大和/INCOTEX(インコテックス)とPT01(ピーティーゼロウーノ)といえば、当世を代表する2大イタリアパンツ。今回は、それぞれのインポーターをお招きし、いろいろと男のパンツ事情を語り合おうという大胆不敵な企画を企ててしまいました。
大西/本当に大胆。本来ならライバル関係のお二方が顔を揃えているわけですもんね。一回限りというのはもったいないかも。
大和/だから2回に分けてお届けするつもりです。
小林裕さん(※PT01のインポーターであるトレメッツォ代表。以下小林)/なんだか緊張してきました。よろしくどうぞ。
赤峰健介さん(※インコテックスのインポーターであるエスディーアイ課長。以下赤峰)/お手柔らかに願います(笑)
大和/さーて、何から話しましょうか(笑)。
大西/インコテックスといえば、美脚シルエットのクラシコパンツを日本に根付かせた張本人にして、お洒落な方々の定番的存在。一方のピーティーゼロウーノといえば、いま最も話題の美脚パンツを作るイタリアブランド。そのインポーターがせっかく集まっているんだから、ちょっと根源的な話を聞いてみたいです。「イタリアのオヤジはなんで細いパンツを好むのか?」なんてお題で。
大和/面白いですね。それで行きましょう。
大西/本当にボクは前々から疑問に思っていたんです。イタリア人ってお腹が出ていても、エキセントリックに見えるほど細いパンツを穿くでしょう?
赤峰/たしかに、彼らは脚にぴったり貼り付いて、膝下がテーパードしたパンツが好きですよね。
大西/お腹の出た日本のオヤジにはなかった発想だと思うんですよ。
小林/基本的に脚と腰のパランスが日本人と違うからじゃないですか。
赤峰/それは言えます。
大西/たとえばどう違うんでしょう?
赤峰/まずイタリア人の脚って、基本的にとても細いんです。一般的な日本人よりも細いと言ってもいいくらい。
大西/へぇー、そうなんですか?イタリア人がパンツ脱いだところをマジマジ見たことがなかったので、知らなかった。
小林/いや、ホントに細いよ。
大和/もう少し正確に言うと、上半身がガッチリしている割に脚は細い。日本人にはそういう体型の人は少ないでしょう?
赤峰/そうそう。
小林/だから細いパンツを履いてもサマになるし、足首も細いから、パンツ丈を短くするのも似合う。
大西/なるほどね。ボクが漠然と思っていたのは、お腹が出てきた人が太いパンツを穿くと、脚が短く見えるからじゃないかなと。これは最近自分でも実感してるんですが、歩いたときの脚さばきで、股の間に隙間が大きくできたほうが長く見える。だからイタリアのオヤジは細いパンツを好むんじゃないかなぁと。
大和/新説ですね(笑)。でもそういう側面もあるかも。
小林/またイタリア人は、けっして脚は長くないんですよ。なのに、カッコよく見えるのは、パンツを履く位置が上手いからだとも思うんですよね。日本人はどうしても上にひっぱりあげて履く傾向にあるけれど、向こうの人は落とし具合が上手い。それがパンツのシルエットを美しく見せ、結果、脚も長く見せる。蛇足ですが、イタリア人の腕は長い。同じ身長だと、日本人より2から3cmは長いんじゃないかな。その証拠に、昔のイタリア車のハンドルは遠いでしょ?
大西/お尻はどうですか?やっぱりキュッと上に上がっているんでしょうか?さっきも言った通り、ボクは彼らがパンツを脱いだところを見たことがないので(笑)
小林/お尻がキュッとあがっているわけじゃなくて、イタリア人はお尻の下のところがないんですよ。
大西/お尻が薄いという点では、日本人も同じだと思うんですが。でもインポートのイタリアのパンツを履くと、日本人は大抵お尻の下の生地が余りますよね。
小林/そうは言っても、イタリア人は全体的な厚みがありますから。日本人は断面図で見るとつぶれた楕円形。イタリア人はもっと四角い。彼らは華奢に見える人であっても、やっぱりボリュームあるんです。だからイタリアのパンツをそのまま日本人が穿くと、お尻の下の生地が余ってしまうんです。そこでピーティーゼロウーノのクラシックなモデルも、日本仕様はいろんなところをつまんでいます。
大西/完全日本人仕様として知られるインコテックスの「J035」モデルもそうですよね。
赤峰/そうです。あれは日本人のヒップの形を徹底的に研究したモデルで、大定番の「036」をベースに、ヒップ下から腿にかけてのボリュームをかなり削っています。股上もやや浅めです。おかげさまで発売以来大好評。
小林/ピーティーゼロウーノでいうと、両サイドを2cmずつ詰め、その上、後股上を変えずに、前股上だけ2.5cm下げています。
大西/前股上を下げているのは、自然にパンツを落とした感じで穿けるようにってことですね。
小林/そうです。ディレクター兼デザイナーのマリオ(※マリオ・ステファノ・マランさんのこと)に、イタリア人もパンツを落として穿くのが好きだから、日本仕様みたいに前股上を短くしたらと言ったことがあるんですが、それはダメだと。イタリア人はカラダの厚みで生地がとられるから、日本仕様より股上寸があったほうがいいみたいですね。
大和/それはよーくわかります。たとえば同じ脚の長さでも、痩せている人と太っている人ではベストなパンツ丈は違うんです。それは太っている人のほうが生地をとられてしまうから。
大西/さすが“お直しの達人”らしい意見。そういえば、この間B.R.SHOPさんにいったら、ドレスパンツを試着したお客様がヒップ下のたるみを取って欲しいと注文してました。痩せてる人だと、日本人仕様にアレンジしたパンツでも、後が余ってしまうことがあるようですね。
大和/うちはその手の修正にはかなり自信がありますよ。赤峰さんと小林さんを前にしても、得意と言い切ってしまえるくらい(笑)。具体的にどうするのかというと、前で調整すると穿きづらいパンツになるので、ここの後股上を……(以下、延々と直しテクニックについて解説)
赤峰/へえー、B.R.SHOPさんはそこまでやるんですか。
小林/ホント、マニアックだねぇ。
大和/イタリア男が好む細身パンツの魅力を、日本人向けにアレンジしたモデルで伝えているのがインコテックスやピーティーゼロウーノ。その功績をリスペクトしているからこそ、さらにより幅広い人に穿いてもらうべくB.R.SHOPは日々努力しているんですよ。
小林/うまいこと言うねぇ(笑)。
小林 裕さん
株式会社トレメッツォ代表取締役
海のものとも山のものともつかなかったピーティーゼロウーノの魅力にいち早く気づき、日本における正規代理店になることを決意。その後日本における急速な大ブレイクを影で支えたかたです。ピーティーゼロウーノの快進撃の秘密を聞くと、デザインの魅力もさることながら、デリバリーを含めた工場背景がしっかりしていること、そしてマリオ・ステファノ・マランという優れたディレクターを得たことと、と語ってくれました。
赤峰 健介さん
株式会社エスディーアイ課長
“ソロ・パンタローネ”(パンツ一筋)を標榜するイタリアのパンツ専業ブランド、インコテックス。これを日本に普及させた張本人である輸入代理店エスディーアイにおいて、メンズのセールスを担当なさっているかたです。服飾全般に深い知識をお持ちで、インコテックスのノープリーツパンツは、リーバイスの501同様、ディテールを進化させながら定番として君臨する傑作とのこと。
大西 陽一
ファッションエディター/RESPECT
エディター的視点からスタイリングのできる希少な存在として、雑誌や広告など幅広く活躍する売れっ子。守備範囲はメンズファッションだけにとどまらず、インテリアやクルマ、雑貨までにも及び、親しみやすいほがらかな人柄が多くの編集者から愛されています。趣味の写真の腕前は相当なもの。
