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最高峰のシャツ・ブランド、フライの魅力。


長らくメンズ・ファッション誌の編集者を務めた松尾健太郎さんに、こだわりのアイテムをご紹介いただく、『EDITORS CHOICES』。その第6回目は、上質なシャツ・ブランド、「FRAY(フライ)」についてです。松尾さんならではのきめ細やかな視線で、その魅力を語っていただきました。




松尾健太郎

松尾健太郎・まつおけんたろう

メンズ・イーエックス、時計ビギンなどの編集長を経て、現在は雑誌ENGINEクリエイティブ・ディレクター。クラシコ・イタリアや本格靴など、数々のブームを牽引。故・落合正勝氏の担当を10年以上務めた経験も。

私が一番好きなシャツは、フライです。これは、服飾評論家、故・落合正勝先生の影響が大きいのです。先生は、それこそ世界中のオーダーシャツ屋で、いろいろなシャツを作っていたようですが、結局、「シャツに限っては、既製品で十分いいものがある」、そして「そのなかでは、フライが最高である」という結論に至ったようです。晩年の先生は、それこそ、毎日のようにフライのシャツを着ており、一種のトレードマークのようでした。

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約20年前に、クラシコ・イタリアという言葉が日本に初めて紹介されたときから、フライは最高峰のシャツ・ブランドでした。アイコニックだったのは、分厚い貝ボタンで皆をびっくりさせたボレッリでしたが、通好みなのはフライでした。そのとき以来、フライの基本的なデザインは、ちょっと細くなったかな?と言う程度で、ほとんど変わっていません。今となっては、フライの衿は大きく見えますが、当時はほとんどのイタリアのシャツ・ブランドが、あんな感じだったのです。他がアップトゥーデートされた結果、フライは、一人取り残された感じです。しかし「定番」好きな私としては、逆にそこが魅力です。

フライのシャツの一番の特徴といえば、何と言っても、「高い」ことでしょう。生地にもよりますが、1着平均4〜5万円もします。もはやジャケットの値段です。なぜ、あんなに高いのでしょうか?

理由その1は、生地にあります。例えば、「世界一のスーツ生地ブランドはどこか?」といったテーマなら、喧々諤々の議論が展開されそうですが、「世界一のシャツ生地ブランドは?」なら、割と簡単に結論が出そうです。それはイタリアの“カルロ・リーバ”です。

私が今までに会った、ほぼすべてのシャツ職人は、「世界最高はカルロ・リーバ」と異口同音に言いました。なかには「これはカルロ・リーバじゃないけど、その親戚が作った生地なんだ」などという微妙な宣伝文句を口にしている職人もいました。世界一のシャツ生地を使っているのだから、高いのは仕方がないでしょう。


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理由その2は、縮まない、もしくは非常に縮みにくい、ということです。「そんなの当り前だろう」と思われる方もいるかも知れませんが、縮まないシャツを作るということは、意外に大変なことらしいのです。それぞれの生地を水に通して、乾かし、その縮み方を見てから、裁断に入らなければいけません。だから、手間と時間がかかります。私は、インポートの著名なブランドでも、すぐに縮んでしまい、悔しい思いをしたことが何度もあります。縮むことに対する、保険料だと考えれば、高いのも仕方がないでしょう。

理由その3は、やはりパターンと縫製です。ある人から聞いた、いいシャツを3秒で見分ける方法というのがあります。それは「衿の部分を広げてみたときに、描く曲線が強ければ強いほど、いいシャツ」というものです。「人体は丸いのだから、それにフィットする首回りのカッティングも、曲線を描いてなければならない」というのがその根拠で、確かにフライとその他のシャツを比べてみると、フライほど、曲線を描いているシャツは、皆無です(ただし、この方法は、店頭で試みることができないのが、難点です)。

フライの着心地が他のシャツより一頭地抜きん出ているのは、袖を通してみれば明らかです。私はケチなので、擦り切れて着られなくなったシャツをパジャマとして使っていますが、なるほど、他のシャツより寝心地がいいような気がします。将来の安眠のための投資と考えれば、高くても納得でしょう。


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世界最高の既製スーツの値段は、多分100万円以上するでしょう。しかし、世界最高の既製シャツは5万円で買えます。そう考えると、フライは安いといえます。何事も経験と思って、一度フライに袖を通されてみてはいかがでしょうか。

ちなみに、ここB.R.SHOPで売られているフライは、見頃をワンサイズ小さめのものに替えてあるそうです。つまり40のネックには、39のボディが取り付けられているのです。それによって、今風のスリムで、コンパクトなシルエットが得られています。

「フライがいいのはわかったけど、あのシルエットがどうも・・・」という方にも、自信を持っておすすめできる逸品です。

<本日の松尾さんコーデ>

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【イタリア系のクラシックなスーツに、これ以上マッチするシャツはありません」。ダブルカフスのシャツはフライ、タイはマリネッラ、スーツはペコラ銀座、靴は山口千尋氏によるもの。「ダブルカフスが入手できるシャツブランドも、今では希少になりました】



企画・構成 松尾健太郎 / Photo 鈴木 泰之

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