて、いっそ最先端のクルマを手に入れるなら、未来を感じたいというか。

大谷 クラシックカー好きの人は「手がかかるから可愛い」と言いますが、前田さんもそんな感覚ですか?

前田 いや〜ないですねえ(笑)。モノは絶対に手がかからないほうがいいし、壊れないほうがいい。何度も言うけど、僕はマニアじゃないから、クルマは壊れないほうがいいし、洋服は着れたほうがいい。極論すれば、生地とか縫製に拘るのはとっても大切な事だけれども、それ以上に見てくれが今っぽいほうが絶対大事だと思ってる。だから僕自身はあんまりオタク的発想で洋服は選ばないし、靴だってグッドイヤー製法がいいと言われていても実用で考えれば「マッケイで十分でしょ」と実は思っている。

大谷 確かに、靴をオタク的に集めている人でお洒落な人がなかなかいないのと同じなのかも。

前田 それ自体が悪いことではないけど、要はバランスが大事だと思うのね。クルマやバイクも古けりゃいいってものではなく、そこには僕自身、見た目の格好よさは絶対に欲しい。今日着ているレザーのコートだってヒエラルキーの外側だよね。レザーコート自体、そもそも着ている人がいないわけで(笑)。

大谷 見たことないですよ!

前田 でしょ! で、「どこの?」と聞かれたときに、「ロエベ」って答えたら、おそらく10年先も間違いなく「アッ、そうなんだ!」とくるはずだし、きっとレザー製品のカテゴリーにおいてこれからもトップ・オブ・トップの座に君臨し続けると思うのね、このブランドは。それもヒエラルキーの外側に居るっていう事のひとつだと思うんだよね。

大谷 それこそセンスかもしれないですね。

大和 前田さんって、そういうのが上手だなぁって思いますね。結局、前田さん自身がお洒落に着てようが着ていまいが、それがとてもお洒落な事のように周りが感じてしまうから。

前田 この「ガガ」にしてもクォーツではなく機械式時計で、なのにデザイン的に遊んでいて、しかも値段がそこそこ、っていうバランスがいい。そのうえこんな時計はそもそもないから、ヒエラルキーの外側に居られるわけで、それが面白いと思ったんだよね。高級ジュエリーだって同じで、上を見るとキリがないでしょ。だけど腕元を飾るものっていうのはアイデア次第で色々なものがあるわけで。B.R.SHOPでも扱っている「チャン ルー」や「オヴィリ」なんかは“ジュエリー”“メジャーアクセサリー”というヒエラルキーの外側に居るものだから楽しいんだよね。ここにヒエラルキーが生まれれば、次にまた違うものを探すだろうし。

大和 トレンドを作り出す人に必要な発想なのだけれども、権力の争いになっていきがちなモノを巧妙に目線を変えて動かしていく、というか。

大谷 なるほど。いつの間にかこっちのほうが格好よくなっている、みたいな。

前田 人の目が動き始めるわけじゃない? そこでまた自分が動いていって、また盛り上がっていけばそこに新しい市場が生まれるだろうし。

大和 古いクルマもある意味そうですよね。フェラーリやベントレー、マセラティが集まっているなかでも、「僕は‘70年代のポルシェに乗ってます」って言えば、それがいくらで購入したものであったにせよ、確実に「おおぉ~」って反応がかえってくるはずですからね。

前田 同じなんだよね。アウディのR8を買って「乗りたい、乗りたい!」っていう気持ちと、‘60年代のトヨタ・スポーツ800に「お~、乗りたい!」っていう気持ちっていうのは。それに対する投資額と出会いのタイミングの違いだよね。アウディはディーラーに行けば買えるけれども、“ヨタハチ”は買いたくても買えないものじゃない? そこにはモノの値段はまったく関係なくて、それを所有しているということに意味があるわけで。まあ、でもどっちがモテるかって言ったら、やっぱりR8のほうがモテる(笑)。

大和 ヨタハチで喜んだ女の子がいるとしたら、相当マニアックですよね。

前田 ハハハハ、だよね(笑)。エアコンもないクルマで喜んでくれる女性がいたら、その人は相当変態だね。

大谷 でもこの“ヨタハチ”、手に入ったら通勤にも使うつもりですか?

前田 もちろん! 

大和 不思議なのは、それらに乗って楽しめる時間が果たして、多忙な前田さんにあるのかなと。

前田 ないよね~(笑)。

大和 前田さんがいま現在時間を割いている趣味ってなんですか?

前田 今は自転車かなぁ。そもそも組み立てる楽しみがあるからね。

大谷 一緒に走りに行く仲間はいるんですか?

前田 いや、自転車もオートバイもクルマも、誰かと一緒ってことはほぼないなぁ。ツーリングも誘われて行くことはあっても、自分からはないし。そもそも僕にとっての趣味って、一人になれる時間という意味が強くってね。完全にひとりになって無口に没頭する時間って、大人になるとなかなか無いじゃない? それができるのが趣味の時間なんじゃないかな。常に人と接する仕事だから、より一層一人の時間が大切なのかも。よく人から、「いつも仕事のことを考えていそう」なんて言われるけど、確かに帰宅途中のオートバイで走っているときに考えたりはするけれど、実際は集中力って20分位しか続かなくて。次の日が休みだったりするともう、どうでもいいことがどんどん頭に浮かんできちゃう!「家に帰ったら自転車のブレーキ調整しよう」とか「最近動かしていないオートバイのエンジンかけようかな」とか。だから休日の僕なんて、ヤバいですよ。朝から晩までガレージにこもって、延々と工具をもって機械と格闘してる(笑)。思うようにいかなくてひとりでイライラしてみたり、思うようにいったらニヤニヤしてみたり。エンジンを掛けると30分くらい近所を走って、またふらふらガレージに戻ってきて、一人でドライシガーをブワ~って吸って、30分ボーっと過ごして。その間、な~んにも考えてないもん。座禅みたいな世界だね(笑)。もはやモテる、モテないの話ではなくなってきてるね(笑)

大谷 完全に無の時間があるのは確かに意外かも! 仕事柄、常にアイデアや企画が頭を巡っているのかと思いました。これだけ男っぽい趣味に没頭できる前田さんがこの業界でも兄貴分として好かれているのも、なんだか分かる気がします。しかも結果、モテてる気もしますよ。一人の時間が過ごせるって、大人な感じがしますもん。あまりに没頭して放っておかれると女性としては寂しいですが(笑)

大和 僕は一人でいると常に会社の事を考えちゃいます(笑)。

前田 もう完全に趣味の事になっちゃったね。モテとは離れた話になっちゃった(笑)

大谷 いつもの事です(笑)。今回もありがとうございました!

10年後も現役なはず?のロエベのレザーコート。

FLAT HEAD&COのデニムシャツは10数年前、SANTACROCEのデニムは3年前に購入。洋服も年季が入ったものと新しいものをミックスさせるのが楽しいそう。

モテる男は両極が好き?
Feb 26, 2011

友人から真っ赤なトヨタ・スポーツ800、通称“ヨタハチ”を購入することになった前田さん。送られてきた写メールに思わず笑みが。実はヴィンテージカーフェチ?
いえいえ、単なる旧車マニアではなく、そこには深~いコダワリが隠されているんです。

大和 しっかしこの“ヨタハチ”珍しいですよね。

前田 あ、ちなみにまだ「購入した」わけじゃないですよ。大阪の友達から「手に入れた」という連絡があって思わず「オレに譲ってくれ!」って言ったら「じゃあ見にきてくださいよ。レストアの方向性を打ち合わせしましょうよ!」って。要するに今は友達のだけれども、いずれ(近いうち)にはこっちに回ってくる確約をとった、という段階で(笑)。

大和 というか、そもそも思わず、でそういう展開にはならないというか(笑)。前田さんってヴィンテージ好きでしたっけ?

前田 そもそも古いクルマは好きなんだよね。社会人になって最初のボーナスで買ったクルマがMG-Bだったくらいだから。

大谷 イギリスの古いスポーツカーですよね。

前田 自分と同じ歳の‘69年式のね。当時は自分なりにモディファイしたくて、給料のほとんどを修理やカスタムにつぎ込んでた(笑)。それくらい、好き。いちばん最初に乗った車は祖父がワンオーナーで乗っていた’71年式のビートルだったんだけど、まだ学生だったから友達のツテでクルマ屋さんのガレージを借りては車高を落としたりして。そうして考えると、自然に古いクルマと接してきたかな。

大和 バイクも古いのを買ったり?

前田 バイクもかなり乗ったな~。‘70~’80年代のものが多かったかな?

大谷 ヴェスパとか、ですか?

前田 ヴェスパは今も乗ってるよ。でもそれほど古いものではなくて、PX200っていうモデルで‘90年代後半のもの。昔乗っていたのはヤマハのTX650やGX750、それにホンダのCB750FBとか。結局一番長く持っていたのは定番のヤマハのSR500だったけど。

大谷 全部あげていったらキリがなさそうですね。

前田 確かにね! でも、だからといって僕はマニアじゃないです。とにかく乗り物が好きなだけ。だからいつも古いものと実用的な新しいものはもちろん、荷物が積めるものとそうでないスポーツカーのようなもの、オフロードとオンロードのように、とにかく両方持っていたいっていう贅沢な願望があって(笑)。自転車も、ロードレーサー、BMX、近所の山の中を走るためのマウンテンバイクにダウンヒル用のフルサスペンションモデルも持ってます。バイクなら通勤にはBMW、オフロードを走るためにヤマハの TY250Zってのも持ってます。けれどもスクーターの楽しさっていうのもあるから、ヴェスパもず〜っと持ってます。

大谷 その台数はスゴイ! 前田さんって結構な趣味人なんですね。

大和 クルマも何台か持っていますよね?

前田 もうアホですね。クルマはクラシック・ミニがあって、ジープ・チェロキー、それにポルシェの993。

大谷 そして次に手に入れようとしているのがこのトヨタ・スポーツ800ですか!

前田 クラシック・ミニは僕の中では“旧車”じゃないからね。根本的に古いものが欲しいな、とはずっと思っていて。未だにオートバイもクラシックなやつが欲しいなあ、と。とにかく常に両極を楽しみたいんです。ほんと、おバカさんです(笑)。

大谷 それってファッションでも同じですか?

前田 そうかもね。スーツを着るときにはちゃんと着たいし、デニムなら上下デニムがこなせる男でいたいっていうのはずっと変わらないから。なににしても、両極がきちんと楽しむことができれば、その中間を楽しむ事もできるっていうのは持論かも知れない。

大和 それにしても前田家のガレージは凄そうですね。

前田 いろいろ溢れかえってます(笑)。

大谷 手入れがされた昔のクルマは、どこか品がありますよね。特に前田さんみたいにワイルドな人がクラシックカーに乗っているとそのギャップにドキッとしますね。格好いい最新のスポーツカーを何台も揃えて乗っている人とか40代の富裕層に多いですが、それだけだと、あまり魅力的には感じないんですね、私は。逆に、古いモノの良さをきちんと理解したうえで実際に乗って楽しんでいるほうが最新のスポーツカーしか知らないより断然格好いいよく見えますし、何より知的な感じがします。

前田 そう?! 基本、古いものって女子ウケは悪いけどね(笑)

大谷 それは納得! お尻が痛くなりますから(笑)でもあえてミーハーなクルマに手を出さないところが前田さんらしいかも。

前田 いやいや! オトコ目線でいえば相当ミーハーだと思うよ(笑)。ただどっちにしてもヒエラルキーの外側にはいたいんだよね。人って常に比べられるわけじゃない? それを、自分のキャラクターとモノで出来る限り外側にいるっていう姿勢でいたい。価格が高いとか安いとか、早いとか遅いとかいった単純な判断には巻き込まれたくない。

大和 まさにお金じゃなくてセンス、ですか?

前田 まさに(笑)!。これも例え話なんだけど、僕は冬はテレマークスキーをやるんだけど、これもまた上手かろうが下手だろうが「テレマークをやっている」と言うだけで、大半の人たちのヒエラルキーの外側に居られるわけ。それにマイノリティでいることって案外、周りが優しかったりするのもいい!

大谷 それまた珍しい趣味ですね。

前田 高級車はやっぱり魅力的ではあるけれども、ツウな人が見ても「それを選んだんだ。いいよね」って言ってもらえて、一般の人から見ても、「いいですよね」って言われて、クルマ屋さんでも「乗り続けたほうがいいですよ」って言ってもらえるクルマを沢山の選択肢のなかから自分なりに選ぶのが好きなのかもね。だから空冷最後のモデルであるポルシェ993に乗り続けるし、チェロキーにしてもリミテッドの最終版に乗り続けたい。一般的なヒエラルキーを十分理解したうえでその半歩外側にいると、独自の立ち位置でいられるかなぁ、と。

大和 なるほど。

モテる男は仕掛けが上手い!?
Feb 02, 2011

ファッション業界の人が集まれば必ず『LEON』掲載の反響の話になるほど。そんな大人のファッションを牽引し続ける流行の仕掛け人、前田さんが考える2011年のトレンドとは?今回はいつになく!?ちょっぴりマジメにファッションの話でお送りします。

大和 今回は前田さんが考える、2011年春夏のファッションを語っていただこうと。

大谷 あっ!でもあんまり喋っちゃうと、『LEON』本誌のタネあかしになってしまいますよね!

前田 まあ、話せる範囲で(笑)

大和 じゃあ、言ってもいいかな、というトコロまでで!

前田 漠然としているんだけど、今までのちょっと抑え気味だったモノをほんの少し開放する春になってほしいな、と。たとえば、シャツなら個人的には白いシャツが好きなんだけれども、そこにバリエーションがほしい。シャツ一枚でファッションを楽しめる5月以降でもここ数年は、ポロシャツ以外に選択肢がなかったように思うのね。

大和 たしかに、そうですよね。

前田 去年だったらチェックシャツやダンガリー、ウチなんかだと半袖シャツを仕掛けたり。けれどもそれ以外を考えると、色ぐらいしかバリエーションがなかったでしょ。みなさんは「え、他にあったっけ?」と言われると思うんだけれども、実はシャツってすごく多彩なバリエーションがあると思うんですね。小紋もあればストライプもあるし、花柄やレーンスプーナーのようなプリント柄だって楽しい。長袖はもちろんだけど、半袖や七部袖だってバリエーションだと思う。ポロシャツにしたってベーシックな半袖のそれは所詮形状であって、鹿の子と言う素材に着目すると、それできちんとしたシャツを作ったっていいわけでしょ。ラコステの“ビジポロ”みたいに。今年の春もファッションの軸になるジャケット&パンツのスタイルをいろんなシャツで楽しんでみてもいいんじゃないかなあ。

大和 なるほど!

前田 それとは反対に、柔らかくなり過ぎたものを少しカチッとしてみたいのも気分。ノータイでOKな場面でも、タイドアップしていたほうが格好いいとか。レオンで言うところの“楽ジャケ”も、着心地は楽なんだけれども、見た目までは楽ではないモノ、要はシャープな印象のものと言うか…。ともかく全体の印象としてここ数年ファッションは中庸なところに軸があるから、もう一度、中庸から枝葉を分け直すタイミングにきてるのかな~、と思う。

大和 なるほど。僕がバイイングしていて思うのは、“楽”は春夏まで引きずると思いますが、秋冬からはもう一度、きちんとサルトリアジャケットを着る、という流れは来るんじゃないかな、という気はしていますね。それは急にスーツに切り替わるという事ではなくて。前田さんの言う通りみんな楽に慣れてしまっているから、着心地は極めて楽なのに、ちゃんと見える洋服、というのが注目されてくるでしょうね。

前田 それと自分の中で、ずっとデニムが気になっていて。2010年の10月号では『波乗りデニムのこなし方』という特集をやったんだけれども、この春あたりから“インディゴ”が一つのキーワードになっていくような気がしてます。例えばそれは厳密にデニムでなくても、シャンブレーやインディゴ染めのコットンでもいい。なんかあの“デニム感”みたいなものがほしいんですね。金ボタンの紺ブレなんかもいいなあ。

大和 ベーシックなカラーといえばここ数年ずっとホワイト&グレーでしたからね。

前田 そうそう。

大和 ちょっとネイビーが恋しい感じはありますよね。

前田 デザインもそうだけれども凄くベーシックなのに、そこにデザイニッシュなモノを入れてみるとかね。来季のGUCCIをみてもスーツやジャケットは非常にしっかりとした作り方をしていて、男好きするデザインなんだけど、その中に着ているシャツは総柄のキザっぽいものだったり。いい意味でいやらしい、セクシーな感じが新しい。その感覚に近いよね。

大和 分かりますね。カーゴとかライダースジャケットといったスタイルに加えて、もう少し色気のある方向に振り戻しが来るんじゃなかなぁ、と。

前田 そうそう!色気ね。男っぽさも勿論大事だけど、色気は気になるところだよね。

大和 そうですね。

前田 しかもそれが‘70年代のグラマラスとも違う、もう少しスマートさを伴ったもの。

大和‘70年代のスタイルはビジュアル的には格好いいけれども、実際はめっちゃ疲れる(笑)

前田 だからリラックスとか楽チンであるということは絶対大事! どちらにせよいろんなスタイルが混在するシーズンであることは間違いないかもね。去年から引き続き“サファリ”はキーワードになり得るし、“軍モノ”も当たり前にあるし。でも、一貫して楽チンであること、みたいな。

大和 それはありますね。次の流れは春夏にちょっとずつ仕掛けて行って、秋冬で一気に来る、そんな気がしますね。

前田 大きく変わるのは次の秋冬あたりだね、現実的には。

大和 でもそうしてコツコツと仕掛けていくのが前田さんというか、今のレオン流ですよね。街を歩いていても、みんなこぞってカーゴを穿いているじゃないですか。これだけカーゴパンツを流行らせたのはスゴい! ある意味これもレオンが作り出したスタイルですよね。

前田 一生懸命作りました(笑)

大和 一年半くらい前から言い続けていましたよね。

前田 そうかも(笑)。ただ僕らは間違っても流行を作ってやろう、なんてことは思ってないですよ。自分たちも含めて読者のみなさんがきっと格好よくなれるものを、そう信じて提案しているだけ。ま、そんなことを続けていくことが雑誌の役割だと思うし、そうすることで信用も得られると思っているけど。

大和 ここにきて、来ましたよね。変な話、うちの店でもカーゴだったらどんなものを仕入れてもすぐ売れます。「インコテックス レッド」にしても「PT01」にしても。

前田 へぇ~、そうなんだ! どれもよくできているからね。

大和 そうなんですよね。

前田 でも、天の邪鬼な僕は今年はいかにカーゴパンツを履かないで今っぽくするか、という事を考えてます(笑)。だから替わりにデニムをよく穿くかな。上下ともにデニムとかね。それにジャケットを合わせてみたり。とにかく冒頭でも言ったように、今はジャケット&デニムのバリエーションにすごい興味があって、自分でも研究中です。

大和 リアルダンガリーが爆発的に売れることはないんですが、シャンブレー素材のウェスタンシャツはもう売れてます。

前田 そうなんだよね。冬物の場合は、素材感の相性がいいからね。

大和 ところでどこのデニムが面白いですか?

前田 どこのっていうのは、ないなぁ。むしろブランドを探している最中。ウチのクライアントさんのデニムは当然、ひと通り持っているし着回すけれど、今から20年くらい前に古着屋さんで買った、あの色落ちしたリーバイス501を手に取った時の感覚は忘れられないよね。当然、今あらためて古着のそのまんまを穿きたいってわけじゃないけれども「デニムってやっぱりオールマイティでいいなぁ」という気持ちにあらためてなりたい。

大和 それを彷彿とさせる新しいデニムって、本当にないですよね。でも前田さんが今日穿いているのはどこのものなんですか?

前田 これはディーゼルのストレッチスキニーの一番細いタイプ。

大和 パンツ全般にはなにか感じるものはありますか?

前田 う〜ん、もう少しシルエットをゆったりさせてみてもいいかな、とも思うな。ここ3年近くレオンでは裾幅18cmのテーパードをみなさんにはオススメしてきたんだけれども、それはそれとして新しいバリエーションとしてヒザ上ストレートも気になる。当然クッションもいままでハーフクッションだったのを少し深めのワンクッションにしてね。

大和 おっ、それは新しいかも。つまりジャケット&パンツの着こなし方に見た目の印象、それからそれに伴ったデニムの活用範囲、パンツのシルエットなんかもこの春から新しいものが出てきそうな予感、と! この春を境に、前田さんの服がアップデイトされていくのが楽しみです。

前田 ハイ、頑張ってみます(笑)。

ジャケットはB.R.Practical Style
パンツはBottega Veneta
靴はヒロシ・ツボウチ

モテる業界人の口説き方Vol.3
Jan 30, 2011

大和 二人の共通点として単純に見た目が格好いいというのはあるけれども、藤井さんに関しては、いままで経験してきた場数が全然違う(笑)

前田 ハハハハハハ(笑)

大和 前田さんは明らかに、ギャップでしょう。

藤井 男の俺らからみても、前田さん、守ってくれそうだもん。前田さんって男にもモテる。ほかの男性誌の編集部の人たちとも、ものすっごい仲が良いんですよね。

前田 特にアマンの展示会ではやたら会いますよね! 全然関係のない他社の雑誌のパーティに普通に入って行ったりするかなぁ。

大谷 それはなかなかできないですね。

藤井 とはいえ、基本メンズ誌のみなさんは仲いいですよね。

前田 知らない人がいても誰かと誰かが繋がっていて、仲良くなることが多いかなぁ。僕なんかストリート雑誌出身なので『LEON』に入った当初は何のネットワークもなかった。けれども、いったん知り合いができると知り合い同士、横へ横へと繋がっていく。そこで自分がどういう風に評価されているか分かるようになる。大勢の人を知っていることで自分の小ささも分かるし、やってきたことも分かるんですよね。

大谷 う~ん、それは懐が大きい人の発言ですね。

前田 年上の先輩方はスゴいですよ、ホントに。もっとずっと懐が広いですから。

藤井 ただお金を持っているだけではなく、あれだけ豪快に遊ぶには体力を使うでしょ!? そういうところにスゴさがある。「俺たちなんて全然まだまだじゃ~ん」って、がっかりする時がある(笑)

前田 身の程を知るのも案外大事だと思う。謙虚にもなれるし、負けていられないという気持ちにもなるし。だからよその雑誌の新人君とも仲良くしたいんですよね。その中で光るヤツって必ずいて、彼らのぎらぎらしたものを見ると自分も負けていられないって、闘志が湧いてくるんですね。僕らくらいの年齢がシケた車に乗って、シケた服を着て、冴えない顔をして歩いているより、やっぱり下の世代が憧れてくれるような存在でありたいですし。僕らの10個上の先輩たちは仕事ができることを前提に、きちんと遊びの時間を作っているもんね。

藤井 それは言えてる。

前田 時間の使い方が上手。仕事をしているたった数時間のうちに集中して大事なことの判断をしているんだろうなぁ、と。

藤井 時間の使い方もセンスですよね。遊びの中から生まれることもある。特に、洋服を買ってくださるエンドユーザーは決してファッションおたくばかりではないわけですから。

前田 そうそうそう。僕らはファッションに詳しくはあるけど、それをただ単に押し付けちゃまずいと思う。常にオケージョンを考えてこの時に○○だからこういう服がいいと提案するべき。ボリオリがヒットした理由も、ジャケットが男性の基本中の基本アイテムではあるけれども、それが堅苦しいだけではなく、リラックスして着られてかつ、きちんとして見えるところにあったはず。僕らも実際そう思ったし。それが合致すると爆発的なアイテムになるんですよね。

藤井 リアルクローズなんですよね、結局は。

前田 リアルクローズの中にどうやって夢を持たせるか、が大事ですね。この服を買った時に、新しい自分が想像できないと、投資する価値はないと判断されちゃうし。洋服なんて別になくていいわけですから。何のために洋服を買うかといえば、それは自分をアップデートしたり、次のデートや外出に備えたり、そもそも新しい自分を発見するためにあるんじゃないかなあ。どこかで出会うかもしれない運命の女性に「素敵!」と思ってもらいたいからかもしれないし。そうじゃないと面白くないでしょ。

藤井 オタクは嫌なんですよね。素直に格好いいほうがいいじゃん、って! 僕も前田さんと同じ古いポルシェに乗ってますけど、やっぱりクルマは乗ってナンボ。ただ眺めているだけじゃツマラナイでしょ。

前田 綺麗なポルシェが20万キロ走っていたら、超尊敬しますね!

藤井 最新は最新でいいけど、またベクトルが違うんですよね。

前田 古~いポルシェをいい状態で乗っていると「センスいいわ~!負けたわ。」思う。やっぱり使ってナンボ!だから洋服も女の子のデートのために揃えるし、そのためにアイロンをかけるし。もっというと可愛い女の子を見ると追いかけちゃうのが男の性だし、いいものを見たら欲しいって思うのが人間の性だと思う。そこに初めて遊びとか余裕が生まれて、そのために大枚を使うわけだから、楽しくなきゃ意味ないじゃん、て。そんなものをばかばかしいと思った瞬間にいろいろなことが止まると思っているので。自分の可能性に投資すると思ったら、無駄な事はなにも無いんだよね。そういうハートを持っていれば、決してオッサンにはならない。格好いいオヤジであり続けられるんじゃないのかな。

大和 実はね、藤井さんはいつも酔っぱらうと寝ちゃうんですよ。

大谷 デートでもですか?

前田 それはないでしょ!?

藤井 寝ちゃいます・・・・ね。

大和 でも結果、女性にモテてるから。これが愛されるキャラクターたる所以。遊び仲間としては最高ですね! あっ、仕事も最高だった(笑)

大谷 自然体ですね。藤井さんの女性に対する気の使い方も実に自然ですもんね。寝ちゃうのが許されるのも藤井さんのキャラ勝ちですね! でもそのゆるいスキ感が女子にとってはたまらないかもしれません。

前田 今日もかなり勝手にしゃべっちゃったけど、大丈夫かな、これ?

藤井 お酒も入っていたということで、受け流してくださいね(笑)

藤井尚志さん
(株)アマン執行役員/営業本部 本部長
『LEON』本誌でもお馴染みのイタリアブランド「BOGLIOLI」「FAKTOR」「Finamore」「Notify」の正規エージェントである(株)アマンの敏腕営業マンとして業界では有名な存在。夜の街に詳しいことから「夜遊び番長」の異名も!?

モテる業界人の口説き方Vol.2
Dec 31, 2010

藤井 ガツガツと言えば、中国版『LEON』見ましたよ。

前田 中国でも『LEON』が売れるってことは、相当彼らもガツガツしているよね。向こうの編集者にも女の子が何人かいて話をして分かったのが、逆にあんまりにも男性がガツガツしているから洗練された感じっていうのに憧れているみたいなのね。

藤井 それは、わかりますよね。

前田 日本では中途半端に紳士面するより、逆にガツガツしている人のほうが楽しい人って思われる傾向があるけれども、向こうの場合はほぼ全員がガツガツしているから、日本人のちょっと洗練された感じにとっても憧れているみたいです。僕なんかジャケットにパンツという姿でいるだけで、「何のお仕事をされているんですか?」と声をかけられるし。すごくスマートな男性として見られるんだよね。

大谷 じゃあ、日本人男性は中国でモテモテですね。

前田 モテると思うよ。それなりの男性が行ったら。

藤井 こんなに男女差別が激しい国がまだあるのかと、面をくらうくらいガツガツしてますね。

前田 イタリア人やフランス人ってガツガツの裏にエレガンスがあるでしょう? レディファーストの文化はその典型。50代でも現役で遊んでいるファッション業界の先輩たちもそうで、下品な話はするんだけれども、キチンと女性に対するケアができるんだよね。「やらせろよ~」とか笑い飛ばしていても、ちゃんとケアができている。今の若い男の子でガツガツしている子はいるとしても、そこで終わりなのかも。「まだ俺、25歳なんスけど、100人とヤリましたよ」というヤツがいても、そこにエレガンスはないでしょ。女の子に対する些細な優しさとか、気遣いは僕たちの世代にはまだあると思うし、もしかしたらこの歳になってようやく身についてきたのかもしれない。いい歳してワイルド一辺倒ではモテないよね。女性の心の機微を察して、場所を変えたり、優しい言葉をかけたりしないとモテないんじゃないのかなぁ。

大谷 さっき藤井さんと、前田さんは声が魅力的だねって言っていたんです。外見はワイルドだけれども声にインテリジェンスが垣間見えるから、結果そのギャップで前田さんはモテるんじゃないかと。

前田 そんな、藤井先生にほめていただいて。照れます(笑)

藤井 いや、それは男から見ても魅力的ですよ。それが前田さんの場合、自然体でしょ?計算しているわけではなくて。僕らの世代で背伸びしすぎるほど格好悪いことはない。

前田 もう背伸びはできないですよ。自分が積み上げてきたものを見せるしかないです。

大谷 業界の方はやっぱりガツガツ系の方が多い?

藤井 僕が知っている限りみんな野獣ですね! でも、僕らより上の世代にしてみたら、40代の連中なんてちっちゃいな、って思ってますよ。50代のアパレル系の人たちはもっとガツガツしているから。

前田 だからその人たちのファッションも面白かったんじゃない?爽やかだし、遊び方が粋。男に対しても爽やかだし、女遊びに対しても相当、爽やか。とはいえ男と女だからドロドロした部分はあるんだけれども、ガハハと笑い飛ばしちゃうような豪快さがある。やっぱりどこか突き抜けてるぐらいじゃないと、男は面白くないな~、と思う。

大谷 女性との飲み会での藤井さんの勝負服ってありますか?

藤井 年齢によりますね。20代の女性がいる飲み会だったら革ジャンを着ていくだろうし。

前田 あえてスーツというのは?

藤井 それも、アリですね。スーツは悪くないんじゃないですか?

前田 鉄板と言えば鉄板。

藤井 変に凝ったスーツではなくて、トラディショナルなスーツをきっちり着れば決して悪い印象は与えないですからね。

前田 うん、うん。

大和 僕の場合、相手が20代の場合は多少の若作りは意識しますよね。

藤井 革ジャンって男のワードローブには必ずあるものですよね、昔から。

大谷 前田さんは革ジャンイメージが強いですね。

前田 バイクに乗るからね。だからこそ逆にどういう場であれ、僕は絶対にレザーは着ていかないかな。

藤井 逆にデイリーすぎちゃうんですね。

前田 お客さんとの会食も含めて、大半はスーツ。印象も変わるし。いかにいつもの自分と違うイメージで行くかを考える。

大和 なるほど。僕は女の子が引き立つように心がけますね。自分が目立ちすぎないように、派手な女の子だったら遊んだ格好はできるけれども、それほど華がない女の子だったら、自分がスタイリッシュすぎないように工夫はしますね。

藤井 この業界にいると知人の結婚式に白いスーツを着ちゃう人とかもいますよね。夏になると上はタキシード、下はショートパンツといった、ちぐはぐな格好で来る人もいるわけですよ。お洒落大会じゃないんだからって(笑)

前田 いるいる! 業界だと特に多い。残念ですよね。

藤井 オケージョンなんだからブラックタイかタキシードでこようよっ、て。

前田 考えすぎちゃってね! 案外多いですよね、その手の人(笑)。

大谷 それは確実にモテないですね。

前田 それを啓蒙しているファッション誌もダメだよね。

藤井 ファッション業界の結婚式ほどオケージョンがばらばらに崩れるわけですよ。ほかの業界の女の子からみたら、ただの変なひと。完全にモテないわけですよ。やり過ぎちゃっている人は多い。デニムに上だけタキシードを着ちゃう人とか。ハリウッドのセレブじゃあるまいしね(笑)

前田 カジュアルパーティの名目で、上はタキシード、下は真紺のデニムを穿いていたら、「あっ、この人分かっているな」となるけれど、ドレスコードがブラックタイのときにデニムを穿いてきたら、それは完全に間違いですよね。業界の人たちもそうだし、若い子でも多いんじゃないかな、そういう勘違いお洒落さんって。女性との食事で席につくやいなやジャケットを脱ぎだすヤツとかもいる。でもそういうことがNGだと分かってくる女性が増えると、ますます僕ら40代のほうがモテるだろうね。

藤井 絶対そうですよね。

前田 女性誌はちゃんとわかっていて、そういうT.P.Oの特集があったりするでしょ。一方で男性誌ではそういうマニュアル的な特集がなくなってきているから、どう振る舞っていいか分からないんじゃないかな。

大谷 そうしてもう同じ年の男性とは付き合えなくなるんですよ。

藤井 なるほどね。

モテる業界人の口説き方Vol.1
Dec 29, 2010

今回は『LEON』本誌でお馴染みのブランド、「BOGLIOLI」「FAKTOR」「Finamore」「Notify」等の正規エージェントである(株)アマン営業本部長、藤井尚志氏に参加していただきました。仕事がデキる、そしてモテる!ことでファッション業界でも有名な二人が集結したとあって、今宵のモテトークはどんな展開になることやら・・・・。


藤井 今の若い男の子を見ていて思うんだけれども、全然アグレッシブではないじゃない?見た目は若くてきれいだけれど。

前田 僕も全く同じ意見。女の子のほうがアグレッシブかも。

藤井 女の子に聞くと、彼氏や男友達と食事に行くと、割り勘が普通っていうんですよ。

大和 そう、そうみたい。ちょっと僕らの世代じゃ考えられないことだけど。

藤井 僕らの世代ってそこは格好つけなきゃダメでしょ、という共通の認識があったけれども、今は違うみたいだね。でも、デートに誘ってOKしてもらって「じゃあ、割り勘ねっ」なんて、やっぱり言えない(笑)

大和 女の子も、昔はそれが普通だと思っていたはずなんですけどね。

藤井 僕らが若いころって、周りに対して気遣いはできなかったとしても、引っぱることはできた。「俺についてこい」みたいな。僕らの若い頃ってそういうワイルドな時代だったじゃないですか。でも今どきの男の子ってナンパもしないらしいし、かといって気遣いがあるかと言えばそうでもないし。

大和 話を聞くと、できれば女性から誘ってほしいと、本気で思っているらしいですよ。

藤井 今の若い女性たちがある意味、気の毒ですね。僕らオヤジ世代のほうがよっぽどアグレッシブだったりするじゃないですか。

大谷 そう。だから年上好きの女の子が増えているんですよね。

藤井 仕事にしても、女性を口説くにしても、工夫やオリジナリティって必要でしょ。僕は営業をやっているから、ナンパは商売でバイヤーを口説くのと一緒です(笑)

大和 全く一緒ですよね。ナンパが下手な人は、ものが売れない(笑)

藤井 口下手な営業は仕事ができないですよね。

大和 そこが職人職と違うところですよね。

前田 でも僕はナンパは苦手です(笑)。人と話すのはすごく好きなんですけどね。多分ね、サービス業や営業職向きではないと自分で思っているのね。すごい恥ずかしがり屋だし。

藤井 前田さんのいいところは、例えばどんな忙しいタイミングでお会いしても、常に一生懸命に受け答えしてくれるところ。物事について真剣に向き合っている感じがする。

大和 いい加減にするってことはないですね、確かに。

前田 またも仕事の話になっちゃったね(笑)で、今回のテーマは?

大和 今回は「業界のモテる男が語る、女性の口説き方」でいかがでしょう?

前田 すごいね、そのタイトル(笑)

大谷 今回はプライベートな話まで聞かせていただきたく。藤井さんは業界でもモテる男として有名だそうで。

藤井 いや、モテるというか、失敗を恐れて成功はない、ということでしょうか(笑)

前田 ははは!俺と相当、性格が違うと思うよ~。

藤井 前田さんは逆に女性のほうから寄ってくるんじゃないですか?

前田 いやいや、仕事モードではいろんなことに対して割と敏感で、ちょっとしたニュアンスの違いにも気が付くのに、女の子からのアプローチには全くもって鈍感です(笑)

大谷 ファッション業界はいい意味でガツガツしている人も多いと聞いたのですが、本当ですか?

前田 そうね。この業界、多いね!

大谷 ということは藤井さんももちろん、ガツガツ系ですね(笑)

藤井 僕が若い頃なんか10回フラれても11回目はアリかな?と思っていましたね。

大和 僕もそうですね。

藤井 最近では、例えば一緒にご飯にいくことだったり、その先のことだったり、目標がありますよね? 僕の場合は自分の目標に対してどうYESという言葉をもらおうかと考える。それで、断れない状況に周りから固めて「こうなるのが自然でしょ?」という方向に持って行っちゃう。

大和 なるほど!(笑)

大谷 でもそれは、女の子が自分に好意があるって分かっているからですよね?

藤井 そういうところは僕わりとポジティブですね。食事に行く時点でそんなに嫌がられていないと思っているので、あとはいかに楽しんでもらうか。場所を変えたときのバーの椅子も重要ですね(笑)

前田 椅子ね!『LEON』でもやったな~それ。

藤田 シチュエーションづくりが大事。

大和 男と女が親密な関係になりやすい椅子ってありますよね、やっぱり。

藤井 そういう雰囲気になれるところってありますよね。煌々と明るい場所は、本気で口説くにはやっぱり不適切ですね。

前田 あと、あまりにもオープンすぎたりとか。

藤井 隣の人との距離感も大事ですね。それに、あまり奇をてらった演出はしないですね。いちばん最初のデートに行くときは居酒屋は確実にないですね。

大谷 カジュアルなトラットリアもないですか?

藤井 ないですね~。むしろ和食屋さんはアリかな。ゆっくり話ができるので。いい割烹や小料理屋さんだと、大将と話さなきゃという雰囲気になるので避けますね。

大谷 藤井さんが思う、デートにベストな店とは?

藤井 ちょっと外側の喧騒が見えるような、個室があるところですかね。もしくはお客さんとお客さんとの間隔がゆったりとられている席があるお店がいいかなぁ。
具体的なお店はオフレコです(笑)。いちばん恥ずかしいのが、頑張って考えて「ここは気に入るだろう」と思って予約した店が、逆に女性のほうが常連だったりするとき(笑)。

前田 それは危険だね。『LEON』ではそういうことも考慮に入れて“家飲みがいいんです”とか、“あえての○○で、ハズした場所を選びましょう”という提案をしてます。でも藤井さん、店とか詳しそうですよね。

藤井 結局は自分がデイリーに使っている居酒屋なんかに一緒に行けるコが最終的にはいちばんいいですよね。

大谷 最後にはそういうところに連れて行くんですね。それは何回目くらいですか?

藤井 三回目かな。

前田 お~(笑)

藤井 和食の美味しいところ、二回目はイタリアンでインテリアもちょっと洒落たところ、その次はいきなり炉端焼き、みたいな。

大谷 急展開だ(笑)

藤井 串揚げ屋とか。

大和 でも僕ら世代になってくると、この業界の人って殆ど遊ばないですよね。

藤井 そうですね。

大和 だから、夜遊びっていうと藤井さんと一緒にいることが多い(笑)。

藤井 なんでしょうね。みんなあんまり外に出たがらない。僕らより上の50代の人はバンバン遊んでいるんだけれど、なぜか40代や30代の人は遊ばないんですよ。

前田 結婚して落ち着いちゃうのかなぁ。

大和 だから、気づけば藤井さんとばっかり遊んでる(笑)

前田 ハハハハ(笑)会社で責任のあるポジションにいるから、遊べないタイミングに差し掛かるのが30代後半から40代前半なのかもしれないね。ビジネスの場としていろいろなお店は知っていても女の子を口説くためのお店のバリエーションはどんどん減っちゃう、みたいな。

藤井 僕はむしろもっと若い子に遊んでほしいですね。せっかくファション業界にいて人よりちょっとトッポいものを着ているのに、家と会社の往復だけで、たまに居酒屋に行くだけだったら「必要ないじゃん!?」って思う。

前田 単に合コンをして、カラオケ行って終わるんじゃなくて、違うフィールドへの遊びに連れ出そうとするような、バイタリティある遊び方がいいよね。もしかしたらクルマなのかもしれないし、ゴルフかもしれないし、アウトドアかもしれない。でも、さっきから話題になっている今の若い男の子の状況って、女の子側にも問題があるんじゃないかな? 例えば上昇志向をもって頑張っているオトコよりも、ちょっと達観しちゃっているようなオトコが格好良く見えちゃったり。で、結果、そういうオトコは夢しか語れないから、たいていは短いつきあいで終わっちゃう。デキ婚で即離婚、っていうパターンが多いのもそんな世代観を反映しているように見えるな。僕らが若い頃ってクルマがないと絶対に女の子は口説けなかったし、受け入れてもらえなかったでしょ。だからクルマを買うためにバイトもしたし、いいレストランに連れて行ってあげたいから、雑誌を読んで勉強もした。でもね、それは無駄なことじゃなかったと思う。

藤井 たしかに。

前田 その車も「何、乗ってるの」?と聞かれて答えたときに「へ~!乗りたい!」と思わせるクルマじゃなきゃダメだったしね。話も面白くなきゃいけなかったし、夜景が綺麗に見えるレストランを知っていなければいけなかった。たとえばクラブとかで遊んだあと、そこから抜け出してどうするか、考えたもん。今の若い子だったら変な話、表参道で仲良くなったら、そのまま渋谷のラブホテルに直行というパターンもあったりして? でも、小さな行動範囲やコミュニティの中で遊びが成立してしまっていることがつまらないじゃない? 結果的にその男と別れた後、それこそ藤井さんなんかが現れたら、「なんてこの人、面白いんだろう」って感じると思うのね。

大谷 だから今の若い子たちに、大人の男性がモテてる秘密は、そこにありますよね。

藤井 僕らの歳ってギリギリ、バブルを体験してきた世代なんですよね。クラブもあったしディスコもあったし。クラブで酒を買おうと並んでいると、年上の人が「お前、何飲むの?おごってやるよ」って、見ず知らずの人が奢ってくれるような時代だった。だからそれを知っている僕なんかは今でも後輩に奢るのは当たり前だし、女性に支払いはさせない。でも今の若い男たちはそれをスタンダードだとは思っていないんだよね。悪気があって割り勘にしてるわけじゃないとおもうんですよ。

前田 それは実際のデートのシーンでもあるわけ?

大谷 「気持ちだけ受け取るね」という子は実際多いですよ。

前田 やっぱり、そうなんだ! そうなるとやっぱり“オヤジ”のほうがモテるだろうね。


モテる男の見た目Vol.2
Dec 01, 2010

野口 男性のお客様がきて、「どうされますか?」と訊いたときに「お任せします」といわれることがあるのですが、そのときに「では、どういう女性が好きですか?」と訊くんですね。

前田 へ~~!!

野口 「どういう女性にモテたいですか?」と。その女性像から逆に導き出して、こういう女性だったら、こんな男性が好きというのを説明して「確かに!」と納得していただいてからカットを始めるんです。そうすると「自分がこんな風に変わるなんて!」と言ってくださる方もいらっしゃいます。

大和 前田さんだったらなんて答えますか?

前田 う~~ん、俺!?全部の人・・・・かな?ハハハハハ、それは冗談(照笑)。でもそれを訊かれるといちばん困るんだよね(笑)

野口 あえて言うと?

前田 外見での選り好みはないからなぁ。あえていうなら、シュっとしている人が好き、かなぁ。歩き方や立ち姿で背筋がシャンと伸びている人。何かに頼っているような人は好きではないかも知れない。

野口 前田さんをはじめ、世の男性はみんな、モテたい願望があるんでしょうか?

前田・大和 それは絶対、誰しもがモテたいと思っているでしょう!

前田 野口さんの好みのタイプは?

野口 私ですか?

大和 前田さんがストライクということは分かった(笑)

野口 フフフフ(笑)肉厚な人が好きですね。筋肉質でも、ぽよんとしていてもいいんです。抱き着心地が良いひとがいいですね。頼れる感じがしません?守られたい、みたいな(笑)顔の好みはもうなくなりました。

前田 女の人ってそう言うよね。

野口 最初、「嫌だ~」と思っていても、性格を知るとカッコよく見えてきたり。あまりにも男性側に自分のスタイルがあり過ぎてスキがないと、女性からいけなくなっちゃいます。

前田 野口さんって話すほど、一見さらっとしているけど、繊細な面も持っているよね。サバサバしているのに、ときに頼りどころがほしくなったり、しない?

野口 そうですね!立ち止まった時に傍にいないと寂しい。仕事モードのスイッチが入っているときは「近寄らないで」という感じなのに、ふとしたときに「ちょっとこっちに来て、甘えさせて」みたいな。ワガママなのかもしれません。

前田 男にすると一番大変だ、それ(笑)でも年上の人が好きという女性に案外多いかもね。同世代だと、よほどキチンとした男の子じゃないと、必要とされている時にちゃんと支えてあげられないかもしれない。そして必要ではなくなったときに、スッと引ける人でないとダメだよね。

野口 そうなんです。

前田 20代、30代、40代と、それぞれの年齢での限界はある。20代の女性が求める限界に対しては40代のほうがより余裕がある。もしかすると50代になると逆に余裕があり過ぎて、フィットしなかったり。40代半ばが持つ独特の空気、余裕感がフィットするから、大人好きの20代女性は多いのかなと。ふと思ったのね。

野口 その何かがモテる秘訣なんでしょうね。

前田 “モテる”っていうのも難しいよね。「もう一度会いたい」「素敵な人ね」と思わせる人がモテるのか。それこそ「何人も女を抱いたぜ」みたいな人が本当にモテているのか。自分が『モテる○○○』を謳った雑誌を作っていて、案外長く続けていられるのは、モテるって言葉の意味は本当に沢山あるから。「この人を離したくない」「一回だけでいいからこの人とデートしてみたい」も“モテる”だと思うし。

野口 本当にモテる男は、「また会いたい」と女性に思わせる男じゃないでしょうか。女性からもう一回会いに行ったときに相手の反応や感じを見たい。向こうからガツガツ来られちゃうと、自分に興味があるのがミエミエなので、こちらが会いたいと言わなくても来てくれるから、放っておいてもいいやみたいな(笑)

前田 なるほどね。能動的に攻めていくのも、結果、モテるのだけれど、女性から見たときに漠然とモテる男の例を挙げろと言われたら、次にもう一度会いたくなる男なんだ。

野口 思わず「自分から誘ってみちゃおうかな」みたいな(笑)

前田 すごい、それ超モテるだね。

大和 深いですね。

前田 深いね。俺ちょっと今、ドキっとしちゃった(笑)

野口 フフフフフフ(笑)

大和 僕なんて完全に「あいつから誘ってくるからいいだろ」と思われるタイプ(笑)

前田 でも、それはさ、結果的にモテればいいじゃない?俺なんか仮に想ってもらったとして「でも、前田さん忙しいから、いいや」と思われてたりしたら、もうそれっきりってタイプかも。結果、モテてる実感もない、と。

野口 そうですよね。自分の中での“モテた感”はないですよね。なので、そこに忙しいからダメだと思わせないで、女性から誘ったら応えてくれそうな隙を作っていただかないと、だめなんです。

前田 なるほどね。俺、隙だらけ(笑)

野口 隙だらけって!前田さんはそう見えないですけれども(笑)でも実際、ガンガンくる男性も本気度が伝わるから嬉しいし、それを見ていて「一途に女性を思えるって素敵だな」ってモテるというパターンもあると思います。その男性本人に“モテてる感”は伝わらないんですが。“モテてる感”を男性自身が浴びたいんだったら、女性から「次また会いたいな~」「付き合いたいな~」と誘えるように隙を与えている男性のほうが、男性自身もモテてる感じは味わえますよね。

前田 なるほど!それは考えたことがなかった。

大和 女性に誘われるっていうのも喜びだよね。

野口 忙しい人ほど、ちょっと勇気を出して誘ってみたら「合間をぬって会ってくれた」という感じがして嬉しい。こっちもドキドキして、本気の好きではなかったとしても「私、頑張っちゃおうかな」という気分になってしまうかも。女度をアゲてくれる気がします。

大和 なんか今の時代にあってますね、そのモテかた。

前田 ね、余裕がある。今の『LEON』の目指すところだよね。

野口 余裕のある男性はモテますよね。

前田 そうなんだよね。男もシャンとしていて、そのシャンとした時間の中に自分が入っているということが、女性にとってひとつの優越感だったり、満足だったりするだろうし。いい話するねぇ。

野口 ちょうどいま彼がいないので、妄想モードだったらいくらでも入れます(笑)はぁ、今日は緊張しっぱなしでした!でも面白かったです、このテーマ。

前田 こちらこそ勉強になりました!しかし案外奥深いね、モテるって。

ゲスト・野口由香さん(27歳)

表参道にあるヘアサロン『imaii』でスタイリストとして活躍。お客さんの7割が男性だそう。その人に似合うヘアスタイルを的確に見抜く確かな腕に長年通うファンも多数。今回のブログを読んで「雰囲気をちょっと変えてみようかな」と思った男性は野口さんのもとへぜひ!!日々のライフスタイルを綴ったブログ『NOGU日記』http://ameblo.jp/yukanogup/も必見です!

<野口さん所属のサロン>
『imaii scaena×colore 』
渋谷区神宮前4-28-21 ハーモニー原宿ビル2F
Tel:03-5411-2345
火休
平日・土 10:00~21:00
日・祝 10:00~19:00

モテる男の見た目Vol.1
Nov 19, 2010

今回はヘアサロン「imaii scaena×colore」 所属の美しすぎるスタイリスト・野口由香さんにご登場いただき、おなじみ『LEON』編集長代理の前田氏とモテる男の見た目について語っていただきました。一同、納得の女性目線ならではのモテワザも披露!?ヘアスタイルに悩む男性の方々や、女性がワカラナイと頭を抱える男性の方々・・・・今回のモテトークは必見です!


野口 今日はよろしくお願いします。

大和 今日は外見を中心にしたモテトークということで。

前田 野口さんの職業がヘアメイクということで!

大谷 しかも彼女、実は年上の男性好きらしいんです。

前田 そうなの?へ~~!幾つぐらいまでOKなの?

野口 45歳くらいまでは。尊敬する先輩であるヘアメイクの方で前田さんを知っている人がいて「前田さん、すっごい素敵だよ~」という前情報をもらっていたので、今日はお目にかかる前からドキドキしっぱなしでした(笑)前田さんは声が素敵ですよね。

前田 そうかなぁ。照れます(笑)

野口 語尾にグッとくるみたいな。最初から声にやられちゃいました(笑)

大和 女性って、声フェチ多いよね。

前田 って言われるよね。でも、例えば僕もそうだけど、言われて気づくこともいっぱいあって。実は何度か「色気のある声ですね」って言われたことがあるんだけど、確かに自分でもそれは意識していて、以前にも「モテるオヤジは話す言葉がアンダンテ」という企画を立てていて。アンダンテ、つまり“ゆっくりとしたテンポで話しましょう、それがモテる秘訣です”っていうページを作ったりしました(笑)その原稿を自分で書いていて、「あ~、これはモテるな!」って自己満足に浸ったことはあります(笑)

野口 女性はうっとりしちゃいますね。

前田 ただそれだといつもカッコつけている人みたいだから、普段にないリズムをフッと与えることでモテるんじゃないの?という半ば妄想の話だったのだけれども。

野口 上手なところ、ついてますね~。

前田 うなずき方も、ゆっくりゆっくりとうなずいてあげて。

野口 でも声を伝えるのって難しいですよね。「こんな声がモテますよ」ってCDを雑誌の付録につけるわけにもいかないし(笑)

前田 アハハハハハ。そうだよね。

大和 じゃあそろそろ本題へ。ヘアメイク野口さんが語る最低限の身だしなみ、とは?

野口 サロンではカットを担当しているので、真っ先に目が行くのが髪型なんです。どんなに洋服や持っているものがカッコ良くても、「髪が伸びてるな~」と感じるとマイナスですね。

前田 俺じゃん、それ(笑)

野口 でも前田さんのように伸び掛けが逆にアンニュイで、それが色気に繋がっている方もいます。例えば2~3週に一回のペースでカットに行っていて、一寸の狂いもないですというキメキメオーラは女子として「この人、近寄りがたいな~」と思う時も。「几帳面な性格なのかな~」とか「潔癖症なのかな」と穿ってみたり。

大和 じゃあ程よい抜け感をだすのには、どういうところが重要なの?

野口 スタイリング量でしょうか。いま若い子はウェットな質感が綺麗とされています。形が明確なスタイルよりも、アンニュイをセットでつくる、という感じのほうが色気があるといわれています。いわゆる草食系男子は前髪が長かったり、どこか顔を隠したがるコが多いんですよね。

前田 そうだよね。

野口 でもやっぱり肉食男子、オヤジ好きな女子としては前髪をきちんと上げていて欲しい!いちばんいいのは短髪でスッキリ。遊び心があって、動きがあるヘアスタイル。それでいて天然パーマだったりすると“萌え~”ですね。
前田・大和 ハハハハハ、なるほどね!

野口 天パーを嫌がってストレートパーマをかけちゃう人は駄目ですね。

前田 あっ、俺、天パーだ!襟あしとか、すごいハネるもん。

野口 なにも天然パーマをコンプレックスに感じる必要はなく、逆に生かせばいいのに、って思っている女子は結構多いですよ。

前田 へ~、そうなんだ。

野口 ストレートパーマをかけている男子は何故か受け付けないんですね、私は。それは自分の持っているものを生かそうとしているのではなく、隠そうとしているから。それ自体が女々しく思えて。どんな髪質でも、どんな髪型でも、その人の素材を生かしている人が好き。

大和 体型でいうと、細い人も太っているひともいるけれども、全てさらけ出しちゃったほうがカッコいいってことだね。

野口 そうですね。コンプレックスを生かす方向に努力を注いでいる人はやっぱり素敵だな~。魅力的ですね。

前田 それって、何に関しても言えるかもね。ありのままの自分を好きになってくれというのはおこがましいけれども、努力の矛先が隠す方向ではなく、自分のいいところを伸ばすって考えたほうが、きっとあらゆる事においてプラスに見えるよね。事前にヘアメイクの人がゲストと聞いていたら俺、帽子被ってこなかったのに(笑)朝5時に家を出てきて、風呂に入って乾かしてそのまま出てきたんだけど、帽子がいちばんいいんだよね。最高に誤魔化せるもん。

野口 いつも前田さんはどうやってスタイリングしているんですか?

前田 ジョンマスターオーガニックのウェットジェルだけをつけて、ぐしゃぐしゃってやって終わり。髪型に気を使わなくなった理由がオートバイなのね。普段の足として10代のの頃からずっとオートバイで動いていて。そうすると常にヘルメットでしょう?どうやって形を作ろうと、会社に着くころにはペッタンコ。なんで、ウェットジェルだけ付けておくと手もベタベタしないし、会社についてからワッと一度上げて、くしゃくしゃっとすれば、なんとなく髪型として成立しちゃうから。

野口 私、オートバイに乗る男性は短髪であれ、と思うんです。分け目が付いちゃって、どんなに濡らしても戻らないし。

大和 僕もそれでオートバイ乗らなくなったんですよ。ヘルメットをとったときの情けなさといったら。

前田 それ、ちょっと分かるなぁ。ケアに関してはすごい適当かな。恥ずかしながら(笑)ダメなんだよね~。自分でも反省するんだけど、肌のケアもちゃんとすべきだと思う。歳をとるところはとっていいのだけれども、何もしないでただ枯れていくより、努力をして味を出していったほうがよっぽどいいじゃん?

野口 男性として、深みが出ますよね~。

前田 洋服を買ったり、食事をするのと同じくらいに、実は大切な事なんじゃないかなぁ、と。女性は幾つになってもメイクをするわけじゃない?常に鏡を見て自分と向き合うわけで。じゃあ、男がその努力を何もしなくていいという理由はなくて。最近はそういうふうに自分を律しなきゃ、と思っています。

野口 海好きの方とかよく日焼けをされますよね?男性もシミ・シワ・毛穴の開きが一番気になると思うんですが、シミとシワってある程度歳を重ねるごとに深みとして出るからいいのですが、毛穴の開きってどうしても凹凸感がでるので、そこがいちばん気になるんです。これは特に許せないんですね(笑)

前田 へ~、なるほどね!

野口 きちんと保湿ケアをしている方は毛穴の開きだけは押さえられるので。

大和 なるほど。

野口 シミ、シワが気になっても毛穴の開きがなかったら、「カッコいいな~」ってなりますね。

前田 へ~。こわいね!

野口 女子たちは見抜いてます(笑)それがまさかの黒ズミだったらショックですよね!

前田 うちの編集部員たちもすごくケアしているよ。香水なんかもちゃんと考えてつけているし。僕なんか仕事先の美容部員の人に怒られたことあるもん(笑)

野口 いまサロンでダーマロジカというエステ用の商材を扱っているのですが、男性にも向いていて、30代~40代のお客様の誕生日プレゼントで差し上げたりしています。スプレータイプの化粧水なので、顔を覆うようにして塗るという所作に抵抗や恥ずかしさをもつ男性でも使い易いんです。顔を簡単にタオルドライして、スプレーをシュッシュとするだけ。使うと使わないのとでは大違いですよ~。

前田 だって俺、ヒゲも剃るのが面倒臭くて生やしちゃっている(笑)

大和 そんな感じですよね。似合っているからわざとっぽいんだけど、前田さんの性格的には(笑)

前田 たまに剃ると、ツルッツルなんだよね。逆に気持ち悪いもん(笑)もともとシワができにくい家系なのね。なので子供っぽく見られるのが嫌で、30歳をこえたあたりからヒゲを生やし始めたのだけれど、いったん生やすと剃るのが面倒くさくて(笑)2ミリぐらいまでいったん剃っちゃうと、5ミリくらいになるまでそのまま。今は結構伸びているほうですね。そろそろ、ツルンとしようかなぁ。

野口 まばらにならずに、それだけきちんと生える方もあまりいらっしゃらないですよね。

前田 シェーバーの長さを2ミリに設定して、頬のあたりとアゴ下はすべて綺麗に剃ります。楽して、いちばん陰影がつけられる。一応は考えていますよ(笑)

野口 上手いですね~。ヒゲと眉ともみあげは男性誌でも特集を組まれますからね。眉毛がいちばん印象かわるので、最近では眉カットを希望される男性も多いですね。

前田 僕も変わるかな?

野口 だいぶ変わると思いますよ。

前田 洋服も髪型も含めて、自分がやったことがない事にトライしてみるっていうのは、大事だよね。「いや、眉カットなんていいよ」と言っていないでやってみる、とか。「パーマなんて、恥ずかしい」と言っていないで、とりあえずやってみる。ケアとトライをきちんと出来れば、洋服をどんどん変えていくのと同じように、もっと楽しめるんじゃないかな。案外日本人の男性って、自分に似合う髪型を自分自身で決めつけてしまっている傾向はあるよね。もっと柔軟に色々な髪型にトライすればいいのに、って。これは自分も含めて本当に思う。

前田氏の帽子ぐせをサッと直す野口さん。さすがは技術に定評があるだけあって、ほんのちょっと触っただけで劇的に印象が変わり「お~!」と、一同口をそろえるほど。

スタイリング完了!前田氏も満足げな様子でのツーショットをパチリ。二人ともキマってます!

モテる男とは?第2弾 Vol.2
Oct 27, 2010

大谷 和葉さんは50代の人とも付き合った経験があるとか。どんなところに連れて行ってもらったりしてたの?

近藤 その人はシンガポールに住んでいたんですけど、とあるバーに連れて行ってもらったとき、常連にしかださない飲み物を出してもらったんです。秘密の飲み物を二人で飲んだ時は楽しかった。付き合うか付き合わないかのときでしたね。

大和 微妙な時って、なんであんなに楽しいんだろうね。

西形 なにか自分のことを覚えていてくれたうえでの誘いはうれしいですね。

近藤 あと、誰にでもしているわけじゃない、とわかる誘い方は心に残ります。結局女の子ってみんな繋がっているから「この人から誘われたんだ~」って友達に打ち明けると、「えっ!?私も!」なんてことがあります。だから男性はそんなところも気にされたほうがいいかも(笑)。わたしはみんなに話すようにしてますね(笑)。

前田 う〜ん、女性を誘うってやっぱり難しいなあ。男性も女性もそうだけれど、最初の一歩って勇気がいることじゃない?難しいのが、僕なんか『LEON』をやっているイメージが先行していて、色々な遊び場所を知っていて、どんな楽しいことが待っているんだろう、と相手に過剰に期待されているんじゃないかと思っちゃう。そうでない男性でも年上である以上、歳の差のぶんだけ積み上げてきた何かを試されるんじゃないかと気構えてしまう人は多いんじゃないかな。それで上手く誘えない人も相当数いるはず。

近藤 あ、それわかるかも。私なんかは一人で遊びに出歩くのが好きなんで、過剰に期待はしないんですけど。けれども、「こんなサプライズがあったか!」とひとクセあるような場所を知っている人は惹かれたりしますね。でも美味しいという感覚を共感できればその場は楽しくなるんですよね。

前田 じゃあ、とにかく好みがあればその好みを察してくれるととっても嬉しいし、そういうのがなくても楽しい会話があったり、この人といると楽しいと思わせる何かがあれば何処に連れて行くとかはいちばん重要なポイントではない?

近藤 食べ物の趣味が合わないと厳しいですね。

前田 思い切って自分が美味しいと思うところに連れて行って、それが合わないんだったら仕方ない、ということでいいのかな?

近藤 むしろ美味しいものを食べられたら何でもいいんです。美味しい定食屋さんでもいいんです。特に期待はしていないかな。

前田 ところでね、話がかわるけど、今日たまたま僕も大和君もデニム穿いているじゃない?男性のジーンズ姿って、どう思う?

近藤 私、いちばんスーツが好きなんですよ。でもスーツをいつも着慣れている人がデニムをオシャレに着ていると、その姿にドキッとした経験はありますね。

西形 私も個性を出している人だったらどんな格好でも大丈夫ですね。

近藤 あまりに個性的なファションの人がいるけれども、それは自分勝手で違うと思う。ファッションも会話も思いやりだと思うので、気遣いのある、相手を落ち着かせる服装だったら好感が持てます。変にダサくても違和感を感じるし、逆にキメキメでも引いちゃう。だからちょっとユルいデニム姿って結構好きですね。

西形 ちょっと隙があったりするくらいがいいですよね、男性は。

近藤 オシャレ過ぎると、付き合ってからのプレゼントにも困っちゃう。逆に何もあげないほうがいいんじゃないかって(笑)

前田 僕もこういう仕事をしているからこそ、やり過ぎたオシャレにだけはならないようにしてます。結局男性は女性より出すぎちゃ行けないと思ってもいるし。

西形 それはそれで演出ですね。

近藤 でも前田さん、スーツも似合いますよね。前回のブログでみました。

西形 逆にこういうラフなスタイルを着こなせるほうが、スゴいなと思います。

前田 照れるなぁ。ありがとうございます(笑)。さっきの話に戻るけれども、実は今号の『LEON』で「モテる波乗りデニムのこなしかた」っていう企画をやってるんです。

大和 それはまたすごいタイトルですね。

西形 どんな企画ですか?

前田 波乗りっていわゆるサーフルックを想像されるかもしれないんだけど、真っ紺のおろしたてデニムではなくて、ダメージ部分の綺麗な白糸と海の波を掛けているんです。ときどき若い子が糸が黄色かったり、ペンキが散っているようなダメージデニムを穿いているのを見かけるんだけれども、ああいうのを大人が穿くのは難しいですよ、というメッセージをこめて。ちゃんと綺麗に色落ちしているものだとTシャツにデニムというシンプルな装いの時にもコントラストができてファッション的にもいいし、穿きなれている感じすらする。清潔感もありますしね。だからこそ意図的に波乗りデニムを仕掛けていこうかと。

近藤 面白いですね。

前田 ま、そういうネタもやってるので、こういう色落ちしたデニムも穿いているんですが、女性から見てどんなもんなのかなぁ、と(笑)

西形 いや、素敵だと思いますよ。

近藤 デニムといえば私の周りの大人の男性はみんなユニクロばっかり(笑)

前田 よくできているからね、実際。ただユニクロにないのがこの波乗りデニムの色落ち具合。加工とかにお金がかかるから、プライスも上がるんです。

近藤 それは雑誌に出さなければわからないですからね。訳も分からず「ただのデニムがなんでこんなに高いんだろう?」って言っている大人の男性はいます。

前田 それはそれでひとつの価値観だとは思うけど、なんていうんだろ、僕はたかがデニム、されどデニム、だと思ってる。洋服の基本だとも思うし。その基本が“とりあえず”では自分自身が“とりあえず”な人間になっちゃうようで。白いシャツにジーンズが素敵とかっていう話ではなくて、いちばんシンプルで演出も何もできない格好が60歳になっても似合う男でありたいから、ちゃんとデニムを穿ける男でいたいというか。白洲次郎さんの写真で、へインズのTシャツにリーバイスのデニムを穿いて、ただ座っているだけのあの有名なカットのように。けれどもすごくカッコいいじゃないですか。あれって彼の後ろ側にエピソードがあるからこそ、より印象深いんですよね。

近藤 私、わかります!そういうとってもシンプルなスタイルが似合う男性に、キュンってしちゃった経験がありますもん(笑)

前田 アハハハハ!

近藤 高級な料亭や割烹ではなく、カジュアルなカウンター和食の店にお誘い受けたときだったんですけど、普段パリッとしている人だっただけに、妙にデニムスタイルが似合っていて。そういう瞬間に「素のアナタ」を発見したみたいな感じがして急に親近感が湧きます。

西形 シンプルな服こそ人間性が顕れるから難しいんですね。たしかにデニム姿で素敵な年上男性は私の周りには少ないですね。

前田 シンプルなものって身体のラインはもちろん、人としての在り方とか、立ち居振る舞いがとっても重要になってくるじゃないですか。女性の白いTシャツにデニムが似合うような子はやっぱり男からしても「素敵だな~」と思うわけだし。じゃあ究極は何かというと、デニムをのぞけばやっぱり男性はスーツなわけでしょ。で、勝手なイメージでいうと女性の究極は黒いタイトなワンピース。これがなんの演出もなしに着こなせる人はスゴイと思う。

近藤 実は私の勝負服、黒いワンピースなんですよ。

前田 でしょ!

近藤 それも、装飾品は何も身に付けずに。でもここでこれを言うと、もう今後できないじゃないじゃないですか(笑)。心に秘めていた勝負服なのに、つい言っちゃった(笑)。前田さんの言葉にとても共感できたので。

前田 身体の線もそうだし、立った時の姿勢やラインも強調されるじゃない、黒って。だから堂々と立てば堂々と見えるし、しなっと見せようとしたらそれなりに見える。

近藤 そうなんです。女度がアガった気分になれるんですよ!

前田 すごく緊張する色だしね。

西形 いや~、和葉には勝てないな、これ(笑)

近藤 今日はかなり暴露をしてしまいましたが(笑)勉強になりました。波乗りデニム特集、早速見てみます。

前田 こちらこそありがとうございました。僕も随分と色々な話をしちゃいましたが、ちゃんとまとまるのかなぁ。大和くん、大谷さん、ヨロシクです(笑)

美女たちに囲まれて照れ笑い!?な前田氏。


左からB.R.SHOPスタッフ高岡みさきさん、近藤和葉さん、前田陽一郎氏、西形彩庵さん、ライター大谷繭子。

そしてジョシ好感度が高かった前田氏のデニム姿でゴザイマス。


モテる男とは?第2弾 Vol.1
Oct 21, 2010

前回大きな反響のあった「モテる」企画ですが、今回は二人の女性ゲストを招いて語っていただきました。40代男性は本当に20代女性にモテるのでしょうか?
ご存知前田さんと女子たちの本音満載でお届けします!


前田 今回僕は聞き役で。ガールズトーク、しちゃってください(笑)

近藤 さっきも彩ちゃんと話をしていたんですが私たち20代半ばの女の子って大人の男性好きなんですよね。

西形 思いやりや感謝の気持ちを持っている人が好きですね。それがたまたま大人だったというだけで。

近藤 今の若い世代はメールで気持ちを伝えますが、40代の方々はそういった世代ではないから、きちんと話をしてコミュニケーションをとったうえでこちらの気持ちをちゃんと聞いてくれます。そして年下なのに敬ってくれる。そういうところに惹かれますね。

前田 実際に付き合ったことのある人で年齢差はどれくらい?

近藤 私が22歳のとき、52歳の人と付き合ったことがあります。

前田 マジで!?

大和 それは、わかる気がする

西形 私は7つ上の32歳ですね。やっぱり年上のほうがきちんと女性として扱ってくれますね。それに勉強になります。自分が成長するというか。

前田 女性と男性では精神年齢の差こそあれ社会に出て能動的に生活している人、将来のビジョンを考える段階にきた女性や男性はいずれも大人だと思うんです。だから、最近、年齢で区切ることがいかにナンセンスなことなのかを実感していて。近藤さんも西形さんもそうだけれど25歳で会社を経営する、自分の技術で作品を残していくといった自分の生き方みたいなものをきちんと持っているでしょ。そういう女性はきっと、もうきちんとオトナの女性で、だから年齢は関係ないのかな、と。年上の人と付き合うと勉強になるということだけれど僕自身「人と接する=何かを得ることがある」と思っていて。自分が25歳の女性に一体、何が教えられるんだろう?と思う。世の中の男性みんなが思っていることなんじゃないかな。

大谷 仕事を通じて出会う人で、魅力的な男性は沢山いますよね?どういった部分に惹かれますか?

近藤 「この人のこと好きだな」って思うのって会話のリズム。それがポンポンとリズミカルに合ったときにキュンってしちゃいますね。

前田 相手の機微を感じて馬鹿馬鹿しい話から楽しい話までできる。知性がシンクロするんだろうね。

近藤 そうかもしれないですね。女性の会話をちゃんと聞いてくれて、楽しみつつ入ってきてくれる。逆に自分を前面に出したがる、独りよがりな男性は嫌ですね。でもね、ダメな人に惹かれちゃうことも大いにあるんですよ(笑)

西形 そう(笑)それってなんでだろう。

近藤 男くさい人っていますよね。見た目も口調も。ダメ男ってそういう外見の人に多いんです。そんな人に惹かれちゃうこともあります(笑)

大和 いわゆる結婚しちゃダメな男ってやつね。

近藤・西形 そう、まさにそれですね(笑)

近藤 でもそんなダメ男でも自分が成長できるんですよ。彼が怒っているときには私がこういう態度をとったらどうかな?とか頭を巡らせて。そうすると相手が折れてきたり。自分の成長に繋がる。だからこそ惹かれちゃうんだと思う。

西形 逆に年上だからこそ「何でそこで怒るの?」「もっと寛容にいてくれたらいいのに」と思う時もある。

大和 若いコはぐいぐい引っぱってくれる人に惹かれる傾向にあるよね。だから年上男性と付き合うパターンが増えてきているのかな。

近藤 同世代の男の子では、積極的にアプローチしてくれる人が少ないですね。

前田 そうなの?僕らの世代って女性は女性なのね。友達との線引きがすごく難しいと思っている。この女性いいなと思った瞬間、むしろ友達のラインをキープしていくのが難しくなっちゃう。でも今の若いコたちの会話を聞くに男の子も女の子も、どちらも対等なラインに立っているように見えます。

大和 友達まではすんなりいけても、そこから先に踏み出せないコが多いんじゃないんですか。

前田 じゃあ、なに!?モテるやつは異常にモテてて、モテないやつは友達は沢山いるのにただのワン・オブ・ゼムでしかないこと?

大和 複数ではしょっちゅう会っていても、二人きりでは全く会っていないとか。

近藤 二人っきりで会っていても、ずっと友達の男の子とかいます。同年代ではそういう子のほうが多いですもん。

前田 とはいえ、いつかはいつかはと思っているんじゃないの?でも付き合ってくれるまで猛烈にアプローチするっていう男性が減ってきたのかもね。

西形 秘めているだけじゃ、わからないですよね。

近藤 私は自分から言っちゃうこともありますよ。

前田 でも逆にどうして女性からは言えないものなの?

近藤 むしろ男性から「好きだよ」と言ってもらうことによって女度があがる気がするんです。

西形 女のプライドなのかな。男性か来られたほうが女性は幸せというプライド。固定概念ってありますね。

近藤 でも言わずとも、自分のことを気に入ってくれている男性は目でわかる。目のアプローチは結構好きですね。バーカウンターで隣り合って「君のこと好きだよ」という目をされているとき結構気づきます(笑)

前田 それ、勉強になるなぁ(笑)どういう目なんだろう。

近藤 嬉しそうなんですよ。

大和 男がついそういう目をしてしまう女の子っているんだよね。本当は何とも思っていなかったのに、その目で見られた瞬間に「俺、好きかも」って気持ちになる。

西形 逆にね。

前田 意識の外側にある、自然の表情ってあるのかもね。

近藤 女性って警戒心が強いから、それを上手く解いてスッと入ってきてくれる人はモテるよね。

大和 男側からしても解いた瞬間は快感なんだよね。

前田 解き方ってあるのかな?

西形 女の子がそのとき置かれている状況にもよるんですが、悩んでいた時に察してくれる。それで「頑張れ!」じゃなくて、やんわり励ましてくれる。その言い回しがドンピシャで刺さる時があるんです。

大和 相手の立場に立てる人だよね。すごいカッコいいのに、そういった気遣いができない人もいるから。

前田 そうだね。『LEON』ではたまたまオヤジという言葉を使ってミドルアッパー層に向けて発信はしているけれども、あんまり年齢、年齢というのもナンセンスかな、と。仮想設定として自分より若い男には負けないというのはあっても、結局は年齢ではなく人間力のほうが大事なんだよね。そのために体を鍛える人もいるし、洋服を買ってお洒落をする人もいる。『LEON』でも前向きな男性は魅力的であると謳っていて、そこには年齢はやっぱり関係ないんだよね。

近藤 そこを磨くために人間力のある人と付き合うか、それとも人間力をあげてくれるダメ男と付き合うか(笑)いつも実は右往左往しているんです(笑)

前田 ハハハハハ(笑)なるほど。男から見ても、理知的で凛としていて自立している女性は明らかに魅力的。でも仮に人間的常識に掛けている女性でも顔とか声のトーンとか話している内容が好きで、その魅力的な一部分に抗えなくて好きになっちゃうことも無くはないと思う。

西形 とはいえ私はなにか尊敬する部分がないとダメですね。感性が豊かな人が好きかな。

近藤 といいつつ、彩ちゃんもダメダメな人にも惹かれているよね。

西形 でも後悔はしないですよ。あとになって思い出したりはしますが(笑)

近藤 私は、時間が共有できることが大事。

前田 それ、僕の悩み(笑)とにかく時間がないから。

西形 時間を共有するのってお互いの努力が必要になってきますよね~。

前田 本当に頭が痛い話です(笑)

近藤 女の子って恋愛も上手くいくと、仕事もスムースにいくと思っている子が多いですね。

前田 実際にそうなのかもしれないね。女性という性がそうさせているのかもしれない。

近藤 女性であることを常に実感していたいから、だからその気にさせてくれる異性、彼がいたら「もっと会ってよ」と思う気持ちは分からないではないかな。

前田 そのドキドキがモチベーションになり、朝起きるのが楽しくなったり。

西形 街を歩いていても、この子は一緒に歩いている彼のことが大好きなんだなあ、というのは伝わってくる。

近藤 私は、女性を見て学ぶほうが好きですね。男性ばかり見てたら「なんで会ってくれないの?」なんて愚痴を言う変な女になってしまいそうで。それよりは、ダメ男に対しても「会わなくても理解できるよ」といったスタンスでいられる、落ち着いた女を目指したいと思って。だから素敵な女の子を見ると勉強になります。

西形 時間を共有しすぎると、女性の幅も広がらなくなるということもありますからね。

前田 経済的なことだけではなく、人として自立をしたうえで強くなれる相手ね。10代の時の恋愛と、自分が大人だなと意識し始めたときの恋愛はそこが違う気がする。わくわくする気持ちは未だ残っているけれども、10代との差はどこかある気がします。

近藤 前は相手に依存していたのが、いまは自分が学びあえる関係。そこが大人の恋愛になってきているかなと実感することはあります。


<今回のゲスト>
ランジェリーブランド
デザイナー兼CEO
近藤和葉さん(25歳)

元ミスワールド日本代表。ショーモデル経験を経て前回、モテる企画でご登場いただいた南條千尋さんとともに、ランジェリーブランド「Honey Hearts」を立ち上げる。趣味は海外一人旅とバーホッピングだそう。


アーティスト
西形彩庵さん(25歳)

伝統工芸師である両親のもとに生まれ、幼いころから手織り、手染め、手描きを習い、技法を身につける。その活躍はNHK番組でも取り上げられ、作品は銀座のレストランをはじめ様々なところで飾られている。近藤さんとは気の置けない友人どうし。

こちらは西形さんの作品の一部。
手織りで織った布の上に「筒描き」という技法で絵を描いていきます。

ガールズトークも交えていよいよ話は白熱!
次回Vol.2では勝負服!?や好きな男性の服装についても語っていただきました。
お見逃しなく!!

Audi magazine
Sep 28, 2010

大和 そういえば、ずっと前にやったテーマの「モテる男」は未だに反響があるんですよ。あれはかなりのカウント数でしたね。

前田 え? 本当? う〜ん、なんか微妙(笑)。

大和 さらに詳しいモテ話は次回、第二弾で伺うとして、先日チラッと耳にしたんですが、実はアウディのオーナー向けマガジンである『Audi magazine』も『LEON』編集部が作られているとか。

前田 そうなんです。あまりアナウンスしていませんが、実は『LEON』編集部で作らせていただいてます。きっかけは純粋なコンペティションだったんですが、かれこれ1年はやらせていただいてますね。

大和 『LEON』を作りながらじゃ大変じゃないですか?

前田 大変ですよ、本当に! でも、自分たちのクリエイション能力を別の媒体でも表現したいとはずっと思っていたんで、それはそれで楽しいですよ。しかも『LEON』とは同じ雑誌でもコンセプトはもちろん、作る過程やアウトプットの方法などまったく違いますから、スタッフの育成や編集部員の脳のリフレッシュにとてもいいんです。

大和 なるほど、まったく別のものを作ることで相乗効果もある、と。

前田 僕は『LEON』をファッションマガジンにしようと思ったことは一度もありません。前からずっと言い続けているのですが、ファッションは非常に重要なコミュニケーションツールの一つだと思っています。その洋服を着てどこに行くか、何に乗るか、何を持つかが実は『LEON』にとって一番大切なことなんですね。けれども『LEON』だけをやっているとどうしてもファッション中心の『LEON』のもつ価値観だけに引っ張られちゃう。そこから感覚を時には解放してあげる必要があるんです。そういう理由からも『Audi magazine』にはかなり積極的に取り組んでいます。

大和 でも、僕から見ていると結果強いもの同士が手を組んでいるように見えます(笑)。

前田 アウディはこの不況下にあってヨーロッパではもちろん、全世界的に売れ続けているブランド、間違いなく勝ち組ブランドですよね。当然アウディと『LEON』が手を組むことはさらなる強みになると思いました。僕個人で言うと“『LEON』しかできない編集者”ではなくて、デザインもアプローチも手に取る層も、全く人々に向かってきちんとしたものを提供できる編集者であることを見せたかった、という思いもあるんですけどね。『LEON』とは全く違う理由と、全く違ったアウトプットの仕方をしているので「へ~、同じヤツがこんなに違うものを作れるのね」という視点から見ていただいても面白いんじゃないかなと思います。

大和 う~ん、面白いですね。

前田 面白いですよ。とても勉強になります。ドイツと日本の『Audi magazine』では同じデザインフォーマットを使って、同じベースコンセプトに基づいて本国の企画をそのまま流用したページもあるんですが、大半のページは日本国内で作っています。日本のマーケットを見ながらインターナショナルブランドであるアウディのフィロソフィー、アイデンティティを如何にオーナーに伝えていくか。そういう役割を『Audi magazine』は持っているので、『LEON』のように自分たちでコンセプトを決めて戦略的にメディアをコントロールしながら読者との対話を図っていくというやり方とも全く違うので、面白いです。

大和 確かに、まるで逆のアプローチですよね。

前田 『LEON』はアナログ的な紙の温かさをいかに追求するかを重要視しているけれども、『Audi magazine』は同じ雑誌でありながら、写真の質感も全く変えています。アウディのもつ“非常に硬質”“先進技術の集合体”というブランドイメージを際立たせようとすると、温かみのある写真というよりは、より未来的でソリッドな写真のほうが合います。だから『LEON』では決してやらないようなデジタルライクな写真を使っています。

大和 アウディはここ数年で急激にカッコいいクルマとして認知されてきましたよね。

前田 非常にデザインが洗練されていて、出過ぎてもいないし、引っ込み過ぎてもいない。コンセプトカーの完成度が高いので、そのまま市販車として市場に出回ることもあります。R8なんかまさにそうですよね。『Audi magazine』はその骨格に「intelligence & sensitivity(知性と感性)」というキーワードを持っているのですが、つまりはそれがアウディのブランディングと直結していなきゃいけないんです。まさに知性と感性を刺激するクルマがアウディである、というふうな。

大和 かといって「私、金持ちですよ」と、悪目立ちすることないですよね。パッケージとしての安心感もありますし。僕自身もいま、いちばん乗りたいクルマです。
そして次回は「モテる男」第二弾を企画してますから、前田さん、よろしくお願いしますね!

前田 あ、やっぱりそう来るんだ(笑)。それ、怖いな~。お手柔らかにお願いします(笑)。


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年に数回、アウディオーナーにむけて発刊されている『Audi magazine』。

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前田氏の今日のコーディネートは、シャツはヴィンテージ、パンツはDESIGNWORKS、バッグはmaster-piece、スリッポンはアレキサンダーのもの。

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「写真にこだわる」Vol.2
Aug 25, 2010

大和 その頃から、今の編集者という仕事に携わることは決まっていたかのようですね。前田さんは『LEON』の表紙もご担当されていますよね。

前田 僕自身、“いかにもデジタル”という温かみのない写真は嫌いなんです。やっぱりアナログがもっている柔らかさって人の琴線に触れるものがあると僕は信じていますから。だから『LEON』の写真も常にアナログ感を意識しています。デジタルで撮っているんだけれども、いかにアナログの温かさをキープするか、という事を常に試行錯誤していますね。だからこそ自分で撮る写真でも、黒の部分やちょっとしたにじみ感を意識しちゃいます。一方、インターネットやオンラインといった媒体にはそこでしか表現できないことがあって、twitterなんてまさにその最たる例だと思います。B.R.SHOPというひとつのお店が何かの情報を発信する時も、紙に印刷することに比べたら圧倒的にコストは安いし、タイミングを図って誰もが発信することができますよね。これはデジタルの絶対的メリット。けれど何で僕らが紙をやっているかと言うと、手に持って見たいページを自在に開くことができ、重みを感じることができるから。そこが唯一、紙のメリットだと思っています。事実、紙という最もアナログなものをパソコンやデジカメで作っているわけですよ。原稿だってパソコンで描いていますよね。でも最終的にデジタルによって作られたものを、紙という最もアナログなものに落とし込んでいるわけだから、紙のいいところを最大限に生かさななければいけない、そんな気持ちで作っています。

大和 アナログなものへのこだわりが強いんですね。

前田 僕らや読者の方々は、アナログなものの温かさに触れて大人になったわけで、それを突然デジタルの硬質な感じを持ってこられても、ピンとこないんですよね。だとしたら『LEON』の写真は紙に落とした時にいちばんしっくり感じる写真であるべきだと思っています。今の『LEON』の写真には100%満足していないのが現状。もっと琴線に触れる写真の可能性は絶対あると思っていて。これから時間をかけて、より一層クオリティの高いものを求めたいと思っています。

大和 前田さんが「この写真いいな」と思われる雑誌はありますか?

前田 女性誌、なかでもアッパーミドルに向けた雑誌のもつ落ち着いた雰囲気はとてよくできているなぁ、と思います。

大和 『和楽』や、『婦人画報』とかですね。確かに、あの撮り方でこそ、紙である意味を感じます。

前田 とはいえ『LEON』の場合、写真のクオリティと同時にスピード感が求められているので、ああいった誌面づくりは難しいところでもあります。

大和 あまりに落ち着き過ぎると、引退したご隠居の趣味雑誌になっていく(笑)

前田 そうですね(笑)アクティブに生きている読者と常に対話をしようとすると、スピード感はとても大切です。じゃあ写真やデザインにおいてのスピード感って何かというと、背景ごと採用した「角版(かくはん)写真」ではなく、人物や物だけを切り抜いた表現がその類いかな。実際に『LEON』では角版写真の中に切り抜き写真をボンっと置く手法をよくとります。そのほうがデザインが整理されすぎなくて、動きが出る。バランスが難しいところではありますが。

大和 いままで表紙を担当されていて、「会心の出来栄え」と感じられたのは、どの表紙写真ですか?

前田 そうですね。表紙をディレクションすることになって2年半経ちますが、そのなかで自分が本当に納得できた表紙写真は3回に1回くらいしかないんです。でも、今度8月24日に発売になる号は今年一番の出来栄えになるのでは、と思っています。次に好きなのは2010年5月号ですね。

大和 あの写真は結構インパクトがありましたよね。

前田 何気なくみると「この写真、カッコいいい」で終わっちゃうのですが、実は雑誌業界でみるとかなり意図的な仕掛け満載だったんですよ。

大和 というのは?

前田 書店に並んでいる女性誌の表紙ほぼ9割は被写体が正体で目線があるものなんです。編集者になりたての頃、当時の編集長に「目線がすべてを訴えるんだ!」とさんざん言われてきました。モデルにピントが合っていなければならなくて、だから雑誌はある程度画一化された写真になっていく。でも、そんな画一されたものが本当に正しいのかな?という疑問から、それを完全に無視したのが5月号の表紙です。

大和 なるほど。たしかに春号にも関わらず、ダークトーンだったのを強烈に覚えています。

前田 そう。雑誌に必要なのは「目線」「ピント」「季節感」の3つの王道だと言われています。その全部を捨てて表紙として成立させたのが5月号でした。まず、あえてジローさんの顔からピントが外れるように撮っています。目線をハズして、下を見てうつむきながら考えているポーズ。春号なのにむしろ黒で全体を締めた深~いトーンで撮りました。みんなが同じノウハウで雑誌を作っているんだったら、全く違う角度から攻めた方がよっぽどエキサイティングでしょ。創刊時から表紙は恩田義則さんに撮っていただいているんですが、僕なんかのリクエストにも答えてくれて、むしろそれを楽しんでもくれている。だからこそ『LEON』の写真では色々なことが表現できるんですよ。あの表紙は僕にとって、とても印象深いんです。

大和 次号も楽しみですね。

前田 むしろ、その5月号を超えるかも、と思っているのが、つい先日撮影した表紙。みんなでワイワイ言いながら、なかなか良い表紙になったと思っています。それも前述の雑誌界のセオリーを完全に無視した撮り方で(笑)

先述で話題となった2010年5月号の表紙。

________大和氏が一体どんな絵になっているのか興味深々に聞くも、次号の表紙については一切堅く口を閉ざした前田氏。気になって仕方がない読者の皆さま、書店へGO!ですね☆(大谷)


「写真にこだわる」Vol.1
Aug 25, 2010

ヘルムート・ニュートンの写真が飾られた、なにやら妖しげな都内某会員制バーの個室。前回のテーマ「旅」に引き続き、海外の旅に必ず連れていくという前田氏のこだわりカメラ、そして約2年半に及びディレクションを行ってきた『LEON』表紙へのこだわりについて語っていただきました。

大和 イタリアに引き続き、上海、来週からはドイツ出張とお忙しそうですね。

前田 ずいぶんご無沙汰しちゃってます!

大和 そういえば、前田さんが必ず旅に持っていくものって、あるんですか?

前田 そうですね。いつも必ず持っていくのがこのキャノンのデジタルカメラかな。今回の対談をきっかけに整理してみたんですが、写真のほぼすべてが風景写真なんです。プライベートでも仕事でも、僕にとっての海外の旅は有名観光スポットに行くというよりも空気を嗅ぎに行くといった目的のほうが強いんですね。もしかしたらとっても勿体ない事なのかもしれませんが(笑)、現地の人と喋ることがその場所を知ることに繋がっていると思ってますから。結果、プラプラと歩いていて気になった場所を写真に収めることが多くて。

大和 あとで見かえしたりしますか?

前田 それは殆どないですけどね。作品を撮るのではなく、なんとなく風景を収めるのが好きなんです。でもたまに、思い出しながらフォルダを整理することはあります。特にこのキャノンG10を手に入れてから写真を撮るのがとっても面白くて。旅先ではこれだけを持ってあちこち撮影します。デルタルカメラなのに、すっごくアナログ的な使い方ができるんですよ。露出補正もダイヤルで簡単に調整できるし。なにより、ダイヤル部分のこの感じがたまらなく好き(笑)出来上がった写真も、黒の締め感と青の再現力が秀逸です。

大和 前田さんに送っていただいた写真は空の風景が多いですよね。

前田 確かに空抜けの写真は多いですね。このカメラは夜間撮影でも簡単に光を拾ってくれるし、薄簿の空も綺麗に再現してくれるんですね。自然、そういう写真が多くなっているのかも。

大和 なるほど。写真が好きになったきっかけはなんですか?

前田 父親が写真好きだったんです。今となっては懐かしい一眼レフの「ニコンF」を持っていて、僕の大学入学祝いに「ニコンF3」をくれたんです。それを持って夜の原宿の街を撮ってみたり、人を撮ったりしていた時期がありましたね。当時は渋谷区民会館の中に一般の人でも使える暗室があったんですよ。自分で写真の本を買ってきては現像の方法や、絞りとシャッタースピードの関係、被写界深度を研究していました。それが写真にハマったきっかけかなぁ。今も写真を撮るのはとにかく好きです。

旅には必ず持っていくという前田氏の愛機「Canon G10」。約2年前に購入したそう。「カメラとしてもなかなかクラシックで、絵になる。シャッタースピードもアナログライクでいい」と前田氏。

モテる男の旅スタイル Vol 2
Jul 13, 2010

大谷 前田さんが欠かさず持っていかれる旅グッズを教えてください。

前田 リモワのアルミ製スーツケースを愛用しています。数年前に発売されたユナイテッド・アローズの真っ黒のアルミのトロリーですね。洋服は夏ならドレスシューズ2足、スニーカー1足、街歩きにもジムにも行けるトランクスのようなボードショーツも必ず入れます。あとはi Podと携帯用スピーカーは持っていきますね。ロングトリップでは日本語が恋しくなるので、邦楽を部屋でガンガンかけます。

大谷 ビジネストリップだと、そのほとんどはスーツで通されますか?

前田 セパレートで着られるスーツを2~3着は持っていきます。今回はネイビー、グレンチェック、シアサッカー、モヘア混のライトグレースーツを持っていく予定。これだけ持っていけば、あとはポロシャツとシャツ、それからネイビーのジャケットに白いスラックスをプラスするだけで相当着回しが効くんですよね。

大谷 バカンスでもビジネストリップでも、スマートに過ごすための前田さん流のやり方ってあります?

前田 ハワイのようなリゾート地を除けば、基本的にTシャツは持っていきませんね。よくヨーロッパでもTシャツ姿のアジア人を見かけるのですが、あんまりオススメしません。どんなにデザインコンシャスなTシャツでも、たいていのヨーロッパ人は下着もしくは若い子が着るものと思ってますから。ヨーロッパの街中では多少「きちんとしすぎかな?」と感じる位が丁度いいと思います。変にこなれて見せようと崩すと、逆にしっくりいかない気がします。

大谷 なるほど。ファッション以外でのこだわりはありますか?

前田 ショートトリップの場合は、ガーメントケースとボストンバッグだけで行きます。クルマでの旅行や、一泊出張の時には絶対にボストンバッグですね。実用性ウンヌンではなくて、ボストンバッグが持っている、なんというか、旅のお供のような佇まいが好きなんです。ふだんから使えるものじゃないからこそ、実はいちばん好きなバッグです。よく使っているのは、トラモンターノのキャンバスのボストンバッグ。カラシ色のクラシックなもので。で、そんなボストンバッグへの思いなんてものも含めて、6月24日売りのLEON8月号のバッグ特集ではアニアリーさんとコラボレーションしたボストンバッグを紹介してます。鮮やかなオレンジ色のボストンですが、シンプルなのに、ポケットもたくさんあって、我ながらよく出来たなあ、と思っています。

大谷 なんだか女性でも使えそうですね。でも実は前田さん、出張ぎらいと耳にしたことがあるのですが。

前田 あ、はい(笑)。正直、面倒くさがりなので…。ま、あと好きなものがすぐ手の届くところにないっていうのがストレス(笑)。オートバイやらクルマやら、細かいものまで。なので、出張も旅行も実は割とどうでもよかったり(笑)。でも行くとなったら、せめて道ずれにするものはお気に入りに囲まれていたい。

大谷 だからこそ、徹底的にこだわるのですね。

前田 本当だったら、自転車くらいなら持っていきたいですもん。これでイタリアの街を走ったらどれだけ楽しいことか。機内持ち込みをしようか、いつも本気で考えます(笑)

モテる男の旅スタイル Vol 1
Jun 13, 2010

イタリアメンズファッション最大の展示会である「ピッティ・イマジーネ・ウォモ」、続けて開催されるミラノ・メンズコレクション、パリ・メンズコレクションに長期出張予定の前田氏。そんな多忙を極めるスケジュールの合間を縫って今月もインタビューに答えていただきました。今回のテーマは旅。前田氏の海外出張のスタイルや情報収集の仕方についてお伺いしました。


大谷 もうすぐピッティ(「ピッティ・イマジーネ・ウォモ」以下ピッティ)ですね。毎年、この時期には必ず行かれているそうですが、自由時間ってあるんですか?

前田 夜はたいてい、クライアントやバイヤーの方々とディナーですね。これからのLEONの戦略そのものや、ブランド、ショップ側の戦略、バイイングの状況などを意見交換する場となるので、僕にとっては一番大事なことだったりします。

大谷 じゃあバールでラテン美女の誘惑があったり(笑)なんてことは、ない?

前田 いや、マジでそんな暇、ないです!

大谷 とはいえ、海外での立ち居振る舞いで気をつけられていることはありますよね?

前田 常に堂々としていようとは心がけていますね。街を歩くときも猫背にならないように、堂々と胸を張って歩くことは意識しています。日本にいるとき以上に、海外では強く意識していますね。あとはレディーファースト。自分がどう見られているか以上に、不作法な民族とは思われたくないので、そこはきちんと守っています。それに現地の常識、非常識も頭に入れておきます。

大谷 仕事で行かれるときは、やはりあちらこちらに鋭く眼を光らせていらっしゃるんでしょうか?街のイタリア男のファッションをチェックをされたり。

前田 う~ん、どうだろう。漠然とはもちろん見てますけど…。コレクションでもランウェイのクリエイションひとつひとつを湛然に見るというよりも、もっと全体を見ているというか…。まあ、森を見に行く感じかな?。全体の流れがどこに向かおうとしているのかを掴みにいって、そこから木や枝を掘り出す感じ、ですかね。

大谷 要は現地の雰囲気を感じるために行く、という?。

前田 なんでしょうかね? さっきも言ったように、クライアントやバイヤーの人たちとのコミュニケーションが第一目的なんですが、空気というか、そんなものを感じるのも案外大事だと思ってます。コレクションの様子なんて今やインターネットで即日手に入りますからね。でもその情報はファッション通やジャーナリストの人たちが分析してくれればいいかな? 僕はその後ろに見え隠れする企業としてのブランドの戦略を感じ取りたいんです。って言うとカッコつけすぎかな? メモも取らないですからね。

大谷 それもまた意外ですね!

前田 もちろん以前は取ってましたよ。勉強だと思って。実際、大抵のジャーナリストの人たちはきちんとメモされています。でも、何回か行くうちに、記憶に残ったものが素直な印象だと思うようになって。

大谷 前回もおっしゃっていたように、そんな印象を日本の空の色や、季節、世間の動向に照らし合わせて、LEONのスタイルに置き換えていくわけですね。

前田 です(笑)!

大谷 ところで日本人女性がヨーロッパに行くと、目が肥えた現地の人に「それ、どこで買ったの?」と、聞かれることがあるみたいですが、それだけ日本人のファッションセンスも一目置かれるようになってきたのかな、と思うんですが、前田さんもやっぱり、「お洒落だね」なんてイタリア人に声をかけられるんですか?

前田 声を掛けられているのは、B.R.SHOPのホームページでもおなじみの干場くん(笑)。特に女性ジャーナリストから(笑)。まあ冗談はともかく「そのバッグどこの?」とか「スーツはオーダーか?」とかは聞かれますね。だからあえてドメスティックブランドで全身固めていくこともあります(笑)。「日本もなかなかやるだろ~」って感じで。

大谷 イタリア人から見る日本のファッションはどうなんですか?。

前田 彼らは日本のクリエイションをとても評価してくれていると思いますよ。色々学びたいとも思っているようだし。同時にアジアという巨大マーケットの入り口として、世界一うるさいと言われる日本人の目に敵うものを作るというのは彼らにとっても重要なようです。なかには「日本で売れるものは世界でも売れる」という人もいますから。というのも、イタリア人の根底に流れているのは実は、クラシックでコンサバティブな感覚だと思うんです。だからストリートとクラシックや、モードとストリートの融合を簡単にやってしまう日本のマーケットの柔軟性に興味があるようだし、事実日本人は柔軟だと思いますよ。

バーatticに登場した前田氏のスーツスタイル。
この日は渋谷の東急セルリアンタワーで行われたブルーベル主催による「シガーサービスコンクール」の審査員を務めたそう。
ダブルのスーツはシャリ感が気に入っているという“トニック2000”を使ったドーメルのオーダーのスーツ。バッグもオーダーで、ラファエロ・メニクッチのもの。

男の仕事とは?Vol2
Jun 09, 2010

今回の対談で松村氏が興味津津だったのが、前田氏の仕事道具。お願いして、その一部を見せていただきました。

年を経るごとにそぎ落としていっているという仕事道具。携帯、メモ、財布、手帳はいつも必ずバッグにしのばせているそう。「なんといってもこだわりは、お洒落じゃない能率手帳でしょうか(笑)」
使い込んで味のあるルイ・ヴィトンの手帳の中身は、使いやすさ重視のレフィルを。

手帳のメモ欄には、インタビューメモや誌面の絵コンテ、半年の企画ネタがびっしりと書き込まれている。

デザイナーから上がってきたばかりのレコメンドページの構成をi Phoneでチェック。
なかには鳥の鳴き声を集めた癒し系アプリを発見!


男の仕事とは?Vol1
May 23, 2010

今回のゲストはB.R.SHOP統括マネージャーの松村敬一氏。親身かつ的確なスタイリングアドバイスに顧客からの信頼も厚い松村氏が聞く、レオン前田氏が考える男の仕事スタイル、トレンドの仕掛けかたとは?


松村 日々接客をしていると、「雑誌の『LEON』で見たのですが・・・」というお客様からの問い合わせが非常に多いんです。前田さんが仕掛けたアイテムは必ずヒットする、という印象があるのですが、どうやって流行をつかみ、また、仕掛けていらっしゃるんですか?

前田 僕は自分自身をファッショニスタとも、トレンドリーダーとも、ましてや仕掛け屋なんていうふうにも思ったことはないです。しいて言えばマーケッターに近いとは思っているかもしれません。株価の動向、事件、政治、ともすると天気予報の長期予測なども参考にしながら、その年、その月に売れるものを予想しているにすぎないんですが。ただ一年を通じて時代や消費者の視点にたって、何が求められているのかを常にイメージするようにはしています。

松村 その辺りをもっと詳しく聞かせてください!

前田 “着る”とか“食べる”という、直接自分の体と接するものに関しては突発的流行は生まれにくい、というのが僕の印象です。人間は絶対に辛い方向や、自分の潜在的欲求にはないものを求めません。昨日までとても快適な生活をしていたのに、「これが最新トレンドだ」と言ったからって、辛い生活はしませんよね。ただその一方で新しい刺激には弱い、という側面も持っていることも確か。この“刺激”を予測するのはとても難しい。たとえば昔流行した“たまごっち”は突発的ブームでした。だからああいうものがそろそろブームになるから仕掛けてみよう、なんてこと、僕にはできません。娯楽のような普段の生活に必要がない新しい“刺激”を具体的に予測するのは不可能です。けれども今のファッションの動向を見たうえで、「次にこういうテイストのものが来るだろうな」ということは分かります。これだけファッションがカジュアル&コンフォートの方向に向いているなかで、突如、今秋ガチガチのクラシックスーツがくる、ということはまずあり得ませんからね。けれども、コンフォートのなかで、肩パッド入りジャケットが復活する可能性はあるんですよね。これはもしかすると仕掛けられるかもしれない、と。

松村 なるほど。突如、思いもよらない流行が起こる、なんてことはあり得ないんですね。

前田 そうですね。洋服に関して言うと、人の動きを制約してはいけない。窮屈な服が流行ったとしても、それは一時的なものです。2年ほど前に読者に好評だった企画があるんですが、それが“裾幅18センチのパンツ”です。今となっては定番化していますが、これはとても理にかなったものだったんです。だからヒットすると確信していたし、事実そういう流れを作ることができました。たとえば女性と太った男性でウエストを比べると3倍の差はありますが、足首回りはそれほど、差は出てこない。そこで、上で絞って膝位置を高く見せ、足首を隠すという旧来の美脚パンツの理論ではなく、細い部位(足首)に向かってテーパードさせることで足首が強調され、細く見えるパンツを打ち出したんです。ファッションは軽快かつコンフォートで、しかもお洒落にみえるもの、という時代の気分にもマッチしたんですね。

松村 今や、一般の方にも浸透していますよね。

前田 それを証明すべく、誌面でイタリアでのスナップを載せたり、編集部員全員で実際に履いてみたりもしました。

松村 正しい流行の見極め方、というのはあるのでしょうか?

前田 う〜ん、そもそも流行というのは誰かが流行らそうとして仕掛けられた見せかけのものか、時代の気分しかない、と僕は思ってます。

松村 ということはレオンは流行を掴んでいるわけではない?

前田 確かに流行のようなものは、取り入れてます。それが時代の気分になり得るから。で、僕らがやっていることはそのなかから何を選択するのが読者や僕たちにとって最良の選択か、という選別なんですね。たとえばランダムに10人の人を想定します。ただそれは自分たちがターゲット、つまり共感してくれる可能性があると考えている人たちです。そこには太った人もやせている人も、背の高い人も背の低い人もいるはずです。で、その人たちの半分以上に喜んでもらえるものを探し出します。さらにもう一方で、今度は同じ10人でも違う半数以上のグループが喜んでもらえるものを探し出す。そうすれば10人のうちの7、8割は僕らの提案に満足してくれたことになるじゃないですか。そしてそのふたつの提案を受け入れてくれた人がコアな読者になってくれて、そのどちらかに満足してくれた人は存在的にコアな読者になり得ます。一方、どちらの提案も受け入れられない人は勇気を持って、自分たちのターゲットではない、と判断する、そんなところです。

松村 流行りの要素を蓄積させて、満を持して、誌面で打ち出すのですね。

前田 それを拡大させていくといつのまにか、大きな流れ、つまり自分たちが仕掛けた流行になる、という感じでしょうか。

大和 お客さんが成熟してきたからこそ、セレクトする洋服にも時代性、マーケットはもちろん、日本特有の空の色までを考慮して、日常で本当に着られてしかも自然に「ああ、確かにこういうものが欲しかったんだ」と思っていただけるようなものを紹介していかないと、確かに通用しなくなってきましたね。

前田 特に僕の仕事は、読者とショップをつなぐ“接客係”だと思っています。自分が作るものに対しては、常に公平かつ誠実でありたい。

松村 僕自身もお客様の似合わないものは絶対におすすめしません。大和からも、どうしても欲しいものがあったとしたら、格好良く着るためのアイデアを提案しなさいと常々、言われています。前田さんのおっしゃることがとても共感できますね。

大和 販売という仕事はえてして、短期的な結果を追い求めすぎて、長期的な目標を見失ってしまいがちなんですよね。

前田 お客様、読者を大切にしつつ、数字も意識する。矛盾のなかをかいくぐりながら、如何にして目標に向かっていくかが、まさに、僕らの仕事の醍醐味。とはいえ勢いも大切なのが『LEON』の難しいところでもあります。ときにはいい意味で読者を裏切ることも大切なんです。一方で「自分たちを分かってくれているんだ」という同意も大切。モノを作っていく立場にとってはその両者がとても大きな葛藤としてありますね。

松村 興味があるのが、『LEON』の変遷だったりするんですが。

前田 僕が参加する直前の『LEON』は「ちょい不良」に続いて「ちょいロクデナシ」というキャッチコピーを出した頃でした。雑誌として非常にスピード感があった時期でしたね。僕が入ったのはそれから一年後、とにかくなにをやっても話題になるといわれた最後の頃(笑)でしたね。今からおよそ4年と少し前くらいです。

松村 今も『LEON』は「何を仕掛けても売れる」という印象が強いです(笑)。

前田 もちろんそうじゃなきゃいけないんですけど、急激な拡大、つまり急激なブームは急激な縮小を生みます。要するに『LEON』という存在がただの“刺激”ではまずいぞ、と。僕が一番心配したのはそこでした。だから2年前、編集長代理を任されるようになって最初にやったことは多少スピードが緩くなっても、確実に読者の信頼を得ていく、つまり生活の中のちょっとした変化のきっかけを提案してくれる雑誌への変革でした。なんとなく時代のスピード感も危うくなってきているように思えて、若干スピードを緩めた方がむしろ時代感に合っているんじゃないか、と思ったのも理由のひとつです。

松村 具体的に言うとどんなことなんですか?

前田 う〜ん、説明するのは難しいんですけど、それまでの『LEON』が黒シャツのイメージだったとすると、白シャツというか。ただ、皆が持っているだろう今までの白シャツじゃあモテませんよ、という(笑)。ほら、黒いシャツって、単純に考えても白いシャツを持っている人より絶対にニッチじゃないですか。だから黒が際立つわけですけど、白というベーシックなアイテムで、皆さんが持っているアイテムでも際立つ方法はありますよ、というやり方に変えたんです。「ちょい不良」はちょっと違うけど、だからといってただのコンサバもイヤ、という読者にも訴えられる雑誌にしよう、と。

松村 つまり先ほどもおっしゃっていた“時代を読む”ということですね。確かにB.R.SHOPもちょうど2階をオープンさせるか、しないかの頃だったでしょうか。スーツもガチガチのクラシックから、「もっと自由に」という着こなしの提案をしてから売り上げがグッと伸びた次期でした。

前田 さらに大きかったのはリーマンショックでしたね。これは世界経済が今だに尾を引いている問題ですが、今考えればやっぱりその予兆はあったんです。それがきっとあの頃の僕の肌感覚だったのかな。結果的にリーマンショックの半年前あたりからじょじょにスピードを落として、少し違うテイストに持っていったことが幸いして、僕らにとってはほぼ影響はありませんでしたね。というか、むしろ部数が伸びたくらいでした。その経験もあって、読者が自分たちに何を期待してくれているのか、そしてメッセージをどんな人に訴えかけたいのかが分かれば、大きく間違えることはないんじゃないかな、と確信するようになりました。で、改めて読者の信頼を得られればまた、新たな「ちょい不良」という刺激の提案もできるんじゃないか、と。

松村 それは販売の世界においても共通して言えることかもしれないですね。
勉強になります。実は、今回どうしても伺いたかったんですが、前田さんは仕事において大きな挫折感を味わったことはあるのでしょうか。

前田 そりゃありますよ(笑)。前の会社にいたころ、雑誌の爆発的ヒットに関わることができました。60万人を相手にする雑誌の仕掛け方と拡大のさせ方を見た一方で、その60万人がざ~っと引いていくのも同時に見てきたんです。これは本当に、怖かった。「ああ、こんなことをしていたら読者が引いちゃう」なんて思っていてもまだ若くて、立場も中堅クラスの僕にはなす術がなかった。挫折、というより恐怖体験ですね。その辺りから当時の諸先輩に生意気言うようになったりして、ついには会社のやり方にまで文句を言っちゃったりして(笑)。30歳で編集部署から外されたときには、居場所もなくなってしまった気がして、もう出版界を辞めようと思いましたね。実は『LEON』に来てすぐの頃にも、求められる情報の量の多さと、それの半分も理解できない未熟な自分と、そして自分のスキルの稚拙さに絶望して「僕がやっていける世界ではない」と、2度目の挫折を感じました。もう、今度こそこの世界から逃げ出そうって。挫折が人を育てるというけれども、本当の限界を味わったときは、とにかくここから逃げたいという気持ちしか持てないんだってことを知りました(笑)。結果こうしていられるのはむしろ運かな(笑)。ようやくその緊張感を楽しめるようになってきましたけど、もうあんな思いはしたくないなあ(笑)。

松村 いや〜意外です。読者に大きな影響を及ぼしている前田さんでもそんな葛藤をされていた時期があったとは。それもきっと経験値なんでしょうね。僕も仕事のしかたで日々、悩むことがあるのですが、今日のお話をいただいて、少し勇気をもらった気がします。今日はありがとうございました。

フィナモレのシャツはB.R.SHOPの別注アイテム。ブーツはトッズのウィンターゴンミーニ、パンツはボッテガ・ヴェネタ。

長年愛用しているというベルトは、アンドレア ダミーコ。遊び心のあるポップなレタリングが気に入っているそう。

くたっとした風合いのバッグはコーチ。

モテる男とは?Vo2
May 20, 2010

南條 今までモテていなかった人が、ファッションを変えたことでがらりとモテるようになることもあるんですか? それも積み重ねの部分が大きいんでしょうか。

前田 そうですね〜『LEON』を指揮する僕の立場としては、ファッションが変わったからいきなりモテるというのが最高なんでしょうけれども、実際女性は馬鹿じゃないですからね、見た目だけどうにかして、ホイホイ女性が寄ってくるわけないでしょう(笑)。ただね、だからこそ、まずは服装から変えてみようって言うポジティブな姿勢が結果、人を作っていくんじゃないかなとは思ってます。あるパーティで知り合った会員制スポーツジムの経営者の方が教えてくださったんですが、そのジムに通われているお客様で最近ボディシェイプに成功された方がいらっしゃるんですって。で、その方曰く「今まではファッション誌なんて自分には関係ないと思ってきたけど、そろそろ『LEON』でも買ってみようかな」と喜ばれていたそうで。もちろん僕にとっては本当に嬉しい話だったんですが、それってすごくポジティブな姿勢じゃないですか? そんなポジティブで素敵な男を見抜けなかったら、それは女性の目が節穴でしょ!(笑)


大谷 確かに歳を重ねても素直な方は魅力的ですよね。ある男性経営者の方が「男でお洒落好きって言うのってなんか馬鹿っぽくて…」って言っていたんですが、それは女性目線から見て「違う!」って思いました。真面目な顔してワインのウンチクを語られるより「安いワインだって美味しければいいじゃない!」「人生一度しかないからファッションも、趣味も楽しみたいよね」なんて素直に言える男性の方がずっと格好いい! それこそ力が抜けた大人なんじゃないかしら。初対面でかわいいカフリンクスやブレスレットなんかしていたら女性が纏うジュエリーの話をしている感覚で、話のきっかけにもなりますしね。

南條 初対面で40代の方とお目にかかった時は緊張するので、会話のきっかけも欲しいですね。どこかにひとつ、可愛いものを身につけたりというお洒落のハズしは、私たちにとって魅力的なスキですね。

大谷 私もさりげない“隙”は印象に残っています。クルマという狭い空間で会話もぎこちない。とある経営者の方ですが、綺麗な色落ちのインポートデニムにさらりと纏った仕立てのいいシャツ。しかも乗っている車はヴィンテージカーとくれば隙なんかないじゃないですか。緊張でがちがちでした(笑)そんなシチュエーションで彼が履き換えたのはなんとビーチサンダル!「こっちのほうが運転しやすいから」って。「なんですか、それ~(笑)」なんて言いながら、一気に場の空気が和んだのを覚えています。

前田 つまりお洒落はマイナスではないんですよね。昔から海外の要人は必ず専任のスタイリストがいて、もしくは行きつけのテーラーがいて、自分の外見からのイメージを作り上げてるんですよね。一方、日本は高度成長期に「ドブネズミ色のスーツを着てやってくる民族」と揶揄されてきた。つまり仕事ができる人ほど外見には気をつけるべきだと僕は思うんですけどね。B.R.SHOPの顧客の方々や『LEON』読者の皆さんにも経営者や社会的地位の高い方がたくさんいらっしゃいますけど、皆さんその優位性に重きを置いている人たちだと思います。

大谷 ズバリ、南条さんの好きな年上男性とはどういう方ですか?
南條 軸がある人は好きですね~。仕事と土日、家で寝ているだけの生活ではなく、ゴルフでも、バンドでも、釣りでも…頑張ることがある方は格好いいなあ、って。

前田 結局は人間の幅なのかも。

南條 そうですね。いろいろ見てきた方、遊びも満喫している方は引きだしが多いですからね。

大和 話をまた変えちゃうけど、やっぱりいきなり好きになるよりも、話をしたフィーリングで好きになることが多い?

南條 見るからにモテそうな方、ギラついた方はちょと怖いかも。結局はお父さんぽいところも求めているのかもしれないですね、私は。頼りたい、というか(笑)。そこにデーンと余裕をもって構えていてくれたら嬉しいですね。

前田 子供の頃ってスポーツができて、格好いい男子がやっぱりモテるでしょ? だけど女性はずっと利口で、いつまでも外見だけにとらわれていないですよね。男性を見る目が、より一層その男性の能力に向いてくる。顔がよくてスポーツができたって、仕事ができなきゃ生きていけませんから。だから勘違いして「外見はどうでもいいんだよ」という男性が出てくる。で、ここが重要なんですけど、じゃあダサイ服を着てメタボなボディでふんぞり返っていていいか、というとそうじゃない。やっぱりそこも女性の方が利口で、そんな男性には今度は可能性を感じられなくなってきちゃうんだと思うんです。もちろん時代性もありますが、少なくとも現代は外面的バランスが内面的バランスを測るバロメーターになっていることは間違いないかな、と。

南條 なるほど、深いですね〜。確かに外見を気にするのも中身のひとつだと私も思います!

前田 “モテる”には二種類あって、セックスという即物的な意味での“モテる”。まあ、正直それも大事というか、いいんですけど(笑)、もう一方の“モテる”は女性にとって “記憶に残る人”もひとつの“モテる”なんじゃないかな、と考えてます。即物的ではないために、すごくわかりづらくて、自覚しづらいんですけど、『LEON』で言う“モテる”っていうのは後者の意味合いもとても重要視してるんです。記憶に残る=好きになる可能性がある男性、という気がするんですが、そのあたりはどうなんでしょうか?

南條 私にとって、「記憶に残るイコール「もう一回会いたいと思う男性」ですね。地位のある偉い人に会いたいと思う場合、ともすると下心もあるかもしれない。でもそんな肩書きをとっぱらって人間として惹かれる…それが記憶に残る男性なんじゃないかなって思います。

前田 それはいい言葉ですよね。いただきました(笑)。って結論になっているのかな? 僕はどうなんですか?

南條 え? お時間空く日、ありますか? ぜひゆっくりお話ししたいです!

モテる男とは?Vo1
Apr 25, 2010

「いま20代女性はなぜ40代男性に惹かれるのか」というタイトルの本が話題となり、今や空前のモテる“オヤジ”ブームが到来。そこで一体、モテる男ってどういう人なのか、本当に40代は魅力的なのか、そして前田さん本人は? 20代女性をゲストに呼んでズバリ!聞いてみました。

ゲスト
南條千尋(25)
雑誌でのモデル経験を経て、昨年ランジェリーの会社「Honey Hearts」を設立。デザイナーを務める。趣味は華道・乗馬・書道・海釣りと多彩。

<Vol1>
南條 ブログで拝見しました。「あっ、この人モテそう、遊んでそう」という印象だったのですが、「モテる」をテーマに雑誌を作られている編集の方はそれを日ごろから実践されているのでしょうか。

前田 20代よりも30代、30代よりも今、というふうにどんどん忙しくなってますからね。正直、モテるもモテないも、それを確認してる暇がないんですよ(笑)。ただまあ、一般的にモテる人は時間の使い方が上手で、マメで、ルックスがよくて、トークの上手な人、とか言われるけれど、おそらく自分はそのどれでもない気がします。自分にとっての武器ってなに?って聞かれてもあまり思い浮かばなかったりして。だから、モテる男ってどういうことなのか逆に女性に聞きたいですね。

大谷 いま空前の大人モテブームですよね。ラジオやテレビで「いま20代女性はなぜ40代男性に惹かれるのか」という本も話題になりましたし。

南條 それはわかる気がします。私も40代の魅力的な方と接する機会が多いいですから。

前田 男性がいつまでも若々しく、歳をとらなくなっていくのと同時に、女性もスマートになってますよね。20代の女性が40代の男性を好きになれる精神性があるからだと僕は解釈してます。

南條 私の周りの40代の方は諦めていない方が多いですね。だからこそ色気を感じるし、自分がその人に背伸びして合わせているわけでもなく、無理やり合わせてくれているのでもなくて、普通に恋する相手として見ることが出来ます。同年代がダメとかではなくって、あえて上を探しているわけでもないんですけど、パッと出会った時に感じる色気を40代の方々は持っているように思いますね。若い人よりも惹かれる部分が多いというか。

前田 色気があるかどうかは、自分じゃ自覚できないものだからともかくとして、経験則に関しては圧倒的に若い男性よりありますからね、オトナは。しかもそれなりに頑張ってきていれば社会的地位や自分の生き方みたいなものにも自信が出てくるのが30代後半から40代前半ですからね。ただ自分の限界もいい意味でわかってくるから、無理して自分を大きく見せたり、背伸びをしなくなるのも僕たちの年齢くらいからなんじゃないかなあ、と最近は思ってます。

南條 まさにその通りで、肩肘張っている、無理して自分を大きく見せている若い人よりも「僕はこれだけだけれど、これでもいいなら」っていうスタンスの男性は素敵ですね。

前田 ただ女性に与えてあげられるものは少なからずある。お金とかじゃなく、精神的なアドバイスや、愛情も含めてってことですよね。

南條 だから女性にとって、あまり年齢は関係ないような気もします。少なくとも私や私の周りでは「この年齢だから、こう」みたいな線引きはなくなってきいるように思えますね。どちらにせよ、私の周りの40代を見ていても自分が10代の頃に40代男性に感じていた所謂“オジサン”では決してないですね。それは私が成長したからではなく、ひと昔前と比べて40代、50代の方が変わってきているんじゃないかなって思います。

前田 それは世の40代、50代にとって救いになります。

南條 中身プラス、外見のお洒落も伴っていたら無敵ですよね。


大和 じゃあ、女性から見たモテるお洒落ってなんでしょうね?

南條 私の私見ですけど、自分の好きなテイストのものはきちんと確立していて、プラス流行のワンアイテムを取り入れたり、シンプルでもバランスのとり方が上手だったり、そういうファッションには好感が持てます。なかにはギラついた人もいますけど、やっぱり自分なりに消化してナチュラルに着こなしている方は素敵だなって思います。

前田 どちらにしても頑張りすぎはよくないですよね。それは「LEON」の誌面でも謳っています。むしろハズしとか、ヌキとかがないと。僕なんかは歳ををとるごとにどんどんシンプルになってますから。

大和 実は過剰にお洒落な人はモテない気がするんですけど、どうなんでしょう。

大谷 女性でもそうですよね。私の友人でものすごいお洒落さんがいるんですが、モテないのが悩み。過剰にモード過ぎて異性は近寄りがたいのかなって。飲むといつもそんな話になります(笑)

前田 じゃあ「清潔感だけあればいい」というと、そうでもないんですよね。そう言いながら大抵の場合は結局、何もしない、諦めと同じことになる。だからこそ着こなしも常にアップデートしていかなきゃいけないんだと僕は思いますね。

次回、Vol2では前田氏が考える『LEON』的モテるファッション論とともに、20代女性が思わず惹かれる40代の魅力についてさらに深く、具体的に掘り下げてお届けします。

インタビュー!Vol.02「アップデイト」
Apr 01, 2010

大谷/ 前回、読者の方々とともに前田さんご自身もレオンを手掛けるようになってから、日々アップデイトされているとおっしゃっていましたが、実際どんな風に変わられていったんでしょうか?

前田/ まず精神的な部分で言うと、以前より年齢を重ねることについての恐怖感というか、焦りみたいなものは本当になくなりましたね。やっぱり身近にいつも見ているジローラモさんやビジネスで接するイタリアのオトコたちって、年齢に関係なく格好いいんです。自分が彼らの年齢になったときにはああいうふうになっていたいな、という目標ができましたから。

大谷/ ファッションではなにかありますか?

前田/ 20代の頃はストリート誌をやっていましたから今の自分のファッション自体、当時に比べたらちゃんと大人になってます(笑)。去年と比べたら、そうだなあ、こうして腕にいろんなものは巻いてなかったですねえ。もう少し今より正当な感じだったかも。それがPT01インコテックスレッドが出てきて、昨春にはボリオリマージャーズのような“楽ジャケ”が出てきて、さらに去年の秋あたりからは細身の軍パンやカゴスラ(カーゴタイプのスラックス)が出てきた。どんどん気分がラフでタフで、かつエレガントな方向にシフトしてきてるでしょ。それらの延長線上というか、それらとのバランスを考えると、腕周りにもラフさやタフさがほしくなって。結果、なんだかいろんなものをグチャグチャに巻きたくなってきた、と、そんな感じです。

大谷/ スーツについてもレオンの最新号(3月24日発売5月号)では相当ラフなスタイルを提案されてますよね。それもやっぱりそれらの流れから発想されたものですか?

前田/ 僕は男性、特に大人の男性のファッションには突発的な流行はないと思ってます。必ず必然や予兆がある。そもそも大人は子供と違って、イチイチ流行を追いかけるのに一生懸命になっているような時間なんてないですから。パンツとジャケットがカジュアルになってくるとその楽チンさにみんな気づいちゃう。と、必然的に今度はスーツももっと楽したくなるはずだし、楽しんでみたくなるのが人の常かな、と考えるのが自然でしょ?

大谷/ 少し話しはそれますが、女性の立場からすると男性へのプレゼントって結構迷うんですね。いつも身につけるものをプレゼントしたいけど、スーツではなかなか遊べる隙がないような気がして。結局はネクタイやチーフと、無難なところを考えてしまいます。

前田/ そうなんですよね。スーツを着ていても結局、Vゾーンでしか遊べない、靴でしか遊べないなんてすごくつまらないじゃないですか。僕自身、クラシックなスーツであればあるほど、周りで何とか遊びたいなって思いますし。まあ、究極をいえばスーツ自体が遊べていればなお、いいんですけどね。これは会社やその人が所属している社会によってもできるできないがありますけど。ちなみに今日着ているジャケットは大和くんのところでオーダーしたんですけど、実はこれスーツなんですよ。

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大谷/ え、そうだったんですか?

前田/ ジャケットとパンツでセパレートしたとき、如何に格好よく着られるか考えた結論がこのメタルボタンであり、パッチポケットだったんです。シルエットも相当考えましたね。

大谷/ 時計もかなりインパクト、ありますよね。

前田/ これはイタリアの「GaGa」というブランドのものです。こんなオバカさんな時計に、ぐるぐる紐を巻いてしまう。例えばこれは僕らの職業だからできる部分はあると思うんですが、せめて一箇所、自分の腕に巻いてみる、二針のカッチリした時計ではないお遊び時計を入れてもスーツ&パンツがきちんとしていれば、周りの小物でこんなにも遊ぶこともできるんじゃないかなあ、と。

大谷/ そうなんですね!「GaGa」は聞いたことがあります。ミラノのドゥオモの近くにオンリーショップまであるそうですよね。時計もアクセサリーも、いかにもラグジュアリーブランドではないところが余計に目を引きます。

前田/ 腕元にポイントが入るだけで、ぐっと着こなしって変わるはずです。思い入れがある物はずっとつけていられますし、その方が格好よかったりもしますし。

大谷/ 私の知り合いのかたでもお守りのように、スーツの下にそっとネックレスをつけている方がいます。たしかに、アクセサリーなら増やしていくこともできますし。スーツに合うようなアクセサリーを男性にプレゼントするのもいいですね!

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▲前田氏の手元にぐるぐると無造作にまかれたブレスレットの数々。いちばん左はB.R.SHOPで購入できる「Oviri」(オヴィリ)。中央のネイビーのものは、ヘアゴムにエルメスの馬蹄型チャームをつけた前田氏のオリジナル。「僕が『LEON』に入ったばかりのころに当時、編集長だった岸田さんに『面白いね、それ』と、褒めてほめてもらったものの一つなんです。それ以来ずっと付けてますね。なくさない限り一生付けてるんじゃないかなあ」(前田氏)


インタビュー!Vol.01「前田氏の考えるLEON」
Mar 08, 2010


必要なのは、お金じゃなくてセンスです。


このあまりにも有名となったキャッチコピーとともに“大人のクオリティライフ実用誌”を掲げるのが皆さんご存知の『LEON』です。前田陽一郎氏はそんな『LEON』の編集長代理。こちらのWEBでも幾度かご登場されていますが、なによりお忙しいようで…。とはいえ当の大和を含め、B.R.SHOPの顧客の方からも「前田さんの声が聞きたい」という要望が続々。ならば、というわけで今回から前田氏との雑談(?)やインタビューを通して、ご本人自身のことについてはもちろん、仕事のこと、ファッションのことなどなど、探らせていただこうとなりました。

ブログリニューアル第一回目のテーマは「前田氏の考えるLEON」とは。夜な夜な洒落者たちが集まるという都内某所にある隠れ家バーで一体どんなウラ話が聞けるのか・・・。男性誌で執筆活動を行っているフリーライター・大谷繭子がお送りします。



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大谷/ 今日はよろしくお願いします。今回はリニューアル第一回目、これから前田さんの仕事に対するポリシーやファッション、ライフスタイルについて色々と伺っていきたいと思います。

前田/ いやあ、そんな大げさな(笑)。僕はあくまでも裏方なんで、面白がってもらえるかどうか、不安だけど…。そういえば大谷さんともちゃんとお話をするのははじめてだもんね。しかも4年ぶり(笑)。

大谷/ 前田さんとお会いするの、そんなに久しぶりでしたっけ? 前田さんがちょうどレオン編集部に移られる頃だったような…。その頃はレザージャケットにデニムで、バイクに乗ってるって印象でした。

前田/ 今も根っこの部分は変わんないですよ。相変わらずバイクもクルマも大好きだし。ただ自分の立場や提案しているスタイル、それから、う~ん読者の皆さんが『LEON』に抱かれるイメージを含めて、僕もいろいろとオトナになろう、と。ま、要はいつまでも自分や周囲が勝手に作り上げた自分の殻みたいなものに留まっているんじゃなくて、もっとアップデイトしていかないとダメだな、と思うようになってきてます。

大谷/ やはり読者の方々もそういう気持ちの方が多いんでしょうね。

前田/ そういう自分に対してポジティブなマインドを持っている読者の方々に『LEON』は支えられているって思ってます。事実、なんていうのかな、自分を変えようとか、まだまだ自分は行ける、とか前向きに考えている人って歳をとらないし格好いいんですよ、実際。それが『LEON』が言うところの“オヤジ”なんですね。間違っても“オッサン”ではない(笑)。読者の皆さんには僕よりずっと年齢的に先輩の方もいらっしゃるからなんだけど、今年自分が41歳を迎えるにあたって“兄貴”くらいの意識はあるけども“オッサン”だとは思ったことがないんですよ。思いたくもないんだけど(笑)。だからきっと『LEON』を読んでくれている読者は自分たちを“オッサン”だなんて思っていないし、実は“オヤジ”とも思っていなくて、どこかでいつも“いい兄貴”でいたい、っていうくらいの気持ちなんじゃないですかね。キャッチーでお茶目なニュアンスを持たせたくて“オヤジ”という表現を使い続けているけど、どちらにせよ、そんな人が格好悪かったらやっぱりまずいでしょ。格好よくいるというのは中身、つまり仕事ができて人間性にも魅力がある、ということは前提であって、以前にも大和くんと対談させてもらった時に言ったように、ファッションは一番簡単な自己プレゼンテーションツールだから、これに気を使っていくことが実はとっても大事なんですよね。ファッションに気を使うってことは日々アップデイトできるということだし、それはさっきも言ったけどポジティブなマインドを持っているということと同じ意味だと思うから。だから「モテるオヤジはオタクじゃなくてオシャレ」じゃなきゃいかん、と。

大谷/ なるほど。「格好いい兄貴でありたいですよね」という読者への同意を促しながら、同時に巻きこんでいくわけですね。前田さんは様々な男性誌に関わってきたわけですが、客観的に『LEON』を見て、その印象ってどうだったんですか。

前田/ 創刊当初はあの「ちょい不良」というキャッチコピーはまだなかったんですよ。でも創刊準備号から「なにもなくても生きていける。あったらもっと楽しく生きていける」というコピーが使われていて。その頃から目指している男性像がすごくクリアだったんだと思う。僕が当時印象深かったのは『モテるオヤジの作り方』という号で、いちエディターとして「この雑誌はすごい」って思ったのを覚えています。なぜ凄いと思ったかというと、当時は女子高生、男子高生ブームで、「オヤジ狩り」という言葉が新聞の見出しに載るような時代だったんです。オヤジという言葉は、社会に飼いならされて、牙をもがれた弱者のようなイメージで、とにかくダメな男性の象徴的言葉だったわけですよ。もちろんマイナスのイメージでしかなかったわけで、そんな「オヤジ」を「モテる」なんて言葉とくっつけて打ち出したというところがとにかくもう、ぶっ飛んじゃってた(笑)。

大谷/ オヤジ狩り、久々に聞きました! いまも私の周りの40代半ばの男性たちは渋谷に行くのに抵抗があるといいます。いまでもオヤジ狩りにあいそうだからって(笑)。『LEON』が世のオジサマたちの希望となったわけですね。ところで前田さんにとって年齢を重ねることに対しての思いって何かありますか?

前田/ 男は歳をとったら紳士にならなきゃいけなくて、可愛い女性がいても、そんなものに振り向いちゃいけなくて(笑)。それがなんとなく日本の旧来の“正しいオトナ像”だったんじゃないかなあ。もちろん紳士であることは理想だし、それ自体は絶対に間違ってはいないんだけど、日本人の言う紳士って、どこかで儒教の精神論かなにかとごちゃまぜになって精錬君子じゃなきゃならん、と勘違いされてきたんじゃないかな。そんなの無理だって(笑)。むしろ紳士って、本来は経験に裏打ちされたきちんとした佇まいができて、自分の規律とかあり方みたいなものがちゃんとあって、そういう人を指す言葉だと僕は思ってます。もちろん女性を尊敬していること!もね(笑)。若い男子でいるじゃない?なんか彼女の前でふんぞり返っているヤツ。あれはオトナがやっちゃいけない。そんなのが通じるのは女性がやさしい日本だけだもの。

大谷/ 女性としては本当に共感できます。あれ? なんだか前田さんの言う『LEON』像にもう感化されちゃってるような気が…。

前田/ ま、とにかく年齢を重ねた先にある男性のあり方への固定概念を完璧に打ち砕いてくれたことは『LEON』の功績だと今も思ってます。少なくとも男性が歳をとることに対して、ものすごく肯定的な何かをもたらしたな、そういう風に思ってましたね。そしてひょんなことからこの雑誌に参加することになって、今に至るわけですが、結果自分自身も歳をとることへの恐怖感から完全に解放されましたね。むしろどこまで自分が男でいられるか、という事のほうへ興味が向いてきてます。

大谷/ 私から見た以前の前田さんは、どこか少年っぽかったり、ちょっとやんちゃだったり。そんなイメージでしたが、今はそこにどこが陰が加わったような…久しぶりに再会したのに、すみません(笑)

前田/ いや、それ、マジで褒め過ぎです。相当、照れます(笑)

大谷/ 最近、お洒落な男性が増えていることは確かですよね。でもなかには雑誌から飛び出てきたトレンドを丸ごと取り入れているような方もいて。それは女目線からみて、残念ながらイタいです(笑)

前田/ それは手厳しい(笑)。でも、それも経験じゃないですかね。いいんですよ、最初はがむしゃらで。だってある程度社会での自分の立ち位置ができあがっている男性が、自分を変えようとすることって、とってもパワーが必要なんですよ、女性が思っている以上に!僕はそんな男性を全肯定しますね。で、いい歳して洋服を一生懸命買って、何度か失敗して、その先に「○○さん、素敵ですね」とか「なんだか最近、お若いですね」とか言われれば最高じゃないですか。

大谷/ あ、もちろん、そういう意味ですよ! ただ若い子みたいにトレンドに振り回されるのってどうなんだろう、という意味です。

前田/ 確かにね(笑)。だから『LEON』では「今年のトレンドはこうです、ああです」なんていう、いわゆるファッション誌然としたキャッチコピーは使っていません。そもそもトレンドなんて所詮誰かがビジネスのために作っているものでしょ。そんなの、大人の男ならわかりますよ、絶対。だから僕らは「どうやらトレンドはこうなのですが、我々オヤジとしてはココをいただきましょう」という書き方をしているつもりです。素直に言えばトレンドはわかっているに超したことはないけど、その中で自分がいいなと思うものを抽出していけばいいんじゃないですか、というのが『LEON』のスタンスです。

大谷/ ここでもまた、読者に対して同意を求めながら前に進めるということですね。

前田/ だって僕たちがコミュニケートしたいのは大人の男性ですからね。もちろん読者に対して人生訓を述べるつもりも当然なくて。よくあるじゃないですか、生き方を押しつけがましく読者に教えてやろうなんていう雑誌(笑)。そんなスタンスは絶対間違っていると思ってます。30歳を超えた男って馬鹿じゃないし、簡単に自分の人生は変えられないものですよ。けれどそこで留まってしまったら、それはやっぱりオッサンへの第一歩なんですね。日々、自分をアップデイトさせていきながら、自分の芯の部分や社会と折り合いをつけながら成長していくのが格好いいと思うし、それこそが『LEON』で言うところの「モテるオヤジ」なんじゃないかな。そういう風なことを考えながら『LEON』を作っていると、案外に深いというか…(笑)

大谷/ 女性のファッションだと、今季のトレンドを丸ごと取り入れるほうがお洒落、なんてことになりますが、その点男性の場合はアプローチがまったく違うんですね。女性にはあまりない考えで新鮮です!

前田/ 自分に立ちかえってみるとわかりやすいんだけど、大人の男性っていうのは制約が沢山ある。目の前の仕事、家庭、立場、いろんな制約の中で生きているから、そう簡単に自分を変えることができないんですよ。そのなかで何か変えていきたいという人たちを読者に持っているとすれば、僕たちはそういう読者にきちんと責任を持たなきゃいけないと思うんです。例えば『LEON』を見て白いスラックスを買ってくれた人たちに、今年はもうダサイから履かない方がいいですよ、なんて言えないですよ。ただ、さっきも言ったようにトレンドというものがあるから、それはうまく取り入れていきたい。そうすると、僕らの言い方としては「去年の白スラはこうでしたが、今年格好よく白スラを着こなすなら、こんなアイテムを買い足すといいんじゃないでしょうか」となるわけです。だって自分だってそうですからね。クローゼットの中を全部トレンドに合わせて買い替えるなんてできるわけないでしょ。

大谷/ 確かに本当の意味でのリアリティってそういうところにありますよね。

前田/ 常に自分の等身大の目線で読者の皆さんと対話していたいですね。自分も読者も徐々に変化していくなかで、毎年違うトレンドのなかに身を置いて、10年後には「いやあ、おかげでオッサンにならずに済んでますね」なんて、そういう雑誌になっていけたらいいなと思ってます。

大谷/ 編集者と読者が一緒にアップデイトして、一緒に誌面を作っていく。だからこそ親近感が沸くし、面白いんですね。今日は勉強になりました!ありがとうございました。




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大谷プロフィール
フリーライター。大学卒業後、大手百貨店勤務を経てライターに。男性誌『BRIO』での記者経験を経て、現在では女性誌『HERS』で主にファッション、旅、グルメを担当。週4日は夜の街へ繰り出し、食べ歩きリスト更新に励む。趣味はゴルフとテニス。


パンツが変わればお洒落が変わる〜1
Jan 20, 2009

突然ですが、みなさんは今日一日のコーディネートを考えるに、何から考えますか?
ボクはここ3年ほど、ず~っとパンツからです。
あ、パンツって、下着じゃないです、はい。
パンタローニから、なんですね。
以前は、う~ん、シャツをはじめとしたミドルインナーからだったかな?
とにかくここんところはパンツです、パンツ。

手前味噌ながら、レオン本誌でも半年ほど前から「パンツが変わればお洒落が変わる」をキャッチコピーに、特集とまではいきませんが、ことあるごとにパンツの重要性を誌面でご紹介しております。

で、レオン誌面では言い切れていない、そのキモについて少々。

そもそも、我々男性はスカートがはけない以上、女性に比べて圧倒的にボトムスの選択肢が少ない。というか、ほぼ長ズボンという名のパンツしか、ない。
ハーフショーツを含めるとちょっとは選択肢が広がるようにも思えますが、トップスとの組み合わせやT.P.O.まで視野に入れると、まずパンツだけと言ってもいいでしょう。
にもかかわらず、我々はあまりにパンツに対して無頓着じゃないだろうか、というのがボクの持論。

でも…というご反論の前にもう少々。

だから男性ファッションの流行というものは主にトップスのアイテム変更によって印象を変えてきた、というのは大きく間違いじゃないと思う。
でも、これだけファッション情報が氾濫し、あらゆるテイストが街にあふれる今、よほど変チクリンなものか、逆に相当ダサイものでも着てない限り、差別化はできませんし、ましてや圧倒的にお洒落だなと見せるのはなかなかにして容易じゃないはずです、実際。

でも…というご反論の前にさらに。

まずご自身のパンツの長さを振り返ってください。
スラックスはきっとワンクッションからハーフクッションじゃないですか?
多少お洒落に気を遣われている方で、裾幅に応じてシングル上げか、ダブルで上げているか…。デニムに関しても同様でしょうか? アメリカンスタイルだとあえてズルズルだったりもしますよね…。

だからみんな同じに見えちゃうんじゃないでしょうか?

またまた手前味噌ながら、ボクはどのシーズンも30本近いパンツを穿き回しますが、どれも長さ、裾上げの方法、裾幅に至るまですべて素材や柄に応じて変える(=お直しも含めて)ようにしています。もっといえば、その年のトレンドや気分に応じて直せるものは直して、パンツのアップデイトを図ってます。

で、一番足が長くきれいに見えるシルエットや、ボクなりのお直しの基準、パンツと靴との関係性、パンツで印象はどれほど変わるか、などに関しては次回。

ちなみに去年夏あたりから今のマイブームは裾幅18cmでノークッション、が基本。
あ、これはレオンでもご紹介しているサイジングです。
ちなみに写真のパンツはG.T.Aのもので一番最近買ったパンツです。
でも、購入したその場で全部割いて、ほぼ作り直してます(笑)。


例えば黒のタートルというなんの変化もないアイテムに合わせても、ブラックウォッチがポイントになって、平坦な着こなしには見えないと思います。ちなみに、ドレスシューズを履くとノークッションの丈なんですが、このようにトレッキングスタイルのシューズだとジャストな長さだと思います。▼

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こちらはジャケットを着用してドレッシーなブーツの着こなしの場合。会社によっては仕事も可能なスタイルだと思いますが、全体にシャープな印象だと思いません? 本来ブラックウォッチはどちらかというとトラッドな柄だと思うんですが、裾幅が細く、丈が短いことで、シャープに見えると思うのですが、いかがですか?▼
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どうも、はじめまして
Jul 23, 2008

どうも、はじめまして(っていっても、インタビューされちゃってましたね)レオンの前田です。
そうそう、つい先日、編集長代理に昇格(?)しました。

なんだか関係各所からお花やらいろいろいただいて、自分の立場というものを再認識させられている今日この頃です。

さて、僕はそもそも、日記なんてものを生まれてこの方つけたことがありません。
チビの頃は夏休みの絵日記をまるまるひと月分まとめて書いちゃうくらいでしたし。
文章を書くという行為自体、さして好きでもなかったんですね、以前は。
で、なにゆえブログを?
って、う~ん、なぜでしょう…。

実は僕個人として言いたいこと、伝えたいことというのはおおよそレオンに集約されてしまっているんです。
例えば先日行ってきたピッティの話。

大和さんからは「ピッティのレポートなんか面白いじゃないですか」なんて言われていたんですが、これも7月24日発売のレオン9月号で十分アウトプットしちゃってます…。

ま、レオンという雑誌が自分のすべてでないことは確かなのですが、それくらい楽しんでいるつもりでは、あります。
特にここ数号に関しては、自分が全体を見なければいけない立場にいるということもふまえ、編集部員たちには「読者の皆さんにページを割いて伝える以上、絶対に“自分は買わないけどね”なんて裏で舌を出すようなマネはしないように」と口すっぱく伝えています。
で、自分が身銭を切って買うなり、本気で取り上げたいと思っている商品に関してはその金額の大小によらず、コーディネートの仕方や季節を越えた応用の仕方、ケアの仕方にも一生懸命になるじゃないですか。そうしたらそこで気づいたことを誰かにきっと伝えたくなると思うんです。その集合体がレオンであってほしいなあ、と思っているわけで。

なので、ここではレオンを日々作っていて思うこと、もしくは掲載できなかったけど個人的に買ったものや、興味をもったこと、レオンをさらに楽しんでいただくための裏読みの方法(ここが一番読んでもらえそう!)また至極個人的趣味までを、ブログというより、コラムとして書いてみようかな、と。
(ネタには困らないと思うのですが、元来の筆不精、というより無精者なので、どれほど続くかは不明ですが…、お付き合いくださいませ)

さて、これが最新号の表紙です。

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これには僕(レオン)なりのメッセージがありまして。
このコーディネート、ポイントになるアイテムはベルト、サングラス、時計、ショルダーバッグのルイ・ヴィトンですね。でも実はシャツはフライ、パンツはインコテックスなんです(ともにB.R.SHOPさんからお借りしました)。
つまりここで暗に言いたいのは、ファッションに好き嫌いはあっても、メゾンとクラシコ(もしくはトラディショナル)はまったくもって融合できるんじゃないか、ということ。ひいてはそれがファッションの楽しさじゃないかなあ、ということです。

事実表紙を飾るジローラモさんもこのコーディネートをすごく気に入ってくれていて、それはホント、編集者冥利につきることだったりもするわけです。

ということで、表紙ひとつとってもそこには我々なりのメッセージなんてものがありますので、また、ゆっくり、改めて。

で、これがその最新号を作っていて、ミイラ取りがミイラになって買ったアイテムの一部です。長くなってきたので詳細はレオンを読んでいただくか、後日こちらにて。

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ただのオールスターじゃん!というなかれ

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ただのレイバンじゃん!というなかれ。
これら、結構、使えますから!

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