テロテロした生地感の梳毛生地のスーツが長らく日本を席巻していましたが、英国調トレンドを受け、今季は紡毛系生地がとても注目されています。そこで紹介したいのが、紡毛生地を用いた「サルトリオ」のスーツです。
チョークストライプの生地はギュッと目が詰まり、コシ感といい、ハリ感といい、スーパー素材のウールの雰囲気とはまるで異なる重厚感をたたえています。昔ながらのスーツ地といった感じで、最近しなやかな梳毛スーツばかり着ているという人はちょっと抵抗を感じるかもしれません。しかしヨーロッパの人たちは、昔も今も、この手の紡毛スーツがお好み。スーパーの数を競うような最近の日本の風潮のほうが本当は異常。そもそもあの手のテロテロした生地は、貴族階級が室内で着用するようなラグジュアリーな服のために生まれたもの。そういった意味ではリアルビジネスにはあまり向いていないのです。
このスーツが秀逸なのは、重厚な紡毛系でありながら、軽やかな着心地を実現しているところ。ふわりと身体にまといつく感じで、まるで重さを感じさせません。この軽さは、薄い肩パッドのみを使用し、芯地をほとんど使用しないサルトリオならではの独特の仕立てがもたらすもの。それでいて、そこかしこのラインがとても美しく、丸みを帯びた肩まわりのナチュラルな表現には惚れ惚れしてしまいます。
ピッチ幅が広いためにチョークストライプがうるさく見えないところも魅力的。ちょっと懐かしい感じもしますが、だからこそ今季はとても新鮮に装えるでしょう。もちろんシルエットは適度な細身で、あなたの体型を美しく見せてくれること間違いなし。是非ご注目していただきたい一着です。
スタイリング : 大西 陽一 / RESPECT
文 : 吉田 巌 / 有限会社 十万馬力
英国生地っぽいタッチの紡毛生地を使用。トレンドに乗るなら、今季は梳毛ではなく、この手です。微妙にピッチ幅の広いチョークストライプも新鮮です。
ウイングチップのシューズが似合いそうですが、ここではベタなコーディネートになるのを避け、あえて人気イタリア靴、「アルティオリ」を合わせました。美しいラストのネイビーの2アイレットシューズが、全身をぐっとモダンに見せます。
このスーツにレジメンタイを合わせるのは難しいでしょう。小紋、もしくはご覧のようなドットタイを合わせるのがベスト。Vゾーンがクラシカルかつシャープにまとまります。