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前田 陽一郎
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前田 陽一郎

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前田 陽一郎

雑誌「LEON」副編集長

ここではレオンを日々作っていて思うこと、もしくは掲載できなかったけど個人的に買ったものや、興味をもったこと、レオンをさらに楽しんでいただくための裏読みの方法(ここが一番読んでもらえそう!)また至極個人的趣味までを、ブログというより、コラムとして書いてみようかな、と。 (ネタには困らないと思うのですが、元来の筆不精、というより無精者なので、どれほど続くかは不明ですが…、お付き合いくださいませ)

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LEON
ファッション専門誌でもクルマ専門誌でも時計専門誌でもありません。いつまでも艶っぽさを失わない「モテるオヤジ」のためのクオリティ・ライフ実用誌です。

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モテる男の見た目Vol.1
Nov 19, 2010

今回はヘアサロン「imaii scaena×colore」 所属の美しすぎるスタイリスト・野口由香さんにご登場いただき、おなじみ『LEON』編集長代理の前田氏とモテる男の見た目について語っていただきました。一同、納得の女性目線ならではのモテワザも披露!?ヘアスタイルに悩む男性の方々や、女性がワカラナイと頭を抱える男性の方々・・・・今回のモテトークは必見です!


野口 今日はよろしくお願いします。

大和 今日は外見を中心にしたモテトークということで。

前田 野口さんの職業がヘアメイクということで!

大谷 しかも彼女、実は年上の男性好きらしいんです。

前田 そうなの?へ~~!幾つぐらいまでOKなの?

野口 45歳くらいまでは。尊敬する先輩であるヘアメイクの方で前田さんを知っている人がいて「前田さん、すっごい素敵だよ~」という前情報をもらっていたので、今日はお目にかかる前からドキドキしっぱなしでした(笑)前田さんは声が素敵ですよね。

前田 そうかなぁ。照れます(笑)

野口 語尾にグッとくるみたいな。最初から声にやられちゃいました(笑)

大和 女性って、声フェチ多いよね。

前田 って言われるよね。でも、例えば僕もそうだけど、言われて気づくこともいっぱいあって。実は何度か「色気のある声ですね」って言われたことがあるんだけど、確かに自分でもそれは意識していて、以前にも「モテるオヤジは話す言葉がアンダンテ」という企画を立てていて。アンダンテ、つまり“ゆっくりとしたテンポで話しましょう、それがモテる秘訣です”っていうページを作ったりしました(笑)その原稿を自分で書いていて、「あ~、これはモテるな!」って自己満足に浸ったことはあります(笑)

野口 女性はうっとりしちゃいますね。

前田 ただそれだといつもカッコつけている人みたいだから、普段にないリズムをフッと与えることでモテるんじゃないの?という半ば妄想の話だったのだけれども。

野口 上手なところ、ついてますね~。

前田 うなずき方も、ゆっくりゆっくりとうなずいてあげて。

野口 でも声を伝えるのって難しいですよね。「こんな声がモテますよ」ってCDを雑誌の付録につけるわけにもいかないし(笑)

前田 アハハハハハ。そうだよね。

大和 じゃあそろそろ本題へ。ヘアメイク野口さんが語る最低限の身だしなみ、とは?

野口 サロンではカットを担当しているので、真っ先に目が行くのが髪型なんです。どんなに洋服や持っているものがカッコ良くても、「髪が伸びてるな~」と感じるとマイナスですね。

前田 俺じゃん、それ(笑)

野口 でも前田さんのように伸び掛けが逆にアンニュイで、それが色気に繋がっている方もいます。例えば2~3週に一回のペースでカットに行っていて、一寸の狂いもないですというキメキメオーラは女子として「この人、近寄りがたいな~」と思う時も。「几帳面な性格なのかな~」とか「潔癖症なのかな」と穿ってみたり。

大和 じゃあ程よい抜け感をだすのには、どういうところが重要なの?

野口 スタイリング量でしょうか。いま若い子はウェットな質感が綺麗とされています。形が明確なスタイルよりも、アンニュイをセットでつくる、という感じのほうが色気があるといわれています。いわゆる草食系男子は前髪が長かったり、どこか顔を隠したがるコが多いんですよね。

前田 そうだよね。

野口 でもやっぱり肉食男子、オヤジ好きな女子としては前髪をきちんと上げていて欲しい!いちばんいいのは短髪でスッキリ。遊び心があって、動きがあるヘアスタイル。それでいて天然パーマだったりすると“萌え~”ですね。
前田・大和 ハハハハハ、なるほどね!

野口 天パーを嫌がってストレートパーマをかけちゃう人は駄目ですね。

前田 あっ、俺、天パーだ!襟あしとか、すごいハネるもん。

野口 なにも天然パーマをコンプレックスに感じる必要はなく、逆に生かせばいいのに、って思っている女子は結構多いですよ。

前田 へ~、そうなんだ。

野口 ストレートパーマをかけている男子は何故か受け付けないんですね、私は。それは自分の持っているものを生かそうとしているのではなく、隠そうとしているから。それ自体が女々しく思えて。どんな髪質でも、どんな髪型でも、その人の素材を生かしている人が好き。

大和 体型でいうと、細い人も太っているひともいるけれども、全てさらけ出しちゃったほうがカッコいいってことだね。

野口 そうですね。コンプレックスを生かす方向に努力を注いでいる人はやっぱり素敵だな~。魅力的ですね。

前田 それって、何に関しても言えるかもね。ありのままの自分を好きになってくれというのはおこがましいけれども、努力の矛先が隠す方向ではなく、自分のいいところを伸ばすって考えたほうが、きっとあらゆる事においてプラスに見えるよね。事前にヘアメイクの人がゲストと聞いていたら俺、帽子被ってこなかったのに(笑)朝5時に家を出てきて、風呂に入って乾かしてそのまま出てきたんだけど、帽子がいちばんいいんだよね。最高に誤魔化せるもん。

野口 いつも前田さんはどうやってスタイリングしているんですか?

前田 ジョンマスターオーガニックのウェットジェルだけをつけて、ぐしゃぐしゃってやって終わり。髪型に気を使わなくなった理由がオートバイなのね。普段の足として10代のの頃からずっとオートバイで動いていて。そうすると常にヘルメットでしょう?どうやって形を作ろうと、会社に着くころにはペッタンコ。なんで、ウェットジェルだけ付けておくと手もベタベタしないし、会社についてからワッと一度上げて、くしゃくしゃっとすれば、なんとなく髪型として成立しちゃうから。

野口 私、オートバイに乗る男性は短髪であれ、と思うんです。分け目が付いちゃって、どんなに濡らしても戻らないし。

大和 僕もそれでオートバイ乗らなくなったんですよ。ヘルメットをとったときの情けなさといったら。

前田 それ、ちょっと分かるなぁ。ケアに関してはすごい適当かな。恥ずかしながら(笑)ダメなんだよね~。自分でも反省するんだけど、肌のケアもちゃんとすべきだと思う。歳をとるところはとっていいのだけれども、何もしないでただ枯れていくより、努力をして味を出していったほうがよっぽどいいじゃん?

野口 男性として、深みが出ますよね~。

前田 洋服を買ったり、食事をするのと同じくらいに、実は大切な事なんじゃないかなぁ、と。女性は幾つになってもメイクをするわけじゃない?常に鏡を見て自分と向き合うわけで。じゃあ、男がその努力を何もしなくていいという理由はなくて。最近はそういうふうに自分を律しなきゃ、と思っています。

野口 海好きの方とかよく日焼けをされますよね?男性もシミ・シワ・毛穴の開きが一番気になると思うんですが、シミとシワってある程度歳を重ねるごとに深みとして出るからいいのですが、毛穴の開きってどうしても凹凸感がでるので、そこがいちばん気になるんです。これは特に許せないんですね(笑)

前田 へ~、なるほどね!

野口 きちんと保湿ケアをしている方は毛穴の開きだけは押さえられるので。

大和 なるほど。

野口 シミ、シワが気になっても毛穴の開きがなかったら、「カッコいいな~」ってなりますね。

前田 へ~。こわいね!

野口 女子たちは見抜いてます(笑)それがまさかの黒ズミだったらショックですよね!

前田 うちの編集部員たちもすごくケアしているよ。香水なんかもちゃんと考えてつけているし。僕なんか仕事先の美容部員の人に怒られたことあるもん(笑)

野口 いまサロンでダーマロジカというエステ用の商材を扱っているのですが、男性にも向いていて、30代~40代のお客様の誕生日プレゼントで差し上げたりしています。スプレータイプの化粧水なので、顔を覆うようにして塗るという所作に抵抗や恥ずかしさをもつ男性でも使い易いんです。顔を簡単にタオルドライして、スプレーをシュッシュとするだけ。使うと使わないのとでは大違いですよ~。

前田 だって俺、ヒゲも剃るのが面倒臭くて生やしちゃっている(笑)

大和 そんな感じですよね。似合っているからわざとっぽいんだけど、前田さんの性格的には(笑)

前田 たまに剃ると、ツルッツルなんだよね。逆に気持ち悪いもん(笑)もともとシワができにくい家系なのね。なので子供っぽく見られるのが嫌で、30歳をこえたあたりからヒゲを生やし始めたのだけれど、いったん生やすと剃るのが面倒くさくて(笑)2ミリぐらいまでいったん剃っちゃうと、5ミリくらいになるまでそのまま。今は結構伸びているほうですね。そろそろ、ツルンとしようかなぁ。

野口 まばらにならずに、それだけきちんと生える方もあまりいらっしゃらないですよね。

前田 シェーバーの長さを2ミリに設定して、頬のあたりとアゴ下はすべて綺麗に剃ります。楽して、いちばん陰影がつけられる。一応は考えていますよ(笑)

野口 上手いですね~。ヒゲと眉ともみあげは男性誌でも特集を組まれますからね。眉毛がいちばん印象かわるので、最近では眉カットを希望される男性も多いですね。

前田 僕も変わるかな?

野口 だいぶ変わると思いますよ。

前田 洋服も髪型も含めて、自分がやったことがない事にトライしてみるっていうのは、大事だよね。「いや、眉カットなんていいよ」と言っていないでやってみる、とか。「パーマなんて、恥ずかしい」と言っていないで、とりあえずやってみる。ケアとトライをきちんと出来れば、洋服をどんどん変えていくのと同じように、もっと楽しめるんじゃないかな。案外日本人の男性って、自分に似合う髪型を自分自身で決めつけてしまっている傾向はあるよね。もっと柔軟に色々な髪型にトライすればいいのに、って。これは自分も含めて本当に思う。

前田氏の帽子ぐせをサッと直す野口さん。さすがは技術に定評があるだけあって、ほんのちょっと触っただけで劇的に印象が変わり「お~!」と、一同口をそろえるほど。

スタイリング完了!前田氏も満足げな様子でのツーショットをパチリ。二人ともキマってます!

モテる男とは?第2弾 Vol.2
Oct 27, 2010

大谷 和葉さんは50代の人とも付き合った経験があるとか。どんなところに連れて行ってもらったりしてたの?

近藤 その人はシンガポールに住んでいたんですけど、とあるバーに連れて行ってもらったとき、常連にしかださない飲み物を出してもらったんです。秘密の飲み物を二人で飲んだ時は楽しかった。付き合うか付き合わないかのときでしたね。

大和 微妙な時って、なんであんなに楽しいんだろうね。

西形 なにか自分のことを覚えていてくれたうえでの誘いはうれしいですね。

近藤 あと、誰にでもしているわけじゃない、とわかる誘い方は心に残ります。結局女の子ってみんな繋がっているから「この人から誘われたんだ~」って友達に打ち明けると、「えっ!?私も!」なんてことがあります。だから男性はそんなところも気にされたほうがいいかも(笑)。わたしはみんなに話すようにしてますね(笑)。

前田 う〜ん、女性を誘うってやっぱり難しいなあ。男性も女性もそうだけれど、最初の一歩って勇気がいることじゃない?難しいのが、僕なんか『LEON』をやっているイメージが先行していて、色々な遊び場所を知っていて、どんな楽しいことが待っているんだろう、と相手に過剰に期待されているんじゃないかと思っちゃう。そうでない男性でも年上である以上、歳の差のぶんだけ積み上げてきた何かを試されるんじゃないかと気構えてしまう人は多いんじゃないかな。それで上手く誘えない人も相当数いるはず。

近藤 あ、それわかるかも。私なんかは一人で遊びに出歩くのが好きなんで、過剰に期待はしないんですけど。けれども、「こんなサプライズがあったか!」とひとクセあるような場所を知っている人は惹かれたりしますね。でも美味しいという感覚を共感できればその場は楽しくなるんですよね。

前田 じゃあ、とにかく好みがあればその好みを察してくれるととっても嬉しいし、そういうのがなくても楽しい会話があったり、この人といると楽しいと思わせる何かがあれば何処に連れて行くとかはいちばん重要なポイントではない?

近藤 食べ物の趣味が合わないと厳しいですね。

前田 思い切って自分が美味しいと思うところに連れて行って、それが合わないんだったら仕方ない、ということでいいのかな?

近藤 むしろ美味しいものを食べられたら何でもいいんです。美味しい定食屋さんでもいいんです。特に期待はしていないかな。

前田 ところでね、話がかわるけど、今日たまたま僕も大和君もデニム穿いているじゃない?男性のジーンズ姿って、どう思う?

近藤 私、いちばんスーツが好きなんですよ。でもスーツをいつも着慣れている人がデニムをオシャレに着ていると、その姿にドキッとした経験はありますね。

西形 私も個性を出している人だったらどんな格好でも大丈夫ですね。

近藤 あまりに個性的なファションの人がいるけれども、それは自分勝手で違うと思う。ファッションも会話も思いやりだと思うので、気遣いのある、相手を落ち着かせる服装だったら好感が持てます。変にダサくても違和感を感じるし、逆にキメキメでも引いちゃう。だからちょっとユルいデニム姿って結構好きですね。

西形 ちょっと隙があったりするくらいがいいですよね、男性は。

近藤 オシャレ過ぎると、付き合ってからのプレゼントにも困っちゃう。逆に何もあげないほうがいいんじゃないかって(笑)

前田 僕もこういう仕事をしているからこそ、やり過ぎたオシャレにだけはならないようにしてます。結局男性は女性より出すぎちゃ行けないと思ってもいるし。

西形 それはそれで演出ですね。

近藤 でも前田さん、スーツも似合いますよね。前回のブログでみました。

西形 逆にこういうラフなスタイルを着こなせるほうが、スゴいなと思います。

前田 照れるなぁ。ありがとうございます(笑)。さっきの話に戻るけれども、実は今号の『LEON』で「モテる波乗りデニムのこなしかた」っていう企画をやってるんです。

大和 それはまたすごいタイトルですね。

西形 どんな企画ですか?

前田 波乗りっていわゆるサーフルックを想像されるかもしれないんだけど、真っ紺のおろしたてデニムではなくて、ダメージ部分の綺麗な白糸と海の波を掛けているんです。ときどき若い子が糸が黄色かったり、ペンキが散っているようなダメージデニムを穿いているのを見かけるんだけれども、ああいうのを大人が穿くのは難しいですよ、というメッセージをこめて。ちゃんと綺麗に色落ちしているものだとTシャツにデニムというシンプルな装いの時にもコントラストができてファッション的にもいいし、穿きなれている感じすらする。清潔感もありますしね。だからこそ意図的に波乗りデニムを仕掛けていこうかと。

近藤 面白いですね。

前田 ま、そういうネタもやってるので、こういう色落ちしたデニムも穿いているんですが、女性から見てどんなもんなのかなぁ、と(笑)

西形 いや、素敵だと思いますよ。

近藤 デニムといえば私の周りの大人の男性はみんなユニクロばっかり(笑)

前田 よくできているからね、実際。ただユニクロにないのがこの波乗りデニムの色落ち具合。加工とかにお金がかかるから、プライスも上がるんです。

近藤 それは雑誌に出さなければわからないですからね。訳も分からず「ただのデニムがなんでこんなに高いんだろう?」って言っている大人の男性はいます。

前田 それはそれでひとつの価値観だとは思うけど、なんていうんだろ、僕はたかがデニム、されどデニム、だと思ってる。洋服の基本だとも思うし。その基本が“とりあえず”では自分自身が“とりあえず”な人間になっちゃうようで。白いシャツにジーンズが素敵とかっていう話ではなくて、いちばんシンプルで演出も何もできない格好が60歳になっても似合う男でありたいから、ちゃんとデニムを穿ける男でいたいというか。白洲次郎さんの写真で、へインズのTシャツにリーバイスのデニムを穿いて、ただ座っているだけのあの有名なカットのように。けれどもすごくカッコいいじゃないですか。あれって彼の後ろ側にエピソードがあるからこそ、より印象深いんですよね。

近藤 私、わかります!そういうとってもシンプルなスタイルが似合う男性に、キュンってしちゃった経験がありますもん(笑)

前田 アハハハハ!

近藤 高級な料亭や割烹ではなく、カジュアルなカウンター和食の店にお誘い受けたときだったんですけど、普段パリッとしている人だっただけに、妙にデニムスタイルが似合っていて。そういう瞬間に「素のアナタ」を発見したみたいな感じがして急に親近感が湧きます。

西形 シンプルな服こそ人間性が顕れるから難しいんですね。たしかにデニム姿で素敵な年上男性は私の周りには少ないですね。

前田 シンプルなものって身体のラインはもちろん、人としての在り方とか、立ち居振る舞いがとっても重要になってくるじゃないですか。女性の白いTシャツにデニムが似合うような子はやっぱり男からしても「素敵だな~」と思うわけだし。じゃあ究極は何かというと、デニムをのぞけばやっぱり男性はスーツなわけでしょ。で、勝手なイメージでいうと女性の究極は黒いタイトなワンピース。これがなんの演出もなしに着こなせる人はスゴイと思う。

近藤 実は私の勝負服、黒いワンピースなんですよ。

前田 でしょ!

近藤 それも、装飾品は何も身に付けずに。でもここでこれを言うと、もう今後できないじゃないじゃないですか(笑)。心に秘めていた勝負服なのに、つい言っちゃった(笑)。前田さんの言葉にとても共感できたので。

前田 身体の線もそうだし、立った時の姿勢やラインも強調されるじゃない、黒って。だから堂々と立てば堂々と見えるし、しなっと見せようとしたらそれなりに見える。

近藤 そうなんです。女度がアガった気分になれるんですよ!

前田 すごく緊張する色だしね。

西形 いや~、和葉には勝てないな、これ(笑)

近藤 今日はかなり暴露をしてしまいましたが(笑)勉強になりました。波乗りデニム特集、早速見てみます。

前田 こちらこそありがとうございました。僕も随分と色々な話をしちゃいましたが、ちゃんとまとまるのかなぁ。大和くん、大谷さん、ヨロシクです(笑)

美女たちに囲まれて照れ笑い!?な前田氏。


左からB.R.SHOPスタッフ高岡みさきさん、近藤和葉さん、前田陽一郎氏、西形彩庵さん、ライター大谷繭子。

そしてジョシ好感度が高かった前田氏のデニム姿でゴザイマス。


モテる男とは?第2弾 Vol.1
Oct 21, 2010

前回大きな反響のあった「モテる」企画ですが、今回は二人の女性ゲストを招いて語っていただきました。40代男性は本当に20代女性にモテるのでしょうか?
ご存知前田さんと女子たちの本音満載でお届けします!


前田 今回僕は聞き役で。ガールズトーク、しちゃってください(笑)

近藤 さっきも彩ちゃんと話をしていたんですが私たち20代半ばの女の子って大人の男性好きなんですよね。

西形 思いやりや感謝の気持ちを持っている人が好きですね。それがたまたま大人だったというだけで。

近藤 今の若い世代はメールで気持ちを伝えますが、40代の方々はそういった世代ではないから、きちんと話をしてコミュニケーションをとったうえでこちらの気持ちをちゃんと聞いてくれます。そして年下なのに敬ってくれる。そういうところに惹かれますね。

前田 実際に付き合ったことのある人で年齢差はどれくらい?

近藤 私が22歳のとき、52歳の人と付き合ったことがあります。

前田 マジで!?

大和 それは、わかる気がする

西形 私は7つ上の32歳ですね。やっぱり年上のほうがきちんと女性として扱ってくれますね。それに勉強になります。自分が成長するというか。

前田 女性と男性では精神年齢の差こそあれ社会に出て能動的に生活している人、将来のビジョンを考える段階にきた女性や男性はいずれも大人だと思うんです。だから、最近、年齢で区切ることがいかにナンセンスなことなのかを実感していて。近藤さんも西形さんもそうだけれど25歳で会社を経営する、自分の技術で作品を残していくといった自分の生き方みたいなものをきちんと持っているでしょ。そういう女性はきっと、もうきちんとオトナの女性で、だから年齢は関係ないのかな、と。年上の人と付き合うと勉強になるということだけれど僕自身「人と接する=何かを得ることがある」と思っていて。自分が25歳の女性に一体、何が教えられるんだろう?と思う。世の中の男性みんなが思っていることなんじゃないかな。

大谷 仕事を通じて出会う人で、魅力的な男性は沢山いますよね?どういった部分に惹かれますか?

近藤 「この人のこと好きだな」って思うのって会話のリズム。それがポンポンとリズミカルに合ったときにキュンってしちゃいますね。

前田 相手の機微を感じて馬鹿馬鹿しい話から楽しい話までできる。知性がシンクロするんだろうね。

近藤 そうかもしれないですね。女性の会話をちゃんと聞いてくれて、楽しみつつ入ってきてくれる。逆に自分を前面に出したがる、独りよがりな男性は嫌ですね。でもね、ダメな人に惹かれちゃうことも大いにあるんですよ(笑)

西形 そう(笑)それってなんでだろう。

近藤 男くさい人っていますよね。見た目も口調も。ダメ男ってそういう外見の人に多いんです。そんな人に惹かれちゃうこともあります(笑)

大和 いわゆる結婚しちゃダメな男ってやつね。

近藤・西形 そう、まさにそれですね(笑)

近藤 でもそんなダメ男でも自分が成長できるんですよ。彼が怒っているときには私がこういう態度をとったらどうかな?とか頭を巡らせて。そうすると相手が折れてきたり。自分の成長に繋がる。だからこそ惹かれちゃうんだと思う。

西形 逆に年上だからこそ「何でそこで怒るの?」「もっと寛容にいてくれたらいいのに」と思う時もある。

大和 若いコはぐいぐい引っぱってくれる人に惹かれる傾向にあるよね。だから年上男性と付き合うパターンが増えてきているのかな。

近藤 同世代の男の子では、積極的にアプローチしてくれる人が少ないですね。

前田 そうなの?僕らの世代って女性は女性なのね。友達との線引きがすごく難しいと思っている。この女性いいなと思った瞬間、むしろ友達のラインをキープしていくのが難しくなっちゃう。でも今の若いコたちの会話を聞くに男の子も女の子も、どちらも対等なラインに立っているように見えます。

大和 友達まではすんなりいけても、そこから先に踏み出せないコが多いんじゃないんですか。

前田 じゃあ、なに!?モテるやつは異常にモテてて、モテないやつは友達は沢山いるのにただのワン・オブ・ゼムでしかないこと?

大和 複数ではしょっちゅう会っていても、二人きりでは全く会っていないとか。

近藤 二人っきりで会っていても、ずっと友達の男の子とかいます。同年代ではそういう子のほうが多いですもん。

前田 とはいえ、いつかはいつかはと思っているんじゃないの?でも付き合ってくれるまで猛烈にアプローチするっていう男性が減ってきたのかもね。

西形 秘めているだけじゃ、わからないですよね。

近藤 私は自分から言っちゃうこともありますよ。

前田 でも逆にどうして女性からは言えないものなの?

近藤 むしろ男性から「好きだよ」と言ってもらうことによって女度があがる気がするんです。

西形 女のプライドなのかな。男性か来られたほうが女性は幸せというプライド。固定概念ってありますね。

近藤 でも言わずとも、自分のことを気に入ってくれている男性は目でわかる。目のアプローチは結構好きですね。バーカウンターで隣り合って「君のこと好きだよ」という目をされているとき結構気づきます(笑)

前田 それ、勉強になるなぁ(笑)どういう目なんだろう。

近藤 嬉しそうなんですよ。

大和 男がついそういう目をしてしまう女の子っているんだよね。本当は何とも思っていなかったのに、その目で見られた瞬間に「俺、好きかも」って気持ちになる。

西形 逆にね。

前田 意識の外側にある、自然の表情ってあるのかもね。

近藤 女性って警戒心が強いから、それを上手く解いてスッと入ってきてくれる人はモテるよね。

大和 男側からしても解いた瞬間は快感なんだよね。

前田 解き方ってあるのかな?

西形 女の子がそのとき置かれている状況にもよるんですが、悩んでいた時に察してくれる。それで「頑張れ!」じゃなくて、やんわり励ましてくれる。その言い回しがドンピシャで刺さる時があるんです。

大和 相手の立場に立てる人だよね。すごいカッコいいのに、そういった気遣いができない人もいるから。

前田 そうだね。『LEON』ではたまたまオヤジという言葉を使ってミドルアッパー層に向けて発信はしているけれども、あんまり年齢、年齢というのもナンセンスかな、と。仮想設定として自分より若い男には負けないというのはあっても、結局は年齢ではなく人間力のほうが大事なんだよね。そのために体を鍛える人もいるし、洋服を買ってお洒落をする人もいる。『LEON』でも前向きな男性は魅力的であると謳っていて、そこには年齢はやっぱり関係ないんだよね。

近藤 そこを磨くために人間力のある人と付き合うか、それとも人間力をあげてくれるダメ男と付き合うか(笑)いつも実は右往左往しているんです(笑)

前田 ハハハハハ(笑)なるほど。男から見ても、理知的で凛としていて自立している女性は明らかに魅力的。でも仮に人間的常識に掛けている女性でも顔とか声のトーンとか話している内容が好きで、その魅力的な一部分に抗えなくて好きになっちゃうことも無くはないと思う。

西形 とはいえ私はなにか尊敬する部分がないとダメですね。感性が豊かな人が好きかな。

近藤 といいつつ、彩ちゃんもダメダメな人にも惹かれているよね。

西形 でも後悔はしないですよ。あとになって思い出したりはしますが(笑)

近藤 私は、時間が共有できることが大事。

前田 それ、僕の悩み(笑)とにかく時間がないから。

西形 時間を共有するのってお互いの努力が必要になってきますよね~。

前田 本当に頭が痛い話です(笑)

近藤 女の子って恋愛も上手くいくと、仕事もスムースにいくと思っている子が多いですね。

前田 実際にそうなのかもしれないね。女性という性がそうさせているのかもしれない。

近藤 女性であることを常に実感していたいから、だからその気にさせてくれる異性、彼がいたら「もっと会ってよ」と思う気持ちは分からないではないかな。

前田 そのドキドキがモチベーションになり、朝起きるのが楽しくなったり。

西形 街を歩いていても、この子は一緒に歩いている彼のことが大好きなんだなあ、というのは伝わってくる。

近藤 私は、女性を見て学ぶほうが好きですね。男性ばかり見てたら「なんで会ってくれないの?」なんて愚痴を言う変な女になってしまいそうで。それよりは、ダメ男に対しても「会わなくても理解できるよ」といったスタンスでいられる、落ち着いた女を目指したいと思って。だから素敵な女の子を見ると勉強になります。

西形 時間を共有しすぎると、女性の幅も広がらなくなるということもありますからね。

前田 経済的なことだけではなく、人として自立をしたうえで強くなれる相手ね。10代の時の恋愛と、自分が大人だなと意識し始めたときの恋愛はそこが違う気がする。わくわくする気持ちは未だ残っているけれども、10代との差はどこかある気がします。

近藤 前は相手に依存していたのが、いまは自分が学びあえる関係。そこが大人の恋愛になってきているかなと実感することはあります。


<今回のゲスト>
ランジェリーブランド
デザイナー兼CEO
近藤和葉さん(25歳)

元ミスワールド日本代表。ショーモデル経験を経て前回、モテる企画でご登場いただいた南條千尋さんとともに、ランジェリーブランド「Honey Hearts」を立ち上げる。趣味は海外一人旅とバーホッピングだそう。


アーティスト
西形彩庵さん(25歳)

伝統工芸師である両親のもとに生まれ、幼いころから手織り、手染め、手描きを習い、技法を身につける。その活躍はNHK番組でも取り上げられ、作品は銀座のレストランをはじめ様々なところで飾られている。近藤さんとは気の置けない友人どうし。

こちらは西形さんの作品の一部。
手織りで織った布の上に「筒描き」という技法で絵を描いていきます。

ガールズトークも交えていよいよ話は白熱!
次回Vol.2では勝負服!?や好きな男性の服装についても語っていただきました。
お見逃しなく!!

Audi magazine
Sep 28, 2010

大和 そういえば、ずっと前にやったテーマの「モテる男」は未だに反響があるんですよ。あれはかなりのカウント数でしたね。

前田 え? 本当? う〜ん、なんか微妙(笑)。

大和 さらに詳しいモテ話は次回、第二弾で伺うとして、先日チラッと耳にしたんですが、実はアウディのオーナー向けマガジンである『Audi magazine』も『LEON』編集部が作られているとか。

前田 そうなんです。あまりアナウンスしていませんが、実は『LEON』編集部で作らせていただいてます。きっかけは純粋なコンペティションだったんですが、かれこれ1年はやらせていただいてますね。

大和 『LEON』を作りながらじゃ大変じゃないですか?

前田 大変ですよ、本当に! でも、自分たちのクリエイション能力を別の媒体でも表現したいとはずっと思っていたんで、それはそれで楽しいですよ。しかも『LEON』とは同じ雑誌でもコンセプトはもちろん、作る過程やアウトプットの方法などまったく違いますから、スタッフの育成や編集部員の脳のリフレッシュにとてもいいんです。

大和 なるほど、まったく別のものを作ることで相乗効果もある、と。

前田 僕は『LEON』をファッションマガジンにしようと思ったことは一度もありません。前からずっと言い続けているのですが、ファッションは非常に重要なコミュニケーションツールの一つだと思っています。その洋服を着てどこに行くか、何に乗るか、何を持つかが実は『LEON』にとって一番大切なことなんですね。けれども『LEON』だけをやっているとどうしてもファッション中心の『LEON』のもつ価値観だけに引っ張られちゃう。そこから感覚を時には解放してあげる必要があるんです。そういう理由からも『Audi magazine』にはかなり積極的に取り組んでいます。

大和 でも、僕から見ていると結果強いもの同士が手を組んでいるように見えます(笑)。

前田 アウディはこの不況下にあってヨーロッパではもちろん、全世界的に売れ続けているブランド、間違いなく勝ち組ブランドですよね。当然アウディと『LEON』が手を組むことはさらなる強みになると思いました。僕個人で言うと“『LEON』しかできない編集者”ではなくて、デザインもアプローチも手に取る層も、全く人々に向かってきちんとしたものを提供できる編集者であることを見せたかった、という思いもあるんですけどね。『LEON』とは全く違う理由と、全く違ったアウトプットの仕方をしているので「へ~、同じヤツがこんなに違うものを作れるのね」という視点から見ていただいても面白いんじゃないかなと思います。

大和 う~ん、面白いですね。

前田 面白いですよ。とても勉強になります。ドイツと日本の『Audi magazine』では同じデザインフォーマットを使って、同じベースコンセプトに基づいて本国の企画をそのまま流用したページもあるんですが、大半のページは日本国内で作っています。日本のマーケットを見ながらインターナショナルブランドであるアウディのフィロソフィー、アイデンティティを如何にオーナーに伝えていくか。そういう役割を『Audi magazine』は持っているので、『LEON』のように自分たちでコンセプトを決めて戦略的にメディアをコントロールしながら読者との対話を図っていくというやり方とも全く違うので、面白いです。

大和 確かに、まるで逆のアプローチですよね。

前田 『LEON』はアナログ的な紙の温かさをいかに追求するかを重要視しているけれども、『Audi magazine』は同じ雑誌でありながら、写真の質感も全く変えています。アウディのもつ“非常に硬質”“先進技術の集合体”というブランドイメージを際立たせようとすると、温かみのある写真というよりは、より未来的でソリッドな写真のほうが合います。だから『LEON』では決してやらないようなデジタルライクな写真を使っています。

大和 アウディはここ数年で急激にカッコいいクルマとして認知されてきましたよね。

前田 非常にデザインが洗練されていて、出過ぎてもいないし、引っ込み過ぎてもいない。コンセプトカーの完成度が高いので、そのまま市販車として市場に出回ることもあります。R8なんかまさにそうですよね。『Audi magazine』はその骨格に「intelligence & sensitivity(知性と感性)」というキーワードを持っているのですが、つまりはそれがアウディのブランディングと直結していなきゃいけないんです。まさに知性と感性を刺激するクルマがアウディである、というふうな。

大和 かといって「私、金持ちですよ」と、悪目立ちすることないですよね。パッケージとしての安心感もありますし。僕自身もいま、いちばん乗りたいクルマです。
そして次回は「モテる男」第二弾を企画してますから、前田さん、よろしくお願いしますね!

前田 あ、やっぱりそう来るんだ(笑)。それ、怖いな~。お手柔らかにお願いします(笑)。


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年に数回、アウディオーナーにむけて発刊されている『Audi magazine』。

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前田氏の今日のコーディネートは、シャツはヴィンテージ、パンツはDESIGNWORKS、バッグはmaster-piece、スリッポンはアレキサンダーのもの。

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「写真にこだわる」Vol.2
Aug 25, 2010

大和 その頃から、今の編集者という仕事に携わることは決まっていたかのようですね。前田さんは『LEON』の表紙もご担当されていますよね。

前田 僕自身、“いかにもデジタル”という温かみのない写真は嫌いなんです。やっぱりアナログがもっている柔らかさって人の琴線に触れるものがあると僕は信じていますから。だから『LEON』の写真も常にアナログ感を意識しています。デジタルで撮っているんだけれども、いかにアナログの温かさをキープするか、という事を常に試行錯誤していますね。だからこそ自分で撮る写真でも、黒の部分やちょっとしたにじみ感を意識しちゃいます。一方、インターネットやオンラインといった媒体にはそこでしか表現できないことがあって、twitterなんてまさにその最たる例だと思います。B.R.SHOPというひとつのお店が何かの情報を発信する時も、紙に印刷することに比べたら圧倒的にコストは安いし、タイミングを図って誰もが発信することができますよね。これはデジタルの絶対的メリット。けれど何で僕らが紙をやっているかと言うと、手に持って見たいページを自在に開くことができ、重みを感じることができるから。そこが唯一、紙のメリットだと思っています。事実、紙という最もアナログなものをパソコンやデジカメで作っているわけですよ。原稿だってパソコンで描いていますよね。でも最終的にデジタルによって作られたものを、紙という最もアナログなものに落とし込んでいるわけだから、紙のいいところを最大限に生かさななければいけない、そんな気持ちで作っています。

大和 アナログなものへのこだわりが強いんですね。

前田 僕らや読者の方々は、アナログなものの温かさに触れて大人になったわけで、それを突然デジタルの硬質な感じを持ってこられても、ピンとこないんですよね。だとしたら『LEON』の写真は紙に落とした時にいちばんしっくり感じる写真であるべきだと思っています。今の『LEON』の写真には100%満足していないのが現状。もっと琴線に触れる写真の可能性は絶対あると思っていて。これから時間をかけて、より一層クオリティの高いものを求めたいと思っています。

大和 前田さんが「この写真いいな」と思われる雑誌はありますか?

前田 女性誌、なかでもアッパーミドルに向けた雑誌のもつ落ち着いた雰囲気はとてよくできているなぁ、と思います。

大和 『和楽』や、『婦人画報』とかですね。確かに、あの撮り方でこそ、紙である意味を感じます。

前田 とはいえ『LEON』の場合、写真のクオリティと同時にスピード感が求められているので、ああいった誌面づくりは難しいところでもあります。

大和 あまりに落ち着き過ぎると、引退したご隠居の趣味雑誌になっていく(笑)

前田 そうですね(笑)アクティブに生きている読者と常に対話をしようとすると、スピード感はとても大切です。じゃあ写真やデザインにおいてのスピード感って何かというと、背景ごと採用した「角版(かくはん)写真」ではなく、人物や物だけを切り抜いた表現がその類いかな。実際に『LEON』では角版写真の中に切り抜き写真をボンっと置く手法をよくとります。そのほうがデザインが整理されすぎなくて、動きが出る。バランスが難しいところではありますが。

大和 いままで表紙を担当されていて、「会心の出来栄え」と感じられたのは、どの表紙写真ですか?

前田 そうですね。表紙をディレクションすることになって2年半経ちますが、そのなかで自分が本当に納得できた表紙写真は3回に1回くらいしかないんです。でも、今度8月24日に発売になる号は今年一番の出来栄えになるのでは、と思っています。次に好きなのは2010年5月号ですね。

大和 あの写真は結構インパクトがありましたよね。

前田 何気なくみると「この写真、カッコいいい」で終わっちゃうのですが、実は雑誌業界でみるとかなり意図的な仕掛け満載だったんですよ。

大和 というのは?

前田 書店に並んでいる女性誌の表紙ほぼ9割は被写体が正体で目線があるものなんです。編集者になりたての頃、当時の編集長に「目線がすべてを訴えるんだ!」とさんざん言われてきました。モデルにピントが合っていなければならなくて、だから雑誌はある程度画一化された写真になっていく。でも、そんな画一されたものが本当に正しいのかな?という疑問から、それを完全に無視したのが5月号の表紙です。

大和 なるほど。たしかに春号にも関わらず、ダークトーンだったのを強烈に覚えています。

前田 そう。雑誌に必要なのは「目線」「ピント」「季節感」の3つの王道だと言われています。その全部を捨てて表紙として成立させたのが5月号でした。まず、あえてジローさんの顔からピントが外れるように撮っています。目線をハズして、下を見てうつむきながら考えているポーズ。春号なのにむしろ黒で全体を締めた深~いトーンで撮りました。みんなが同じノウハウで雑誌を作っているんだったら、全く違う角度から攻めた方がよっぽどエキサイティングでしょ。創刊時から表紙は恩田義則さんに撮っていただいているんですが、僕なんかのリクエストにも答えてくれて、むしろそれを楽しんでもくれている。だからこそ『LEON』の写真では色々なことが表現できるんですよ。あの表紙は僕にとって、とても印象深いんです。

大和 次号も楽しみですね。

前田 むしろ、その5月号を超えるかも、と思っているのが、つい先日撮影した表紙。みんなでワイワイ言いながら、なかなか良い表紙になったと思っています。それも前述の雑誌界のセオリーを完全に無視した撮り方で(笑)

先述で話題となった2010年5月号の表紙。

________大和氏が一体どんな絵になっているのか興味深々に聞くも、次号の表紙については一切堅く口を閉ざした前田氏。気になって仕方がない読者の皆さま、書店へGO!ですね☆(大谷)


「写真にこだわる」Vol.1
Aug 25, 2010

ヘルムート・ニュートンの写真が飾られた、なにやら妖しげな都内某会員制バーの個室。前回のテーマ「旅」に引き続き、海外の旅に必ず連れていくという前田氏のこだわりカメラ、そして約2年半に及びディレクションを行ってきた『LEON』表紙へのこだわりについて語っていただきました。

大和 イタリアに引き続き、上海、来週からはドイツ出張とお忙しそうですね。

前田 ずいぶんご無沙汰しちゃってます!

大和 そういえば、前田さんが必ず旅に持っていくものって、あるんですか?

前田 そうですね。いつも必ず持っていくのがこのキャノンのデジタルカメラかな。今回の対談をきっかけに整理してみたんですが、写真のほぼすべてが風景写真なんです。プライベートでも仕事でも、僕にとっての海外の旅は有名観光スポットに行くというよりも空気を嗅ぎに行くといった目的のほうが強いんですね。もしかしたらとっても勿体ない事なのかもしれませんが(笑)、現地の人と喋ることがその場所を知ることに繋がっていると思ってますから。結果、プラプラと歩いていて気になった場所を写真に収めることが多くて。

大和 あとで見かえしたりしますか?

前田 それは殆どないですけどね。作品を撮るのではなく、なんとなく風景を収めるのが好きなんです。でもたまに、思い出しながらフォルダを整理することはあります。特にこのキャノンG10を手に入れてから写真を撮るのがとっても面白くて。旅先ではこれだけを持ってあちこち撮影します。デルタルカメラなのに、すっごくアナログ的な使い方ができるんですよ。露出補正もダイヤルで簡単に調整できるし。なにより、ダイヤル部分のこの感じがたまらなく好き(笑)出来上がった写真も、黒の締め感と青の再現力が秀逸です。

大和 前田さんに送っていただいた写真は空の風景が多いですよね。

前田 確かに空抜けの写真は多いですね。このカメラは夜間撮影でも簡単に光を拾ってくれるし、薄簿の空も綺麗に再現してくれるんですね。自然、そういう写真が多くなっているのかも。

大和 なるほど。写真が好きになったきっかけはなんですか?

前田 父親が写真好きだったんです。今となっては懐かしい一眼レフの「ニコンF」を持っていて、僕の大学入学祝いに「ニコンF3」をくれたんです。それを持って夜の原宿の街を撮ってみたり、人を撮ったりしていた時期がありましたね。当時は渋谷区民会館の中に一般の人でも使える暗室があったんですよ。自分で写真の本を買ってきては現像の方法や、絞りとシャッタースピードの関係、被写界深度を研究していました。それが写真にハマったきっかけかなぁ。今も写真を撮るのはとにかく好きです。

旅には必ず持っていくという前田氏の愛機「Canon G10」。約2年前に購入したそう。「カメラとしてもなかなかクラシックで、絵になる。シャッタースピードもアナログライクでいい」と前田氏。

モテる男の旅スタイル Vol 2
Jul 13, 2010

大谷 前田さんが欠かさず持っていかれる旅グッズを教えてください。

前田 リモワのアルミ製スーツケースを愛用しています。数年前に発売されたユナイテッド・アローズの真っ黒のアルミのトロリーですね。洋服は夏ならドレスシューズ2足、スニーカー1足、街歩きにもジムにも行けるトランクスのようなボードショーツも必ず入れます。あとはi Podと携帯用スピーカーは持っていきますね。ロングトリップでは日本語が恋しくなるので、邦楽を部屋でガンガンかけます。

大谷 ビジネストリップだと、そのほとんどはスーツで通されますか?

前田 セパレートで着られるスーツを2~3着は持っていきます。今回はネイビー、グレンチェック、シアサッカー、モヘア混のライトグレースーツを持っていく予定。これだけ持っていけば、あとはポロシャツとシャツ、それからネイビーのジャケットに白いスラックスをプラスするだけで相当着回しが効くんですよね。

大谷 バカンスでもビジネストリップでも、スマートに過ごすための前田さん流のやり方ってあります?

前田 ハワイのようなリゾート地を除けば、基本的にTシャツは持っていきませんね。よくヨーロッパでもTシャツ姿のアジア人を見かけるのですが、あんまりオススメしません。どんなにデザインコンシャスなTシャツでも、たいていのヨーロッパ人は下着もしくは若い子が着るものと思ってますから。ヨーロッパの街中では多少「きちんとしすぎかな?」と感じる位が丁度いいと思います。変にこなれて見せようと崩すと、逆にしっくりいかない気がします。

大谷 なるほど。ファッション以外でのこだわりはありますか?

前田 ショートトリップの場合は、ガーメントケースとボストンバッグだけで行きます。クルマでの旅行や、一泊出張の時には絶対にボストンバッグですね。実用性ウンヌンではなくて、ボストンバッグが持っている、なんというか、旅のお供のような佇まいが好きなんです。ふだんから使えるものじゃないからこそ、実はいちばん好きなバッグです。よく使っているのは、トラモンターノのキャンバスのボストンバッグ。カラシ色のクラシックなもので。で、そんなボストンバッグへの思いなんてものも含めて、6月24日売りのLEON8月号のバッグ特集ではアニアリーさんとコラボレーションしたボストンバッグを紹介してます。鮮やかなオレンジ色のボストンですが、シンプルなのに、ポケットもたくさんあって、我ながらよく出来たなあ、と思っています。

大谷 なんだか女性でも使えそうですね。でも実は前田さん、出張ぎらいと耳にしたことがあるのですが。

前田 あ、はい(笑)。正直、面倒くさがりなので…。ま、あと好きなものがすぐ手の届くところにないっていうのがストレス(笑)。オートバイやらクルマやら、細かいものまで。なので、出張も旅行も実は割とどうでもよかったり(笑)。でも行くとなったら、せめて道ずれにするものはお気に入りに囲まれていたい。

大谷 だからこそ、徹底的にこだわるのですね。

前田 本当だったら、自転車くらいなら持っていきたいですもん。これでイタリアの街を走ったらどれだけ楽しいことか。機内持ち込みをしようか、いつも本気で考えます(笑)

モテる男の旅スタイル Vol 1
Jun 13, 2010

イタリアメンズファッション最大の展示会である「ピッティ・イマジーネ・ウォモ」、続けて開催されるミラノ・メンズコレクション、パリ・メンズコレクションに長期出張予定の前田氏。そんな多忙を極めるスケジュールの合間を縫って今月もインタビューに答えていただきました。今回のテーマは旅。前田氏の海外出張のスタイルや情報収集の仕方についてお伺いしました。


大谷 もうすぐピッティ(「ピッティ・イマジーネ・ウォモ」以下ピッティ)ですね。毎年、この時期には必ず行かれているそうですが、自由時間ってあるんですか?

前田 夜はたいてい、クライアントやバイヤーの方々とディナーですね。これからのLEONの戦略そのものや、ブランド、ショップ側の戦略、バイイングの状況などを意見交換する場となるので、僕にとっては一番大事なことだったりします。

大谷 じゃあバールでラテン美女の誘惑があったり(笑)なんてことは、ない?

前田 いや、マジでそんな暇、ないです!

大谷 とはいえ、海外での立ち居振る舞いで気をつけられていることはありますよね?

前田 常に堂々としていようとは心がけていますね。街を歩くときも猫背にならないように、堂々と胸を張って歩くことは意識しています。日本にいるとき以上に、海外では強く意識していますね。あとはレディーファースト。自分がどう見られているか以上に、不作法な民族とは思われたくないので、そこはきちんと守っています。それに現地の常識、非常識も頭に入れておきます。

大谷 仕事で行かれるときは、やはりあちらこちらに鋭く眼を光らせていらっしゃるんでしょうか?街のイタリア男のファッションをチェックをされたり。

前田 う~ん、どうだろう。漠然とはもちろん見てますけど…。コレクションでもランウェイのクリエイションひとつひとつを湛然に見るというよりも、もっと全体を見ているというか…。まあ、森を見に行く感じかな?。全体の流れがどこに向かおうとしているのかを掴みにいって、そこから木や枝を掘り出す感じ、ですかね。

大谷 要は現地の雰囲気を感じるために行く、という?。

前田 なんでしょうかね? さっきも言ったように、クライアントやバイヤーの人たちとのコミュニケーションが第一目的なんですが、空気というか、そんなものを感じるのも案外大事だと思ってます。コレクションの様子なんて今やインターネットで即日手に入りますからね。でもその情報はファッション通やジャーナリストの人たちが分析してくれればいいかな? 僕はその後ろに見え隠れする企業としてのブランドの戦略を感じ取りたいんです。って言うとカッコつけすぎかな? メモも取らないですからね。

大谷 それもまた意外ですね!

前田 もちろん以前は取ってましたよ。勉強だと思って。実際、大抵のジャーナリストの人たちはきちんとメモされています。でも、何回か行くうちに、記憶に残ったものが素直な印象だと思うようになって。

大谷 前回もおっしゃっていたように、そんな印象を日本の空の色や、季節、世間の動向に照らし合わせて、LEONのスタイルに置き換えていくわけですね。

前田 です(笑)!

大谷 ところで日本人女性がヨーロッパに行くと、目が肥えた現地の人に「それ、どこで買ったの?」と、聞かれることがあるみたいですが、それだけ日本人のファッションセンスも一目置かれるようになってきたのかな、と思うんですが、前田さんもやっぱり、「お洒落だね」なんてイタリア人に声をかけられるんですか?

前田 声を掛けられているのは、B.R.SHOPのホームページでもおなじみの干場くん(笑)。特に女性ジャーナリストから(笑)。まあ冗談はともかく「そのバッグどこの?」とか「スーツはオーダーか?」とかは聞かれますね。だからあえてドメスティックブランドで全身固めていくこともあります(笑)。「日本もなかなかやるだろ~」って感じで。

大谷 イタリア人から見る日本のファッションはどうなんですか?。

前田 彼らは日本のクリエイションをとても評価してくれていると思いますよ。色々学びたいとも思っているようだし。同時にアジアという巨大マーケットの入り口として、世界一うるさいと言われる日本人の目に敵うものを作るというのは彼らにとっても重要なようです。なかには「日本で売れるものは世界でも売れる」という人もいますから。というのも、イタリア人の根底に流れているのは実は、クラシックでコンサバティブな感覚だと思うんです。だからストリートとクラシックや、モードとストリートの融合を簡単にやってしまう日本のマーケットの柔軟性に興味があるようだし、事実日本人は柔軟だと思いますよ。

バーatticに登場した前田氏のスーツスタイル。
この日は渋谷の東急セルリアンタワーで行われたブルーベル主催による「シガーサービスコンクール」の審査員を務めたそう。
ダブルのスーツはシャリ感が気に入っているという“トニック2000”を使ったドーメルのオーダーのスーツ。バッグもオーダーで、ラファエロ・メニクッチのもの。

男の仕事とは?Vol2
Jun 09, 2010

今回の対談で松村氏が興味津津だったのが、前田氏の仕事道具。お願いして、その一部を見せていただきました。

年を経るごとにそぎ落としていっているという仕事道具。携帯、メモ、財布、手帳はいつも必ずバッグにしのばせているそう。「なんといってもこだわりは、お洒落じゃない能率手帳でしょうか(笑)」
使い込んで味のあるルイ・ヴィトンの手帳の中身は、使いやすさ重視のレフィルを。

手帳のメモ欄には、インタビューメモや誌面の絵コンテ、半年の企画ネタがびっしりと書き込まれている。

デザイナーから上がってきたばかりのレコメンドページの構成をi Phoneでチェック。
なかには鳥の鳴き声を集めた癒し系アプリを発見!


男の仕事とは?Vol1
May 23, 2010

今回のゲストはB.R.SHOP統括マネージャーの松村敬一氏。親身かつ的確なスタイリングアドバイスに顧客からの信頼も厚い松村氏が聞く、レオン前田氏が考える男の仕事スタイル、トレンドの仕掛けかたとは?


松村 日々接客をしていると、「雑誌の『LEON』で見たのですが・・・」というお客様からの問い合わせが非常に多いんです。前田さんが仕掛けたアイテムは必ずヒットする、という印象があるのですが、どうやって流行をつかみ、また、仕掛けていらっしゃるんですか?

前田 僕は自分自身をファッショニスタとも、トレンドリーダーとも、ましてや仕掛け屋なんていうふうにも思ったことはないです。しいて言えばマーケッターに近いとは思っているかもしれません。株価の動向、事件、政治、ともすると天気予報の長期予測なども参考にしながら、その年、その月に売れるものを予想しているにすぎないんですが。ただ一年を通じて時代や消費者の視点にたって、何が求められているのかを常にイメージするようにはしています。

松村 その辺りをもっと詳しく聞かせてください!

前田 “着る”とか“食べる”という、直接自分の体と接するものに関しては突発的流行は生まれにくい、というのが僕の印象です。人間は絶対に辛い方向や、自分の潜在的欲求にはないものを求めません。昨日までとても快適な生活をしていたのに、「これが最新トレンドだ」と言ったからって、辛い生活はしませんよね。ただその一方で新しい刺激には弱い、という側面も持っていることも確か。この“刺激”を予測するのはとても難しい。たとえば昔流行した“たまごっち”は突発的ブームでした。だからああいうものがそろそろブームになるから仕掛けてみよう、なんてこと、僕にはできません。娯楽のような普段の生活に必要がない新しい“刺激”を具体的に予測するのは不可能です。けれども今のファッションの動向を見たうえで、「次にこういうテイストのものが来るだろうな」ということは分かります。これだけファッションがカジュアル&コンフォートの方向に向いているなかで、突如、今秋ガチガチのクラシックスーツがくる、ということはまずあり得ませんからね。けれども、コンフォートのなかで、肩パッド入りジャケットが復活する可能性はあるんですよね。これはもしかすると仕掛けられるかもしれない、と。

松村 なるほど。突如、思いもよらない流行が起こる、なんてことはあり得ないんですね。

前田 そうですね。洋服に関して言うと、人の動きを制約してはいけない。窮屈な服が流行ったとしても、それは一時的なものです。2年ほど前に読者に好評だった企画があるんですが、それが“裾幅18センチのパンツ”です。今となっては定番化していますが、これはとても理にかなったものだったんです。だからヒットすると確信していたし、事実そういう流れを作ることができました。たとえば女性と太った男性でウエストを比べると3倍の差はありますが、足首回りはそれほど、差は出てこない。そこで、上で絞って膝位置を高く見せ、足首を隠すという旧来の美脚パンツの理論ではなく、細い部位(足首)に向かってテーパードさせることで足首が強調され、細く見えるパンツを打ち出したんです。ファッションは軽快かつコンフォートで、しかもお洒落にみえるもの、という時代の気分にもマッチしたんですね。

松村 今や、一般の方にも浸透していますよね。

前田 それを証明すべく、誌面でイタリアでのスナップを載せたり、編集部員全員で実際に履いてみたりもしました。

松村 正しい流行の見極め方、というのはあるのでしょうか?

前田 う〜ん、そもそも流行というのは誰かが流行らそうとして仕掛けられた見せかけのものか、時代の気分しかない、と僕は思ってます。

松村 ということはレオンは流行を掴んでいるわけではない?

前田 確かに流行のようなものは、取り入れてます。それが時代の気分になり得るから。で、僕らがやっていることはそのなかから何を選択するのが読者や僕たちにとって最良の選択か、という選別なんですね。たとえばランダムに10人の人を想定します。ただそれは自分たちがターゲット、つまり共感してくれる可能性があると考えている人たちです。そこには太った人もやせている人も、背の高い人も背の低い人もいるはずです。で、その人たちの半分以上に喜んでもらえるものを探し出します。さらにもう一方で、今度は同じ10人でも違う半数以上のグループが喜んでもらえるものを探し出す。そうすれば10人のうちの7、8割は僕らの提案に満足してくれたことになるじゃないですか。そしてそのふたつの提案を受け入れてくれた人がコアな読者になってくれて、そのどちらかに満足してくれた人は存在的にコアな読者になり得ます。一方、どちらの提案も受け入れられない人は勇気を持って、自分たちのターゲットではない、と判断する、そんなところです。

松村 流行りの要素を蓄積させて、満を持して、誌面で打ち出すのですね。

前田 それを拡大させていくといつのまにか、大きな流れ、つまり自分たちが仕掛けた流行になる、という感じでしょうか。

大和 お客さんが成熟してきたからこそ、セレクトする洋服にも時代性、マーケットはもちろん、日本特有の空の色までを考慮して、日常で本当に着られてしかも自然に「ああ、確かにこういうものが欲しかったんだ」と思っていただけるようなものを紹介していかないと、確かに通用しなくなってきましたね。

前田 特に僕の仕事は、読者とショップをつなぐ“接客係”だと思っています。自分が作るものに対しては、常に公平かつ誠実でありたい。

松村 僕自身もお客様の似合わないものは絶対におすすめしません。大和からも、どうしても欲しいものがあったとしたら、格好良く着るためのアイデアを提案しなさいと常々、言われています。前田さんのおっしゃることがとても共感できますね。

大和 販売という仕事はえてして、短期的な結果を追い求めすぎて、長期的な目標を見失ってしまいがちなんですよね。

前田 お客様、読者を大切にしつつ、数字も意識する。矛盾のなかをかいくぐりながら、如何にして目標に向かっていくかが、まさに、僕らの仕事の醍醐味。とはいえ勢いも大切なのが『LEON』の難しいところでもあります。ときにはいい意味で読者を裏切ることも大切なんです。一方で「自分たちを分かってくれているんだ」という同意も大切。モノを作っていく立場にとってはその両者がとても大きな葛藤としてありますね。

松村 興味があるのが、『LEON』の変遷だったりするんですが。

前田 僕が参加する直前の『LEON』は「ちょい不良」に続いて「ちょいロクデナシ」というキャッチコピーを出した頃でした。雑誌として非常にスピード感があった時期でしたね。僕が入ったのはそれから一年後、とにかくなにをやっても話題になるといわれた最後の頃(笑)でしたね。今からおよそ4年と少し前くらいです。

松村 今も『LEON』は「何を仕掛けても売れる」という印象が強いです(笑)。

前田 もちろんそうじゃなきゃいけないんですけど、急激な拡大、つまり急激なブームは急激な縮小を生みます。要するに『LEON』という存在がただの“刺激”ではまずいぞ、と。僕が一番心配したのはそこでした。だから2年前、編集長代理を任されるようになって最初にやったことは多少スピードが緩くなっても、確実に読者の信頼を得ていく、つまり生活の中のちょっとした変化のきっかけを提案してくれる雑誌への変革でした。なんとなく時代のスピード感も危うくなってきているように思えて、若干スピードを緩めた方がむしろ時代感に合っているんじゃないか、と思ったのも理由のひとつです。

松村 具体的に言うとどんなことなんですか?

前田 う〜ん、説明するのは難しいんですけど、それまでの『LEON』が黒シャツのイメージだったとすると、白シャツというか。ただ、皆が持っているだろう今までの白シャツじゃあモテませんよ、という(笑)。ほら、黒いシャツって、単純に考えても白いシャツを持っている人より絶対にニッチじゃないですか。だから黒が際立つわけですけど、白というベーシックなアイテムで、皆さんが持っているアイテムでも際立つ方法はありますよ、というやり方に変えたんです。「ちょい不良」はちょっと違うけど、だからといってただのコンサバもイヤ、という読者にも訴えられる雑誌にしよう、と。

松村 つまり先ほどもおっしゃっていた“時代を読む”ということですね。確かにB.R.SHOPもちょうど2階をオープンさせるか、しないかの頃だったでしょうか。スーツもガチガチのクラシックから、「もっと自由に」という着こなしの提案をしてから売り上げがグッと伸びた次期でした。

前田 さらに大きかったのはリーマンショックでしたね。これは世界経済が今だに尾を引いている問題ですが、今考えればやっぱりその予兆はあったんです。それがきっとあの頃の僕の肌感覚だったのかな。結果的にリーマンショックの半年前あたりからじょじょにスピードを落として、少し違うテイストに持っていったことが幸いして、僕らにとってはほぼ影響はありませんでしたね。というか、むしろ部数が伸びたくらいでした。その経験もあって、読者が自分たちに何を期待してくれているのか、そしてメッセージをどんな人に訴えかけたいのかが分かれば、大きく間違えることはないんじゃないかな、と確信するようになりました。で、改めて読者の信頼を得られればまた、新たな「ちょい不良」という刺激の提案もできるんじゃないか、と。

松村 それは販売の世界においても共通して言えることかもしれないですね。
勉強になります。実は、今回どうしても伺いたかったんですが、前田さんは仕事において大きな挫折感を味わったことはあるのでしょうか。

前田 そりゃありますよ(笑)。前の会社にいたころ、雑誌の爆発的ヒットに関わることができました。60万人を相手にする雑誌の仕掛け方と拡大のさせ方を見た一方で、その60万人がざ~っと引いていくのも同時に見てきたんです。これは本当に、怖かった。「ああ、こんなことをしていたら読者が引いちゃう」なんて思っていてもまだ若くて、立場も中堅クラスの僕にはなす術がなかった。挫折、というより恐怖体験ですね。その辺りから当時の諸先輩に生意気言うようになったりして、ついには会社のやり方にまで文句を言っちゃったりして(笑)。30歳で編集部署から外されたときには、居場所もなくなってしまった気がして、もう出版界を辞めようと思いましたね。実は『LEON』に来てすぐの頃にも、求められる情報の量の多さと、それの半分も理解できない未熟な自分と、そして自分のスキルの稚拙さに絶望して「僕がやっていける世界ではない」と、2度目の挫折を感じました。もう、今度こそこの世界から逃げ出そうって。挫折が人を育てるというけれども、本当の限界を味わったときは、とにかくここから逃げたいという気持ちしか持てないんだってことを知りました(笑)。結果こうしていられるのはむしろ運かな(笑)。ようやくその緊張感を楽しめるようになってきましたけど、もうあんな思いはしたくないなあ(笑)。

松村 いや〜意外です。読者に大きな影響を及ぼしている前田さんでもそんな葛藤をされていた時期があったとは。それもきっと経験値なんでしょうね。僕も仕事のしかたで日々、悩むことがあるのですが、今日のお話をいただいて、少し勇気をもらった気がします。今日はありがとうございました。

フィナモレのシャツはB.R.SHOPの別注アイテム。ブーツはトッズのウィンターゴンミーニ、パンツはボッテガ・ヴェネタ。

長年愛用しているというベルトは、アンドレア ダミーコ。遊び心のあるポップなレタリングが気に入っているそう。

くたっとした風合いのバッグはコーチ。

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