TOPIC PATH
home  >  
B.R.BLOG  >  
前田 陽一郎
前のページに戻る
前田 陽一郎

profile

前田 陽一郎

雑誌「LEON」副編集長

ここではレオンを日々作っていて思うこと、もしくは掲載できなかったけど個人的に買ったものや、興味をもったこと、レオンをさらに楽しんでいただくための裏読みの方法(ここが一番読んでもらえそう!)また至極個人的趣味までを、ブログというより、コラムとして書いてみようかな、と。 (ネタには困らないと思うのですが、元来の筆不精、というより無精者なので、どれほど続くかは不明ですが…、お付き合いくださいませ)

雑誌「LEON」のホームページ
http://www.shufu.co.jp/
magazine/leon/

> プロフィール詳細

calendar

    2011.09
S M T W T F S
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  

recent posts

LEON
ファッション専門誌でもクルマ専門誌でも時計専門誌でもありません。いつまでも艶っぽさを失わない「モテるオヤジ」のためのクオリティ・ライフ実用誌です。

> 雑誌「LEON」のホームページ

持っていて恥ずかしい本を作りたい!
Sep 08, 2011

『LEON』の発売日になると問い合わせの電話が鳴りやまない、という相変わらずの完売伝説を更新し続ける『LEON』も今年9月で10年目を迎えます。大きな時流の変化もあり世の中の気分もより安定志向へと向かいつつある今、編集長代理として前田さんはこれからのメンズファッションをどう考えているのでしょうか。

大和 前田さんが編集長代理として現場を統括されるようになってからの3年間、「ボリオリ」の楽ジャケや「PT01」のブレイクといったように、新しいベーシックが次々に生まれてきましたよね。

前田 この3年間、その時々ではトレンドが動いていないような言われ方をしてきたけれど、振り返って見てみると、実は大きく動いていたんだよね。トレンドを引っ張るイメージリーダーとなるブランドがその時々できちんと現れていたっていうのがその証拠。それでもここ最近はさすがに新しい流れが見えづらくなってきていて、あらためて“定番”というキーワードがクローズアップされつつあるかな。

大和 それは『LEON』そのものにも影響を与えるんですか?

前田 もちろん。でも『LEON』が安定志向に走ることは絶対にないから、むしろ今を“タメ”の時間に使いたいと思ってます。『LEON』では今までも「2枚目で美しい、エレガントな男になりましょう」なんて言ったことは一度もないのね。僕自身、二枚目ってすごく損だと思っているし。そもそも疲れちゃうでしょ!そんなの(笑)。ともかく『LEON』はむっつりスケベなオッサンよりも、よく働きよく遊ぶ前向きなオヤジでいたいぞ、というスタンスでいたい。けれども振り返ってみるとここ何年かは『LEON』ってちょっと格好いい路線だったかなぁ、と(笑)。今は「モテるって何だったっけ」という事を見直したい時期に入りつつあるかな。

大和 ファッションも『LEON』も“タメ”の時間、と。

前田 そういう意味ではファッション的に定番が気になるというのはあながち間違ってはいないんじゃないよね。

大和 なるほど。今月の『LEON』のタイトルも「モテるオヤジは定番が新しい」ですもんね。

前田 例えば自分が持っている2Bの金ボタンブレザーや、白シャツ、デニムだったり、シューズの一足一足だったりとか。べーシックなものがきちんと揃っていれば次に大きな流行が来たときにしっかり対応ができる。今はそのタイミングなんじゃないかな。今年は節電の影響もあって“スーパークールビズ”なんていう言葉もあったでしょ? そうするとトレンドと並列してどうしても実用的なものが必要になる。実用の中で差別化したくなるというのが当然消費の原理原則であって。例えばビジネスでポロシャツを着るとすると台襟なしのポロシャツを着るより、台襟付きのポロシャツを着ているほうが断然サマになるわけだし。だから『LEON』で提案する夏の涼感スタイルは全て台襟付きの鹿の子のポロシャツで組んできたのね。実用面を配慮したうえでのスタイル提案が必要となってくる夏だったからね。じゃあ今年の秋冬はどうなのよ?というと、さっきも言ったとおり、トレンドが見えづらい年になっている。であればファッションの傾向にフィットするためにもいまベーシックなものを着ておく必要があるというのが僕の考えかな。

大和 なるほど。この世の流れを考えたときにこれからの『LEON』が目指すところ、そして編集者として前田さんが理想とするところってなんでしょうか?
 
前田 僕はね、本当は持っていて恥ずかしい雑誌が作りたいのね! 男同士では見られるけれども女の子にはできれば見られたくない、というような雑誌。でもって部屋には飾っておきたくなるような装丁のもので。その最高の例が1950年代から70年代までの『PLAYBOY』。実は僕、1950年代中頃から1970年代中頃までの『PLAYBOY』が本当に好きで、普段は全然引っ張り出さないけど、段ボールの中にはあちこちのジャンクヤードで買ってきたのが箱詰めになってるほど。自分のなかではちょっとした宝物かな。ただオンタイムでそれを見ていた世代の人たちって、きっと彼女や奥さんには見られたくなかったんじゃないかなあ(笑)。でも編集者の視点で見ると、この時期の『PLAYBOY』は非常に高度でクオリティの高いアートディレクションと、骨太でジャーナリスティックな政治経済記事が入っていてとても男っぽくできている。ヌード写真やピンナップも、実はすごく綺麗なのね。まさに男の欲望をギュッと詰めました!みたいな(笑)。自分がいま作りたい本や求めている雑誌のイメージはそこにあって。

大和 それはインターネットでは表現できないものだったりするんですか?

前田 インターネットっていうのはかなりパーソナルなメディアでしょ。エッチな画像だって噂話だって、いくらでも内緒で閲覧できちゃう。しかも、無料で! でも雑誌というのはいまや唯一の有料メディアであるわけで。新聞は有料メディアではあるけれども月払いという仕組み上、一部あたりのペイは実際は購読者は意識していないはずで、それはケーブルテレビも同じだよね。ある情報をキャッシュオンでしか手にできない唯一のメディアが雑誌だとすると、なにを目的に買うか、がポイントになる。僕はこれってとても大切なことだと思っている。お金を払ってまでして読みたいものってなんだろう、場所をとってでも保管しておきたいものってどういうものだろうってね。ただそれとは同じではないけれども『LEON』はもともとちょっと恥ずかしい本だったはずなのね。

大和 モテたい、というオヤジの欲望に素直という意味で。

前田 だって、“モテるオヤジ”なんてタイトル、恥ずかしいじゃない?でもそこで紹介されているファッションは非常に的を得ていて、格好よくて・・・。書かれている内容を読むと理屈的にも凄く納得できる。それが『LEON』だと思うし、もちろんいまでもそこは変わらない。けど人は刺激には慣れてしまうもので、今では他誌まで「モテる」とか「オヤジ」とか使いはじめちゃってるでしょ。

大和 うちのお客さんもよく言っていたんですが、初期の『LEON』は家では読むけれどもカフェでは読みたくない、と。だけど最近『LEON』が恥ずかしいという風潮は確かに
ないですね。

前田 そうそう。でもそれは、時代が追いついてきちゃったんだよね。

大和 なるほど。

前田 いい歳をした男がお洒落をする。それからいい歳をした男が“モテる”ために頑張る。そういう事が決して恥ずかしいことではなく、それこそ肉食系という言葉に代表されるようにむしろ“今の40代、50代のほうがガツガツしていて格好いいじゃん!”というのが主流にすらなっている。だから恥ずかしくなくなったんだと思うよ。そこで『LEON』に更に恥ずかしさをプラスするにはどうすればいいかっていうと、これは難しい。それこそ『PLAYBOY』みたいに裸のピンナップを載せるぐらいしないと恥ずかしくならないもの(笑)。

大和 確かに(笑)。

前田 当たり前のその先や10年目、そして15年目を考えないといけないのが本当に今やらなきゃいけないこと。それこそ自分の中にあるトレンドの読み方や、昔から好きな本や雑誌が頭のなかをグルグル駆け巡っているというのが今の状態(笑)。だからモナコGPにしてもミッレミリアの取材にしても、自分が知らないことに首を突っ込むことをこれからも積極的にやっていきたいなぁ、と。

大和 やっぱり前田さんは現場が好きなんだ。

前田 そうだねえ。自分で経験するという事ってすごく大事。知っているつもりで実は知らない事って沢山あるんだよね。せめてこの目で見るという事を改めてきちんとやってみたい。それが10年目の『LEON』に繋がるのかなぁ。


モテる男はスカーフがお好き!?
Apr 13, 2011

むむっ、ここはフィレンツェ!?なんともお洒落でワルそ~な方々が・・・。と思ったら『LEON』編集長代理・前田陽一郎さんではありませんかっっ。そして隣は副編集長の石井洋さん、それに編集の渡辺豪さん。それに見れば皆さんネイビーのジャケットじゃありませんか。偶然のカブりがあまりに面白かったのでスリーショットで撮らせていただきました。

いまやアップするたびに脅威のアクセス数を誇る『LEON』編集長代理・前田陽一郎さんのインタビューブログをリニューアルします。今までは「モテ」をひとつのキーワードとして語っていただきましたが、今回からは前田さんがいま気になっている「モノ」に焦点を絞って、聞いてみたいと思います。
第一弾はスカーフ。でも前田さん自身は、実はスカーフはあまり好きではないとか・・・。でもやっぱり気になる存在!?
それではいったい、どんな話になるのでしょうか。

前田 ここのところ、あらためて定番と言われるスタイルやアイテムが気になってます。今日着ているのも白いシャツにネイビーのブレザーにデニムっていうすごく当たり前の合わせでしょ? むしろ気にしているのはサイジングやこなし方ですね。例えばジャケットから出る白シャツの袖の量というのはずっと「1.5cmが正しい」とされてきてますが、今日のこれだと4〜5cmは出てるんじゃないかな。チーフも出過ぎでしょ。でもこうしてポイントになる場所がちょっと過剰な演出だと、コンサバティブな印象にはならないでしょ?

大和 なるほど。今月号の『LEON』じゃないですけど、ワルっぽく見えますよね。

前田 この白いチーフをTVフォールドで挿したら、ちょっと面白くないかなぁと。

大和 巻き物はどうですか?

前田 いま世間的には巻き物が流行っているって言われているけれども、個人的には正直好きじゃないですね。第1キザっぽいでしょ(笑)。キャラじゃないかな、と。しかもせっかくネクタイをとって首元が解放されて自由になったのに、また何かを巻くって、すごく窮屈じゃないですか。

大和 でも、今日の前田さんは巻いている(笑)

前田 そう! これはね、自分の中ではお洒落のためと同時に、衿の汚れ防止でもあるから。ほら、僕の基本的な移動手段ってバイク、でしょ? 一日バイクで都内を走っていると白いシャツの衿って、すごく汚れるのね。でもこうして首になにかを巻いているとぜんぜん汚れなくて便利なんだよね!

大和 さっきの話だとキザっぽく見えて嫌だというお話でしたけど。

前田 だから極力無造作にはしているつもり。いかにもキメてます、とならないように。

大和 なにかコツってあるもんでしょうか?

前田 う〜ん、基本、結ばないことかな? ほら、ヒーローものの主人公みたいに小さく首もとで結ぶ、ってのは僕のなかでは相当に恥ずかしい(笑)。こうしてラフに使っているときには僕のなかでは“巻物=過剰なお洒落”というよりも、実はとっても便利で使い勝手がいいもの、という位置づけなんだよね。

大谷 今日、チェックのストールをされてましたよね。パッと見て、一瞬チェックのシャツを着ているのかと思いました。あっ、良く見ると違うんだ、みたいな。

前田 これはストールをササッと入れているだけね。チェックシャツも僕はあんまり着ないんだけど、小面積だったらむしろ定番的な合わせのポイントになってくれるかな、と思って。しかもこれ、確かどこかの雑貨店さんでふらっと買った安〜いものです(笑)。

大和 確かにスカーフも結ぶと過剰に見えますね。とすると、中に入れちゃうというのはいいかもしれない。

前田 シャツの袖が結構長いとか、チーフが結構出ちゃってるとか。それらも全部、無造作だから嫌みがないように思うんだよね。

大和 計算しているのに、見ようによってはそう見えないところが格好いい、と。

前田 男性のファッションって難しくて、作為的なものが見えれば見えるほど見透かされちゃうんですね。でも一方で作為的では無い事って、すごく受け入れてもらいやすい。

大和 そこが女性と大きく違いますよね。実は今度からスタートする「ペルノイ」のスカーフなんですけど、薄くて“いかにも”じゃないところがけっこうイイと思うんですよね。僕自身も恥ずかしくてなかなか巻き物に抵抗があるので。これだったらアリかなぁと。

前田 ほんとだ。ふーん。こうやってシャツの襟に無造作に入れても過剰なボリュームが出なくていいよね。ただ巻いているだけならいいんだけど、いかにも「スカーフ巻いてます」みたいなのは恥ずかしいから。

大谷 チラッと見えているのがいいですね。

前田 そうそう。こういうモノは控えめに見せるくらいが丁度いいよね。

大和 これ実は素材がポイントなんですよ。カシミアと化繊の混紡なんです。わざとユルい感じを出しているんです。

前田 例えばシルクとかでキラキラっと素材が光ると恥ずかしいよね。女性の場合は作為的であるほどファッションに繋がっていくんだけれども、男性の場合は飾り過ぎないことが案外、大事だったりするから。

「変形の巻き方かたをすると、もしかしたら面白いかもね。こうやって巻いてみるとどうだろう。ネクタイがわり、みたいな」(前田)

胸元に挿せばチーフにも。

デニムは前田氏の最近の大ヒットという「リーバイス399」。

前田 ジャケットは「ディストリクト」のもの。4年前のかな。古いね~。でもいっちばん着ているかな。当時から芯なしですっごい着心地も良くて」

大谷 モチーフが付いているボタンがとっても可愛いいですね!

前田 金と銀になってるんだよね。ほんとに良く出来てるよ。

ティアドロップのサングラスはレイバン。「ジロー(ジローラモ)さんに貰ったの。ゴールドミラーは珍しいよね」(前田)

東北地方太平洋沖地震
Mar 26, 2011

東北地方太平洋沖地震において被災された方々にお見舞い申し上げるとともに
お亡くなりになられた方々と、そのご遺族の皆様に深くお悔やみ申し上げます。

じつはレオンのホームページともあわせて
こちらでも震災直後になにかを書こう、とは思っていたんですが
日を追うごとに
いま、ここで、なにか自分が口にすることが
じょじょに憚れるようになってきて…。

正直に言えば、お見舞いやお悔やみの言葉を上のように書くことが精一杯なのです。

言葉は、やっぱり、とても難しいんですね。

立場や環境、時代やタイミングによっても同じ言葉が違う意味をもってきます。
たとえば今回被災された方々を映す、あるニュース番組のヒトコマのことなんですが
(このことはレオンのブログにも書きましたが)
ある年配の女性が子供に肩をたたかれ
「ありがたい」
とおっしゃっているんです。
その女性はもしかしたら
家をなくしているかもしれないし、
ご家族や知人の方になにかあったかもしれない。
にも関わらず思わず出る
「ありがたい」という言葉ほど、重いものはないと思うんです。

今日もテレビで被災された方がおっしゃってました。
「家も、電気も、原子力もいらない。ただ家族がいてくれればいい」と。

その一方で

「もちろんいま大切なのは被災地救済だと思う。でも、停電や放射能問題で、ウチだけでなく、近く廃業に追い込まれる人たちが出るかもしれない」という小料理店を営む友人の言葉もまた切実なものだと思うんです。

僕は今回の計画停電に関しては、ある部分ではそれもいいのではないかと思うところがありました。もちろん被災地への電力供給を優先すべき、との考えがありながら、便利になりすぎた世の中、それが当たり前になってしまっている我々は非常に危うい、とも思っていたからです。
さらに、今回あらためてわかったのが、我々が得ていた電力は、放射能という恐怖と背中あわせの原子力に頼っていたこと。そしてその原子力は地球温暖化という観点から見れば、やむを得ない装置でもあること。水力、風力その他の発電装置では電気料金がとんでもなく高くなってしまうこと。それを黙認してくれない“平和なときの”市場があったこと。
すべては矛盾とともにギリギリの均衡を保っていたんですね。

とにかく、先の料理店さんにしてみれば、冷蔵庫がとまり、営業時間が不規則になることは死活問題なんですね。
僕にとっての正義や倫理観は、ある人にとっては間違いかもしれないわけで。

だから、言葉を発することに躊躇するのです。

ダラダラと書いてすみません。

悲しいかな、僕は原子力発電を修理することも、救急医療のヘルプも、ヘリコプターで救援活動ができるわけでもありません。

じゃあ我々のようなエンターテイメントが不必要か、悪か、といえば、それは違う。
ふつうに生きていれば必ず皆が持つだろう余暇や欲求を充実させることへの渇望は、人間として当たり前だと思うし、それこそが経済活動、人間活動の根本原理だとも思うから。

だからLEONはいつものままに、今現在を昨日とかわりなく、明日をより楽しく生きたいという方々に向かって作っています。

とりとめもない話でした。

次回からはいつもどおりで!
だっていつもどおりに、こうして言葉を発せさせていただけることって、「ありがたい」ですからね!

では。

モテる男は両極が好き?Vol.2
Feb 28, 2011

前田 洋服も、今年買ったモノと10年前に買ったモノをどうやってミックスさせようかなぁ、と考えたり。

大谷 それは今後の『LEON』のテーマにもなり得る?

前田 どうなんだろうねぇ。そういうメンタルな部分はあってもいいかな。そういうモノの考えが隅にあったうえで新しいものを紹介していく雑誌だと思うから。

大和 じゃあ最新のもなら何が欲しいですか?

前田 それこそクルマでいえば電気自動車でポルシェよりも加速がいいといわれている「テスラー・ロードスター」かな。近々発表されるはずの「アウディ イートロン」もいいよねえ。これは両方とも資金さえあったら欲しい(笑)。けど、「それらを除いて欲しいクルマは?」と聞かれたら、「’60年代から70年代前半のクルマが欲しい」って素直に答えると思う。’90年代半ばを過ぎるとクルマのベース技術は完成されてしまっていると思っているのね。だからいま現在所有しているクルマはすべて‘90年代のものだったりするわけだけど、それは今のクルマが駄目、という事ではなくて、いっそ最先端のクルマを手に入れるなら、未来を感じたいというか。

大谷 クラシックカー好きの人は「手がかかるから可愛い」と言いますが、前田さんもそんな感覚ですか?

前田 いや〜ないですねえ(笑)。モノは絶対に手がかからないほうがいいし、壊れないほうがいい。何度も言うけど、僕はマニアじゃないから、クルマは壊れないほうがいいし、洋服は着れたほうがいい。極論すれば、生地とか縫製に拘るのはとっても大切な事だけれども、それ以上に見てくれが今っぽいほうが絶対大事だと思ってる。だから僕自身はあんまりオタク的発想で洋服は選ばないし、靴だってグッドイヤー製法がいいと言われていても実用で考えれば「マッケイで十分でしょ」と実は思っている。

大谷 確かに、靴をオタク的に集めている人でお洒落な人がなかなかいないのと同じなのかも。

前田 それ自体が悪いことではないけど、要はバランスが大事だと思うのね。クルマやバイクも古けりゃいいってものではなく、そこには僕自身、見た目の格好よさは絶対に欲しい。今日着ているレザーのコートだってヒエラルキーの外側だよね。レザーコート自体、そもそも着ている人がいないわけで(笑)。

大谷 見たことないですよ!

前田 でしょ! で、「どこの?」と聞かれたときに、「ロエベ」って答えたら、おそらく10年先も間違いなく「アッ、そうなんだ!」とくるはずだし、きっとレザー製品のカテゴリーにおいてこれからもトップ・オブ・トップの座に君臨し続けると思うのね、このブランドは。それもヒエラルキーの外側に居るっていう事のひとつだと思うんだよね。

大谷 それこそセンスかもしれないですね。

大和 前田さんって、そういうのが上手だなぁって思いますね。結局、前田さん自身がお洒落に着てようが着ていまいが、それがとてもお洒落な事のように周りが感じてしまうから。

前田 この「ガガ」にしてもクォーツではなく機械式時計で、なのにデザイン的に遊んでいて、しかも値段がそこそこ、っていうバランスがいい。そのうえこんな時計はそもそもないから、ヒエラルキーの外側に居られるわけで、それが面白いと思ったんだよね。高級ジュエリーだって同じで、上を見るとキリがないでしょ。だけど腕元を飾るものっていうのはアイデア次第で色々なものがあるわけで。B.R.SHOPでも扱っている「チャン ルー」や「オヴィリ」なんかは“ジュエリー”“メジャーアクセサリー”というヒエラルキーの外側に居るものだから楽しいんだよね。ここにヒエラルキーが生まれれば、次にまた違うものを探すだろうし。

大和 トレンドを作り出す人に必要な発想なのだけれども、権力の争いになっていきがちなモノを巧妙に目線を変えて動かしていく、というか。

大谷 なるほど。いつの間にかこっちのほうが格好よくなっている、みたいな。

前田 人の目が動き始めるわけじゃない? そこでまた自分が動いていって、また盛り上がっていけばそこに新しい市場が生まれるだろうし。

大和 古いクルマもある意味そうですよね。フェラーリやベントレー、マセラティが集まっているなかでも、「僕は‘70年代のポルシェに乗ってます」って言えば、それがいくらで購入したものであったにせよ、確実に「おおぉ~」って反応がかえってくるはずですからね。

前田 同じなんだよね。アウディのR8を買って「乗りたい、乗りたい!」っていう気持ちと、‘60年代のトヨタ・スポーツ800に「お~、乗りたい!」っていう気持ちっていうのは。それに対する投資額と出会いのタイミングの違いだよね。アウディはディーラーに行けば買えるけれども、“ヨタハチ”は買いたくても買えないものじゃない? そこにはモノの値段はまったく関係なくて、それを所有しているということに意味があるわけで。まあ、でもどっちがモテるかって言ったら、やっぱりR8のほうがモテる(笑)。

大和 ヨタハチで喜んだ女の子がいるとしたら、相当マニアックですよね。

前田 ハハハハ、だよね(笑)。エアコンもないクルマで喜んでくれる女性がいたら、その人は相当変態だね。

大谷 でもこの“ヨタハチ”、手に入ったら通勤にも使うつもりですか?

前田 もちろん! 

大和 不思議なのは、それらに乗って楽しめる時間が果たして、多忙な前田さんにあるのかなと。

前田 ないよね~(笑)。

大和 前田さんがいま現在時間を割いている趣味ってなんですか?

前田 今は自転車かなぁ。そもそも組み立てる楽しみがあるからね。

大谷 一緒に走りに行く仲間はいるんですか?

前田 いや、自転車もオートバイもクルマも、誰かと一緒ってことはほぼないなぁ。ツーリングも誘われて行くことはあっても、自分からはないし。そもそも僕にとっての趣味って、一人になれる時間という意味が強くってね。完全にひとりになって無口に没頭する時間って、大人になるとなかなか無いじゃない? それができるのが趣味の時間なんじゃないかな。常に人と接する仕事だから、より一層一人の時間が大切なのかも。よく人から、「いつも仕事のことを考えていそう」なんて言われるけど、確かに帰宅途中のオートバイで走っているときに考えたりはするけれど、実際は集中力って20分位しか続かなくて。次の日が休みだったりするともう、どうでもいいことがどんどん頭に浮かんできちゃう!「家に帰ったら自転車のブレーキ調整しよう」とか「最近動かしていないオートバイのエンジンかけようかな」とか。だから休日の僕なんて、ヤバいですよ。朝から晩までガレージにこもって、延々と工具をもって機械と格闘してる(笑)。思うようにいかなくてひとりでイライラしてみたり、思うようにいったらニヤニヤしてみたり。エンジンを掛けると30分くらい近所を走って、またふらふらガレージに戻ってきて、一人でドライシガーをブワ~って吸って、30分ボーっと過ごして。その間、な~んにも考えてないもん。座禅みたいな世界だね(笑)。もはやモテる、モテないの話ではなくなってきてるね(笑)

大谷 完全に無の時間があるのは確かに意外かも! 仕事柄、常にアイデアや企画が頭を巡っているのかと思いました。これだけ男っぽい趣味に没頭できる前田さんがこの業界でも兄貴分として好かれているのも、なんだか分かる気がします。しかも結果、モテてる気もしますよ。一人の時間が過ごせるって、大人な感じがしますもん。あまりに没頭して放っておかれると女性としては寂しいですが(笑)

大和 僕は一人でいると常に会社の事を考えちゃいます(笑)。

前田 もう完全に趣味の事になっちゃったね。モテとは離れた話になっちゃった(笑)

大谷 いつもの事です(笑)。今回もありがとうございました!

10年後も現役なはず?のロエベのレザーコート。

FLAT HEAD&COのデニムシャツは10数年前、SANTACROCEのデニムは3年前に購入。洋服も年季が入ったものと新しいものをミックスさせるのが楽しいそう。

モテる男は両極が好き?
Feb 26, 2011

友人から真っ赤なトヨタ・スポーツ800、通称“ヨタハチ”を購入することになった前田さん。送られてきた写メールに思わず笑みが。実はヴィンテージカーフェチ?
いえいえ、単なる旧車マニアではなく、そこには深~いコダワリが隠されているんです。

大和 しっかしこの“ヨタハチ”珍しいですよね。

前田 あ、ちなみにまだ「購入した」わけじゃないですよ。大阪の友達から「手に入れた」という連絡があって思わず「オレに譲ってくれ!」って言ったら「じゃあ見にきてくださいよ。レストアの方向性を打ち合わせしましょうよ!」って。要するに今は友達のだけれども、いずれ(近いうち)にはこっちに回ってくる確約をとった、という段階で(笑)。

大和 というか、そもそも思わず、でそういう展開にはならないというか(笑)。前田さんってヴィンテージ好きでしたっけ?

前田 そもそも古いクルマは好きなんだよね。社会人になって最初のボーナスで買ったクルマがMG-Bだったくらいだから。

大谷 イギリスの古いスポーツカーですよね。

前田 自分と同じ歳の‘69年式のね。当時は自分なりにモディファイしたくて、給料のほとんどを修理やカスタムにつぎ込んでた(笑)。それくらい、好き。いちばん最初に乗った車は祖父がワンオーナーで乗っていた’71年式のビートルだったんだけど、まだ学生だったから友達のツテでクルマ屋さんのガレージを借りては車高を落としたりして。そうして考えると、自然に古いクルマと接してきたかな。

大和 バイクも古いのを買ったり?

前田 バイクもかなり乗ったな~。‘70~’80年代のものが多かったかな?

大谷 ヴェスパとか、ですか?

前田 ヴェスパは今も乗ってるよ。でもそれほど古いものではなくて、PX200っていうモデルで‘90年代後半のもの。昔乗っていたのはヤマハのTX650やGX750、それにホンダのCB750FBとか。結局一番長く持っていたのは定番のヤマハのSR500だったけど。

大谷 全部あげていったらキリがなさそうですね。

前田 確かにね! でも、だからといって僕はマニアじゃないです。とにかく乗り物が好きなだけ。だからいつも古いものと実用的な新しいものはもちろん、荷物が積めるものとそうでないスポーツカーのようなもの、オフロードとオンロードのように、とにかく両方持っていたいっていう贅沢な願望があって(笑)。自転車も、ロードレーサー、BMX、近所の山の中を走るためのマウンテンバイクにダウンヒル用のフルサスペンションモデルも持ってます。バイクなら通勤にはBMW、オフロードを走るためにヤマハの TY250Zってのも持ってます。けれどもスクーターの楽しさっていうのもあるから、ヴェスパもず〜っと持ってます。

大谷 その台数はスゴイ! 前田さんって結構な趣味人なんですね。

大和 クルマも何台か持っていますよね?

前田 もうアホですね。クルマはクラシック・ミニがあって、ジープ・チェロキー、それにポルシェの993。

大谷 そして次に手に入れようとしているのがこのトヨタ・スポーツ800ですか!

前田 クラシック・ミニは僕の中では“旧車”じゃないからね。根本的に古いものが欲しいな、とはずっと思っていて。未だにオートバイもクラシックなやつが欲しいなあ、と。とにかく常に両極を楽しみたいんです。ほんと、おバカさんです(笑)。

大谷 それってファッションでも同じですか?

前田 そうかもね。スーツを着るときにはちゃんと着たいし、デニムなら上下デニムがこなせる男でいたいっていうのはずっと変わらないから。なににしても、両極がきちんと楽しむことができれば、その中間を楽しむ事もできるっていうのは持論かも知れない。

大和 それにしても前田家のガレージは凄そうですね。

前田 いろいろ溢れかえってます(笑)。

大谷 手入れがされた昔のクルマは、どこか品がありますよね。特に前田さんみたいにワイルドな人がクラシックカーに乗っているとそのギャップにドキッとしますね。格好いい最新のスポーツカーを何台も揃えて乗っている人とか40代の富裕層に多いですが、それだけだと、あまり魅力的には感じないんですね、私は。逆に、古いモノの良さをきちんと理解したうえで実際に乗って楽しんでいるほうが最新のスポーツカーしか知らないより断然格好いいよく見えますし、何より知的な感じがします。

前田 そう?! 基本、古いものって女子ウケは悪いけどね(笑)

大谷 それは納得! お尻が痛くなりますから(笑)でもあえてミーハーなクルマに手を出さないところが前田さんらしいかも。

前田 いやいや! オトコ目線でいえば相当ミーハーだと思うよ(笑)。ただどっちにしてもヒエラルキーの外側にはいたいんだよね。人って常に比べられるわけじゃない? それを、自分のキャラクターとモノで出来る限り外側にいるっていう姿勢でいたい。価格が高いとか安いとか、早いとか遅いとかいった単純な判断には巻き込まれたくない。

大和 まさにお金じゃなくてセンス、ですか?

前田 まさに(笑)!。これも例え話なんだけど、僕は冬はテレマークスキーをやるんだけど、これもまた上手かろうが下手だろうが「テレマークをやっている」と言うだけで、大半の人たちのヒエラルキーの外側に居られるわけ。それにマイノリティでいることって案外、周りが優しかったりするのもいい!

大谷 それまた珍しい趣味ですね。

前田 高級車はやっぱり魅力的ではあるけれども、ツウな人が見ても「それを選んだんだ。いいよね」って言ってもらえて、一般の人から見ても、「いいですよね」って言われて、クルマ屋さんでも「乗り続けたほうがいいですよ」って言ってもらえるクルマを沢山の選択肢のなかから自分なりに選ぶのが好きなのかもね。だから空冷最後のモデルであるポルシェ993に乗り続けるし、チェロキーにしてもリミテッドの最終版に乗り続けたい。一般的なヒエラルキーを十分理解したうえでその半歩外側にいると、独自の立ち位置でいられるかなぁ、と。

大和 なるほど。

モテる男は仕掛けが上手い!?
Feb 02, 2011

ファッション業界の人が集まれば必ず『LEON』掲載の反響の話になるほど。そんな大人のファッションを牽引し続ける流行の仕掛け人、前田さんが考える2011年のトレンドとは?今回はいつになく!?ちょっぴりマジメにファッションの話でお送りします。

大和 今回は前田さんが考える、2011年春夏のファッションを語っていただこうと。

大谷 あっ!でもあんまり喋っちゃうと、『LEON』本誌のタネあかしになってしまいますよね!

前田 まあ、話せる範囲で(笑)

大和 じゃあ、言ってもいいかな、というトコロまでで!

前田 漠然としているんだけど、今までのちょっと抑え気味だったモノをほんの少し開放する春になってほしいな、と。たとえば、シャツなら個人的には白いシャツが好きなんだけれども、そこにバリエーションがほしい。シャツ一枚でファッションを楽しめる5月以降でもここ数年は、ポロシャツ以外に選択肢がなかったように思うのね。

大和 たしかに、そうですよね。

前田 去年だったらチェックシャツやダンガリー、ウチなんかだと半袖シャツを仕掛けたり。けれどもそれ以外を考えると、色ぐらいしかバリエーションがなかったでしょ。みなさんは「え、他にあったっけ?」と言われると思うんだけれども、実はシャツってすごく多彩なバリエーションがあると思うんですね。小紋もあればストライプもあるし、花柄やレーンスプーナーのようなプリント柄だって楽しい。長袖はもちろんだけど、半袖や七部袖だってバリエーションだと思う。ポロシャツにしたってベーシックな半袖のそれは所詮形状であって、鹿の子と言う素材に着目すると、それできちんとしたシャツを作ったっていいわけでしょ。ラコステの“ビジポロ”みたいに。今年の春もファッションの軸になるジャケット&パンツのスタイルをいろんなシャツで楽しんでみてもいいんじゃないかなあ。

大和 なるほど!

前田 それとは反対に、柔らかくなり過ぎたものを少しカチッとしてみたいのも気分。ノータイでOKな場面でも、タイドアップしていたほうが格好いいとか。レオンで言うところの“楽ジャケ”も、着心地は楽なんだけれども、見た目までは楽ではないモノ、要はシャープな印象のものと言うか…。ともかく全体の印象としてここ数年ファッションは中庸なところに軸があるから、もう一度、中庸から枝葉を分け直すタイミングにきてるのかな~、と思う。

大和 なるほど。僕がバイイングしていて思うのは、“楽”は春夏まで引きずると思いますが、秋冬からはもう一度、きちんとサルトリアジャケットを着る、という流れは来るんじゃないかな、という気はしていますね。それは急にスーツに切り替わるという事ではなくて。前田さんの言う通りみんな楽に慣れてしまっているから、着心地は極めて楽なのに、ちゃんと見える洋服、というのが注目されてくるでしょうね。

前田 それと自分の中で、ずっとデニムが気になっていて。2010年の10月号では『波乗りデニムのこなし方』という特集をやったんだけれども、この春あたりから“インディゴ”が一つのキーワードになっていくような気がしてます。例えばそれは厳密にデニムでなくても、シャンブレーやインディゴ染めのコットンでもいい。なんかあの“デニム感”みたいなものがほしいんですね。金ボタンの紺ブレなんかもいいなあ。

大和 ベーシックなカラーといえばここ数年ずっとホワイト&グレーでしたからね。

前田 そうそう。

大和 ちょっとネイビーが恋しい感じはありますよね。

前田 デザインもそうだけれども凄くベーシックなのに、そこにデザイニッシュなモノを入れてみるとかね。来季のGUCCIをみてもスーツやジャケットは非常にしっかりとした作り方をしていて、男好きするデザインなんだけど、その中に着ているシャツは総柄のキザっぽいものだったり。いい意味でいやらしい、セクシーな感じが新しい。その感覚に近いよね。

大和 分かりますね。カーゴとかライダースジャケットといったスタイルに加えて、もう少し色気のある方向に振り戻しが来るんじゃなかなぁ、と。

前田 そうそう!色気ね。男っぽさも勿論大事だけど、色気は気になるところだよね。

大和 そうですね。

前田 しかもそれが‘70年代のグラマラスとも違う、もう少しスマートさを伴ったもの。

大和‘70年代のスタイルはビジュアル的には格好いいけれども、実際はめっちゃ疲れる(笑)

前田 だからリラックスとか楽チンであるということは絶対大事! どちらにせよいろんなスタイルが混在するシーズンであることは間違いないかもね。去年から引き続き“サファリ”はキーワードになり得るし、“軍モノ”も当たり前にあるし。でも、一貫して楽チンであること、みたいな。

大和 それはありますね。次の流れは春夏にちょっとずつ仕掛けて行って、秋冬で一気に来る、そんな気がしますね。

前田 大きく変わるのは次の秋冬あたりだね、現実的には。

大和 でもそうしてコツコツと仕掛けていくのが前田さんというか、今のレオン流ですよね。街を歩いていても、みんなこぞってカーゴを穿いているじゃないですか。これだけカーゴパンツを流行らせたのはスゴい! ある意味これもレオンが作り出したスタイルですよね。

前田 一生懸命作りました(笑)

大和 一年半くらい前から言い続けていましたよね。

前田 そうかも(笑)。ただ僕らは間違っても流行を作ってやろう、なんてことは思ってないですよ。自分たちも含めて読者のみなさんがきっと格好よくなれるものを、そう信じて提案しているだけ。ま、そんなことを続けていくことが雑誌の役割だと思うし、そうすることで信用も得られると思っているけど。

大和 ここにきて、来ましたよね。変な話、うちの店でもカーゴだったらどんなものを仕入れてもすぐ売れます。「インコテックス レッド」にしても「PT01」にしても。

前田 へぇ~、そうなんだ! どれもよくできているからね。

大和 そうなんですよね。

前田 でも、天の邪鬼な僕は今年はいかにカーゴパンツを履かないで今っぽくするか、という事を考えてます(笑)。だから替わりにデニムをよく穿くかな。上下ともにデニムとかね。それにジャケットを合わせてみたり。とにかく冒頭でも言ったように、今はジャケット&デニムのバリエーションにすごい興味があって、自分でも研究中です。

大和 リアルダンガリーが爆発的に売れることはないんですが、シャンブレー素材のウェスタンシャツはもう売れてます。

前田 そうなんだよね。冬物の場合は、素材感の相性がいいからね。

大和 ところでどこのデニムが面白いですか?

前田 どこのっていうのは、ないなぁ。むしろブランドを探している最中。ウチのクライアントさんのデニムは当然、ひと通り持っているし着回すけれど、今から20年くらい前に古着屋さんで買った、あの色落ちしたリーバイス501を手に取った時の感覚は忘れられないよね。当然、今あらためて古着のそのまんまを穿きたいってわけじゃないけれども「デニムってやっぱりオールマイティでいいなぁ」という気持ちにあらためてなりたい。

大和 それを彷彿とさせる新しいデニムって、本当にないですよね。でも前田さんが今日穿いているのはどこのものなんですか?

前田 これはディーゼルのストレッチスキニーの一番細いタイプ。

大和 パンツ全般にはなにか感じるものはありますか?

前田 う〜ん、もう少しシルエットをゆったりさせてみてもいいかな、とも思うな。ここ3年近くレオンでは裾幅18cmのテーパードをみなさんにはオススメしてきたんだけれども、それはそれとして新しいバリエーションとしてヒザ上ストレートも気になる。当然クッションもいままでハーフクッションだったのを少し深めのワンクッションにしてね。

大和 おっ、それは新しいかも。つまりジャケット&パンツの着こなし方に見た目の印象、それからそれに伴ったデニムの活用範囲、パンツのシルエットなんかもこの春から新しいものが出てきそうな予感、と! この春を境に、前田さんの服がアップデイトされていくのが楽しみです。

前田 ハイ、頑張ってみます(笑)。

ジャケットはB.R.Practical Style
パンツはBottega Veneta
靴はヒロシ・ツボウチ

モテる業界人の口説き方Vol.3
Jan 30, 2011

大和 二人の共通点として単純に見た目が格好いいというのはあるけれども、藤井さんに関しては、いままで経験してきた場数が全然違う(笑)

前田 ハハハハハハ(笑)

大和 前田さんは明らかに、ギャップでしょう。

藤井 男の俺らからみても、前田さん、守ってくれそうだもん。前田さんって男にもモテる。ほかの男性誌の編集部の人たちとも、ものすっごい仲が良いんですよね。

前田 特にアマンの展示会ではやたら会いますよね! 全然関係のない他社の雑誌のパーティに普通に入って行ったりするかなぁ。

大谷 それはなかなかできないですね。

藤井 とはいえ、基本メンズ誌のみなさんは仲いいですよね。

前田 知らない人がいても誰かと誰かが繋がっていて、仲良くなることが多いかなぁ。僕なんかストリート雑誌出身なので『LEON』に入った当初は何のネットワークもなかった。けれども、いったん知り合いができると知り合い同士、横へ横へと繋がっていく。そこで自分がどういう風に評価されているか分かるようになる。大勢の人を知っていることで自分の小ささも分かるし、やってきたことも分かるんですよね。

大谷 う~ん、それは懐が大きい人の発言ですね。

前田 年上の先輩方はスゴいですよ、ホントに。もっとずっと懐が広いですから。

藤井 ただお金を持っているだけではなく、あれだけ豪快に遊ぶには体力を使うでしょ!? そういうところにスゴさがある。「俺たちなんて全然まだまだじゃ~ん」って、がっかりする時がある(笑)

前田 身の程を知るのも案外大事だと思う。謙虚にもなれるし、負けていられないという気持ちにもなるし。だからよその雑誌の新人君とも仲良くしたいんですよね。その中で光るヤツって必ずいて、彼らのぎらぎらしたものを見ると自分も負けていられないって、闘志が湧いてくるんですね。僕らくらいの年齢がシケた車に乗って、シケた服を着て、冴えない顔をして歩いているより、やっぱり下の世代が憧れてくれるような存在でありたいですし。僕らの10個上の先輩たちは仕事ができることを前提に、きちんと遊びの時間を作っているもんね。

藤井 それは言えてる。

前田 時間の使い方が上手。仕事をしているたった数時間のうちに集中して大事なことの判断をしているんだろうなぁ、と。

藤井 時間の使い方もセンスですよね。遊びの中から生まれることもある。特に、洋服を買ってくださるエンドユーザーは決してファッションおたくばかりではないわけですから。

前田 そうそうそう。僕らはファッションに詳しくはあるけど、それをただ単に押し付けちゃまずいと思う。常にオケージョンを考えてこの時に○○だからこういう服がいいと提案するべき。ボリオリがヒットした理由も、ジャケットが男性の基本中の基本アイテムではあるけれども、それが堅苦しいだけではなく、リラックスして着られてかつ、きちんとして見えるところにあったはず。僕らも実際そう思ったし。それが合致すると爆発的なアイテムになるんですよね。

藤井 リアルクローズなんですよね、結局は。

前田 リアルクローズの中にどうやって夢を持たせるか、が大事ですね。この服を買った時に、新しい自分が想像できないと、投資する価値はないと判断されちゃうし。洋服なんて別になくていいわけですから。何のために洋服を買うかといえば、それは自分をアップデートしたり、次のデートや外出に備えたり、そもそも新しい自分を発見するためにあるんじゃないかなあ。どこかで出会うかもしれない運命の女性に「素敵!」と思ってもらいたいからかもしれないし。そうじゃないと面白くないでしょ。

藤井 オタクは嫌なんですよね。素直に格好いいほうがいいじゃん、って! 僕も前田さんと同じ古いポルシェに乗ってますけど、やっぱりクルマは乗ってナンボ。ただ眺めているだけじゃツマラナイでしょ。

前田 綺麗なポルシェが20万キロ走っていたら、超尊敬しますね!

藤井 最新は最新でいいけど、またベクトルが違うんですよね。

前田 古~いポルシェをいい状態で乗っていると「センスいいわ~!負けたわ。」思う。やっぱり使ってナンボ!だから洋服も女の子のデートのために揃えるし、そのためにアイロンをかけるし。もっというと可愛い女の子を見ると追いかけちゃうのが男の性だし、いいものを見たら欲しいって思うのが人間の性だと思う。そこに初めて遊びとか余裕が生まれて、そのために大枚を使うわけだから、楽しくなきゃ意味ないじゃん、て。そんなものをばかばかしいと思った瞬間にいろいろなことが止まると思っているので。自分の可能性に投資すると思ったら、無駄な事はなにも無いんだよね。そういうハートを持っていれば、決してオッサンにはならない。格好いいオヤジであり続けられるんじゃないのかな。

大和 実はね、藤井さんはいつも酔っぱらうと寝ちゃうんですよ。

大谷 デートでもですか?

前田 それはないでしょ!?

藤井 寝ちゃいます・・・・ね。

大和 でも結果、女性にモテてるから。これが愛されるキャラクターたる所以。遊び仲間としては最高ですね! あっ、仕事も最高だった(笑)

大谷 自然体ですね。藤井さんの女性に対する気の使い方も実に自然ですもんね。寝ちゃうのが許されるのも藤井さんのキャラ勝ちですね! でもそのゆるいスキ感が女子にとってはたまらないかもしれません。

前田 今日もかなり勝手にしゃべっちゃったけど、大丈夫かな、これ?

藤井 お酒も入っていたということで、受け流してくださいね(笑)

藤井尚志さん
(株)アマン執行役員/営業本部 本部長
『LEON』本誌でもお馴染みのイタリアブランド「BOGLIOLI」「FAKTOR」「Finamore」「Notify」の正規エージェントである(株)アマンの敏腕営業マンとして業界では有名な存在。夜の街に詳しいことから「夜遊び番長」の異名も!?

モテる業界人の口説き方Vol.2
Dec 31, 2010

藤井 ガツガツと言えば、中国版『LEON』見ましたよ。

前田 中国でも『LEON』が売れるってことは、相当彼らもガツガツしているよね。向こうの編集者にも女の子が何人かいて話をして分かったのが、逆にあんまりにも男性がガツガツしているから洗練された感じっていうのに憧れているみたいなのね。

藤井 それは、わかりますよね。

前田 日本では中途半端に紳士面するより、逆にガツガツしている人のほうが楽しい人って思われる傾向があるけれども、向こうの場合はほぼ全員がガツガツしているから、日本人のちょっと洗練された感じにとっても憧れているみたいです。僕なんかジャケットにパンツという姿でいるだけで、「何のお仕事をされているんですか?」と声をかけられるし。すごくスマートな男性として見られるんだよね。

大谷 じゃあ、日本人男性は中国でモテモテですね。

前田 モテると思うよ。それなりの男性が行ったら。

藤井 こんなに男女差別が激しい国がまだあるのかと、面をくらうくらいガツガツしてますね。

前田 イタリア人やフランス人ってガツガツの裏にエレガンスがあるでしょう? レディファーストの文化はその典型。50代でも現役で遊んでいるファッション業界の先輩たちもそうで、下品な話はするんだけれども、キチンと女性に対するケアができるんだよね。「やらせろよ~」とか笑い飛ばしていても、ちゃんとケアができている。今の若い男の子でガツガツしている子はいるとしても、そこで終わりなのかも。「まだ俺、25歳なんスけど、100人とヤリましたよ」というヤツがいても、そこにエレガンスはないでしょ。女の子に対する些細な優しさとか、気遣いは僕たちの世代にはまだあると思うし、もしかしたらこの歳になってようやく身についてきたのかもしれない。いい歳してワイルド一辺倒ではモテないよね。女性の心の機微を察して、場所を変えたり、優しい言葉をかけたりしないとモテないんじゃないのかなぁ。

大谷 さっき藤井さんと、前田さんは声が魅力的だねって言っていたんです。外見はワイルドだけれども声にインテリジェンスが垣間見えるから、結果そのギャップで前田さんはモテるんじゃないかと。

前田 そんな、藤井先生にほめていただいて。照れます(笑)

藤井 いや、それは男から見ても魅力的ですよ。それが前田さんの場合、自然体でしょ?計算しているわけではなくて。僕らの世代で背伸びしすぎるほど格好悪いことはない。

前田 もう背伸びはできないですよ。自分が積み上げてきたものを見せるしかないです。

大谷 業界の方はやっぱりガツガツ系の方が多い?

藤井 僕が知っている限りみんな野獣ですね! でも、僕らより上の世代にしてみたら、40代の連中なんてちっちゃいな、って思ってますよ。50代のアパレル系の人たちはもっとガツガツしているから。

前田 だからその人たちのファッションも面白かったんじゃない?爽やかだし、遊び方が粋。男に対しても爽やかだし、女遊びに対しても相当、爽やか。とはいえ男と女だからドロドロした部分はあるんだけれども、ガハハと笑い飛ばしちゃうような豪快さがある。やっぱりどこか突き抜けてるぐらいじゃないと、男は面白くないな~、と思う。

大谷 女性との飲み会での藤井さんの勝負服ってありますか?

藤井 年齢によりますね。20代の女性がいる飲み会だったら革ジャンを着ていくだろうし。

前田 あえてスーツというのは?

藤井 それも、アリですね。スーツは悪くないんじゃないですか?

前田 鉄板と言えば鉄板。

藤井 変に凝ったスーツではなくて、トラディショナルなスーツをきっちり着れば決して悪い印象は与えないですからね。

前田 うん、うん。

大和 僕の場合、相手が20代の場合は多少の若作りは意識しますよね。

藤井 革ジャンって男のワードローブには必ずあるものですよね、昔から。

大谷 前田さんは革ジャンイメージが強いですね。

前田 バイクに乗るからね。だからこそ逆にどういう場であれ、僕は絶対にレザーは着ていかないかな。

藤井 逆にデイリーすぎちゃうんですね。

前田 お客さんとの会食も含めて、大半はスーツ。印象も変わるし。いかにいつもの自分と違うイメージで行くかを考える。

大和 なるほど。僕は女の子が引き立つように心がけますね。自分が目立ちすぎないように、派手な女の子だったら遊んだ格好はできるけれども、それほど華がない女の子だったら、自分がスタイリッシュすぎないように工夫はしますね。

藤井 この業界にいると知人の結婚式に白いスーツを着ちゃう人とかもいますよね。夏になると上はタキシード、下はショートパンツといった、ちぐはぐな格好で来る人もいるわけですよ。お洒落大会じゃないんだからって(笑)

前田 いるいる! 業界だと特に多い。残念ですよね。

藤井 オケージョンなんだからブラックタイかタキシードでこようよっ、て。

前田 考えすぎちゃってね! 案外多いですよね、その手の人(笑)。

大谷 それは確実にモテないですね。

前田 それを啓蒙しているファッション誌もダメだよね。

藤井 ファッション業界の結婚式ほどオケージョンがばらばらに崩れるわけですよ。ほかの業界の女の子からみたら、ただの変なひと。完全にモテないわけですよ。やり過ぎちゃっている人は多い。デニムに上だけタキシードを着ちゃう人とか。ハリウッドのセレブじゃあるまいしね(笑)

前田 カジュアルパーティの名目で、上はタキシード、下は真紺のデニムを穿いていたら、「あっ、この人分かっているな」となるけれど、ドレスコードがブラックタイのときにデニムを穿いてきたら、それは完全に間違いですよね。業界の人たちもそうだし、若い子でも多いんじゃないかな、そういう勘違いお洒落さんって。女性との食事で席につくやいなやジャケットを脱ぎだすヤツとかもいる。でもそういうことがNGだと分かってくる女性が増えると、ますます僕ら40代のほうがモテるだろうね。

藤井 絶対そうですよね。

前田 女性誌はちゃんとわかっていて、そういうT.P.Oの特集があったりするでしょ。一方で男性誌ではそういうマニュアル的な特集がなくなってきているから、どう振る舞っていいか分からないんじゃないかな。

大谷 そうしてもう同じ年の男性とは付き合えなくなるんですよ。

藤井 なるほどね。

モテる業界人の口説き方Vol.1
Dec 29, 2010

今回は『LEON』本誌でお馴染みのブランド、「BOGLIOLI」「FAKTOR」「Finamore」「Notify」等の正規エージェントである(株)アマン営業本部長、藤井尚志氏に参加していただきました。仕事がデキる、そしてモテる!ことでファッション業界でも有名な二人が集結したとあって、今宵のモテトークはどんな展開になることやら・・・・。


藤井 今の若い男の子を見ていて思うんだけれども、全然アグレッシブではないじゃない?見た目は若くてきれいだけれど。

前田 僕も全く同じ意見。女の子のほうがアグレッシブかも。

藤井 女の子に聞くと、彼氏や男友達と食事に行くと、割り勘が普通っていうんですよ。

大和 そう、そうみたい。ちょっと僕らの世代じゃ考えられないことだけど。

藤井 僕らの世代ってそこは格好つけなきゃダメでしょ、という共通の認識があったけれども、今は違うみたいだね。でも、デートに誘ってOKしてもらって「じゃあ、割り勘ねっ」なんて、やっぱり言えない(笑)

大和 女の子も、昔はそれが普通だと思っていたはずなんですけどね。

藤井 僕らが若いころって、周りに対して気遣いはできなかったとしても、引っぱることはできた。「俺についてこい」みたいな。僕らの若い頃ってそういうワイルドな時代だったじゃないですか。でも今どきの男の子ってナンパもしないらしいし、かといって気遣いがあるかと言えばそうでもないし。

大和 話を聞くと、できれば女性から誘ってほしいと、本気で思っているらしいですよ。

藤井 今の若い女性たちがある意味、気の毒ですね。僕らオヤジ世代のほうがよっぽどアグレッシブだったりするじゃないですか。

大谷 そう。だから年上好きの女の子が増えているんですよね。

藤井 仕事にしても、女性を口説くにしても、工夫やオリジナリティって必要でしょ。僕は営業をやっているから、ナンパは商売でバイヤーを口説くのと一緒です(笑)

大和 全く一緒ですよね。ナンパが下手な人は、ものが売れない(笑)

藤井 口下手な営業は仕事ができないですよね。

大和 そこが職人職と違うところですよね。

前田 でも僕はナンパは苦手です(笑)。人と話すのはすごく好きなんですけどね。多分ね、サービス業や営業職向きではないと自分で思っているのね。すごい恥ずかしがり屋だし。

藤井 前田さんのいいところは、例えばどんな忙しいタイミングでお会いしても、常に一生懸命に受け答えしてくれるところ。物事について真剣に向き合っている感じがする。

大和 いい加減にするってことはないですね、確かに。

前田 またも仕事の話になっちゃったね(笑)で、今回のテーマは?

大和 今回は「業界のモテる男が語る、女性の口説き方」でいかがでしょう?

前田 すごいね、そのタイトル(笑)

大谷 今回はプライベートな話まで聞かせていただきたく。藤井さんは業界でもモテる男として有名だそうで。

藤井 いや、モテるというか、失敗を恐れて成功はない、ということでしょうか(笑)

前田 ははは!俺と相当、性格が違うと思うよ~。

藤井 前田さんは逆に女性のほうから寄ってくるんじゃないですか?

前田 いやいや、仕事モードではいろんなことに対して割と敏感で、ちょっとしたニュアンスの違いにも気が付くのに、女の子からのアプローチには全くもって鈍感です(笑)

大谷 ファッション業界はいい意味でガツガツしている人も多いと聞いたのですが、本当ですか?

前田 そうね。この業界、多いね!

大谷 ということは藤井さんももちろん、ガツガツ系ですね(笑)

藤井 僕が若い頃なんか10回フラれても11回目はアリかな?と思っていましたね。

大和 僕もそうですね。

藤井 最近では、例えば一緒にご飯にいくことだったり、その先のことだったり、目標がありますよね? 僕の場合は自分の目標に対してどうYESという言葉をもらおうかと考える。それで、断れない状況に周りから固めて「こうなるのが自然でしょ?」という方向に持って行っちゃう。

大和 なるほど!(笑)

大谷 でもそれは、女の子が自分に好意があるって分かっているからですよね?

藤井 そういうところは僕わりとポジティブですね。食事に行く時点でそんなに嫌がられていないと思っているので、あとはいかに楽しんでもらうか。場所を変えたときのバーの椅子も重要ですね(笑)

前田 椅子ね!『LEON』でもやったな~それ。

藤田 シチュエーションづくりが大事。

大和 男と女が親密な関係になりやすい椅子ってありますよね、やっぱり。

藤井 そういう雰囲気になれるところってありますよね。煌々と明るい場所は、本気で口説くにはやっぱり不適切ですね。

前田 あと、あまりにもオープンすぎたりとか。

藤井 隣の人との距離感も大事ですね。それに、あまり奇をてらった演出はしないですね。いちばん最初のデートに行くときは居酒屋は確実にないですね。

大谷 カジュアルなトラットリアもないですか?

藤井 ないですね~。むしろ和食屋さんはアリかな。ゆっくり話ができるので。いい割烹や小料理屋さんだと、大将と話さなきゃという雰囲気になるので避けますね。

大谷 藤井さんが思う、デートにベストな店とは?

藤井 ちょっと外側の喧騒が見えるような、個室があるところですかね。もしくはお客さんとお客さんとの間隔がゆったりとられている席があるお店がいいかなぁ。
具体的なお店はオフレコです(笑)。いちばん恥ずかしいのが、頑張って考えて「ここは気に入るだろう」と思って予約した店が、逆に女性のほうが常連だったりするとき(笑)。

前田 それは危険だね。『LEON』ではそういうことも考慮に入れて“家飲みがいいんです”とか、“あえての○○で、ハズした場所を選びましょう”という提案をしてます。でも藤井さん、店とか詳しそうですよね。

藤井 結局は自分がデイリーに使っている居酒屋なんかに一緒に行けるコが最終的にはいちばんいいですよね。

大谷 最後にはそういうところに連れて行くんですね。それは何回目くらいですか?

藤井 三回目かな。

前田 お~(笑)

藤井 和食の美味しいところ、二回目はイタリアンでインテリアもちょっと洒落たところ、その次はいきなり炉端焼き、みたいな。

大谷 急展開だ(笑)

藤井 串揚げ屋とか。

大和 でも僕ら世代になってくると、この業界の人って殆ど遊ばないですよね。

藤井 そうですね。

大和 だから、夜遊びっていうと藤井さんと一緒にいることが多い(笑)。

藤井 なんでしょうね。みんなあんまり外に出たがらない。僕らより上の50代の人はバンバン遊んでいるんだけれど、なぜか40代や30代の人は遊ばないんですよ。

前田 結婚して落ち着いちゃうのかなぁ。

大和 だから、気づけば藤井さんとばっかり遊んでる(笑)

前田 ハハハハ(笑)会社で責任のあるポジションにいるから、遊べないタイミングに差し掛かるのが30代後半から40代前半なのかもしれないね。ビジネスの場としていろいろなお店は知っていても女の子を口説くためのお店のバリエーションはどんどん減っちゃう、みたいな。

藤井 僕はむしろもっと若い子に遊んでほしいですね。せっかくファション業界にいて人よりちょっとトッポいものを着ているのに、家と会社の往復だけで、たまに居酒屋に行くだけだったら「必要ないじゃん!?」って思う。

前田 単に合コンをして、カラオケ行って終わるんじゃなくて、違うフィールドへの遊びに連れ出そうとするような、バイタリティある遊び方がいいよね。もしかしたらクルマなのかもしれないし、ゴルフかもしれないし、アウトドアかもしれない。でも、さっきから話題になっている今の若い男の子の状況って、女の子側にも問題があるんじゃないかな? 例えば上昇志向をもって頑張っているオトコよりも、ちょっと達観しちゃっているようなオトコが格好良く見えちゃったり。で、結果、そういうオトコは夢しか語れないから、たいていは短いつきあいで終わっちゃう。デキ婚で即離婚、っていうパターンが多いのもそんな世代観を反映しているように見えるな。僕らが若い頃ってクルマがないと絶対に女の子は口説けなかったし、受け入れてもらえなかったでしょ。だからクルマを買うためにバイトもしたし、いいレストランに連れて行ってあげたいから、雑誌を読んで勉強もした。でもね、それは無駄なことじゃなかったと思う。

藤井 たしかに。

前田 その車も「何、乗ってるの」?と聞かれて答えたときに「へ~!乗りたい!」と思わせるクルマじゃなきゃダメだったしね。話も面白くなきゃいけなかったし、夜景が綺麗に見えるレストランを知っていなければいけなかった。たとえばクラブとかで遊んだあと、そこから抜け出してどうするか、考えたもん。今の若い子だったら変な話、表参道で仲良くなったら、そのまま渋谷のラブホテルに直行というパターンもあったりして? でも、小さな行動範囲やコミュニティの中で遊びが成立してしまっていることがつまらないじゃない? 結果的にその男と別れた後、それこそ藤井さんなんかが現れたら、「なんてこの人、面白いんだろう」って感じると思うのね。

大谷 だから今の若い子たちに、大人の男性がモテてる秘密は、そこにありますよね。

藤井 僕らの歳ってギリギリ、バブルを体験してきた世代なんですよね。クラブもあったしディスコもあったし。クラブで酒を買おうと並んでいると、年上の人が「お前、何飲むの?おごってやるよ」って、見ず知らずの人が奢ってくれるような時代だった。だからそれを知っている僕なんかは今でも後輩に奢るのは当たり前だし、女性に支払いはさせない。でも今の若い男たちはそれをスタンダードだとは思っていないんだよね。悪気があって割り勘にしてるわけじゃないとおもうんですよ。

前田 それは実際のデートのシーンでもあるわけ?

大谷 「気持ちだけ受け取るね」という子は実際多いですよ。

前田 やっぱり、そうなんだ! そうなるとやっぱり“オヤジ”のほうがモテるだろうね。


モテる男の見た目Vol.2
Dec 01, 2010

野口 男性のお客様がきて、「どうされますか?」と訊いたときに「お任せします」といわれることがあるのですが、そのときに「では、どういう女性が好きですか?」と訊くんですね。

前田 へ~~!!

野口 「どういう女性にモテたいですか?」と。その女性像から逆に導き出して、こういう女性だったら、こんな男性が好きというのを説明して「確かに!」と納得していただいてからカットを始めるんです。そうすると「自分がこんな風に変わるなんて!」と言ってくださる方もいらっしゃいます。

大和 前田さんだったらなんて答えますか?

前田 う~~ん、俺!?全部の人・・・・かな?ハハハハハ、それは冗談(照笑)。でもそれを訊かれるといちばん困るんだよね(笑)

野口 あえて言うと?

前田 外見での選り好みはないからなぁ。あえていうなら、シュっとしている人が好き、かなぁ。歩き方や立ち姿で背筋がシャンと伸びている人。何かに頼っているような人は好きではないかも知れない。

野口 前田さんをはじめ、世の男性はみんな、モテたい願望があるんでしょうか?

前田・大和 それは絶対、誰しもがモテたいと思っているでしょう!

前田 野口さんの好みのタイプは?

野口 私ですか?

大和 前田さんがストライクということは分かった(笑)

野口 フフフフ(笑)肉厚な人が好きですね。筋肉質でも、ぽよんとしていてもいいんです。抱き着心地が良いひとがいいですね。頼れる感じがしません?守られたい、みたいな(笑)顔の好みはもうなくなりました。

前田 女の人ってそう言うよね。

野口 最初、「嫌だ~」と思っていても、性格を知るとカッコよく見えてきたり。あまりにも男性側に自分のスタイルがあり過ぎてスキがないと、女性からいけなくなっちゃいます。

前田 野口さんって話すほど、一見さらっとしているけど、繊細な面も持っているよね。サバサバしているのに、ときに頼りどころがほしくなったり、しない?

野口 そうですね!立ち止まった時に傍にいないと寂しい。仕事モードのスイッチが入っているときは「近寄らないで」という感じなのに、ふとしたときに「ちょっとこっちに来て、甘えさせて」みたいな。ワガママなのかもしれません。

前田 男にすると一番大変だ、それ(笑)でも年上の人が好きという女性に案外多いかもね。同世代だと、よほどキチンとした男の子じゃないと、必要とされている時にちゃんと支えてあげられないかもしれない。そして必要ではなくなったときに、スッと引ける人でないとダメだよね。

野口 そうなんです。

前田 20代、30代、40代と、それぞれの年齢での限界はある。20代の女性が求める限界に対しては40代のほうがより余裕がある。もしかすると50代になると逆に余裕があり過ぎて、フィットしなかったり。40代半ばが持つ独特の空気、余裕感がフィットするから、大人好きの20代女性は多いのかなと。ふと思ったのね。

野口 その何かがモテる秘訣なんでしょうね。

前田 “モテる”っていうのも難しいよね。「もう一度会いたい」「素敵な人ね」と思わせる人がモテるのか。それこそ「何人も女を抱いたぜ」みたいな人が本当にモテているのか。自分が『モテる○○○』を謳った雑誌を作っていて、案外長く続けていられるのは、モテるって言葉の意味は本当に沢山あるから。「この人を離したくない」「一回だけでいいからこの人とデートしてみたい」も“モテる”だと思うし。

野口 本当にモテる男は、「また会いたい」と女性に思わせる男じゃないでしょうか。女性からもう一回会いに行ったときに相手の反応や感じを見たい。向こうからガツガツ来られちゃうと、自分に興味があるのがミエミエなので、こちらが会いたいと言わなくても来てくれるから、放っておいてもいいやみたいな(笑)

前田 なるほどね。能動的に攻めていくのも、結果、モテるのだけれど、女性から見たときに漠然とモテる男の例を挙げろと言われたら、次にもう一度会いたくなる男なんだ。

野口 思わず「自分から誘ってみちゃおうかな」みたいな(笑)

前田 すごい、それ超モテるだね。

大和 深いですね。

前田 深いね。俺ちょっと今、ドキっとしちゃった(笑)

野口 フフフフフフ(笑)

大和 僕なんて完全に「あいつから誘ってくるからいいだろ」と思われるタイプ(笑)

前田 でも、それはさ、結果的にモテればいいじゃない?俺なんか仮に想ってもらったとして「でも、前田さん忙しいから、いいや」と思われてたりしたら、もうそれっきりってタイプかも。結果、モテてる実感もない、と。

野口 そうですよね。自分の中での“モテた感”はないですよね。なので、そこに忙しいからダメだと思わせないで、女性から誘ったら応えてくれそうな隙を作っていただかないと、だめなんです。

前田 なるほどね。俺、隙だらけ(笑)

野口 隙だらけって!前田さんはそう見えないですけれども(笑)でも実際、ガンガンくる男性も本気度が伝わるから嬉しいし、それを見ていて「一途に女性を思えるって素敵だな」ってモテるというパターンもあると思います。その男性本人に“モテてる感”は伝わらないんですが。“モテてる感”を男性自身が浴びたいんだったら、女性から「次また会いたいな~」「付き合いたいな~」と誘えるように隙を与えている男性のほうが、男性自身もモテてる感じは味わえますよね。

前田 なるほど!それは考えたことがなかった。

大和 女性に誘われるっていうのも喜びだよね。

野口 忙しい人ほど、ちょっと勇気を出して誘ってみたら「合間をぬって会ってくれた」という感じがして嬉しい。こっちもドキドキして、本気の好きではなかったとしても「私、頑張っちゃおうかな」という気分になってしまうかも。女度をアゲてくれる気がします。

大和 なんか今の時代にあってますね、そのモテかた。

前田 ね、余裕がある。今の『LEON』の目指すところだよね。

野口 余裕のある男性はモテますよね。

前田 そうなんだよね。男もシャンとしていて、そのシャンとした時間の中に自分が入っているということが、女性にとってひとつの優越感だったり、満足だったりするだろうし。いい話するねぇ。

野口 ちょうどいま彼がいないので、妄想モードだったらいくらでも入れます(笑)はぁ、今日は緊張しっぱなしでした!でも面白かったです、このテーマ。

前田 こちらこそ勉強になりました!しかし案外奥深いね、モテるって。

ゲスト・野口由香さん(27歳)

表参道にあるヘアサロン『imaii』でスタイリストとして活躍。お客さんの7割が男性だそう。その人に似合うヘアスタイルを的確に見抜く確かな腕に長年通うファンも多数。今回のブログを読んで「雰囲気をちょっと変えてみようかな」と思った男性は野口さんのもとへぜひ!!日々のライフスタイルを綴ったブログ『NOGU日記』http://ameblo.jp/yukanogup/も必見です!

<野口さん所属のサロン>
『imaii scaena×colore 』
渋谷区神宮前4-28-21 ハーモニー原宿ビル2F
Tel:03-5411-2345
火休
平日・土 10:00~21:00
日・祝 10:00~19:00

*当サイトの税込価格表示は、掲載時の消費税率に応じた価格で記載しております。
お間違えになりませんようご注意ください。