過去は振り返らない。誰にでも丁寧に接する。

松下　経営者もそうですよね。ジャック・ウェルチなど、アメリカの有名どころにはコンサルタントが付くのが当たり前。僕も会社の次期幹部の研修プランを立てていますが、リーダーとなる人には、常識や知識に加えて胆識が必須。何千人、何万人といる従業人を路頭に迷わせないよう、慎重かつ大胆に会社の舵取りができることが大事です。アスリートでも経営者でも、トップに立つ人にはその素質が欠かせません。

山本　そう思うと、超がつくコンサルタントに日本人はいませんね。松下さんはアスリートのメンタルトレーナーにしても、経営者のコンサルタントにしても才能があると思います。一流の人々に囲まれ、良い試合、そうでない試合もたくさん見てきて、それを伝える言葉を持っている。これからはぜひ、そちらの方面で活躍していただきたいです。

松下　いや～。僕はもういいです。これからは遊んで暮らしたい。それが経営者との違いかな。経営者になるような方は、いくつになっても第一線にいたいと思うタイプですよね。どうですか？

山本　そうですね。まだ引退は考えられない…仕事の後のお酒はまた格別ですし（笑）。

松下　僕はいつでもお酒が美味しいから、やっぱりタイプが違う（笑）。この間もね、「スズキ株式会社」会長の鈴木修さんとお会いしましたが、あの方はいまだに世界中を飛び回っているうえ、「次はコレをするんだ！」って、先のことしか話さない。「過去、俺はこんなことをしてきた」なんて、ほとんどおっしゃらないです。

山本　振り返っている暇がないのでしょうね。

松下　そうだと思います。よく喋るし、元気だし、すごいバイタリティーですよね。

山本　さすが超一流の経営者だけありますね。他にも松下さんが思う一流の秘訣があれば、ぜひ教えていただきたいです。

松下　“丁寧さ”ですかね。長嶋茂雄さんがそうです。僕は昨年５月にアナウンス部から移動になりまして、その際、皆さんにご挨拶状を出しましたら、長嶋さんがすぐ「どうしちゃったの～!?」ってお電話くださって。「アナウンス部から移ることになりました」と報告したら「どうして～？」っておっしゃるから、「会社の方針で…」と申し上げたら、「頑張ってね。今度食事にでも行きましょう！」って言っていただきましてね。

山本　それは、うれしいですね、感動しちゃいますね！

松下　そういう方なんですね。監督時代から「松下さん、TBSの若い人、何人連れてきてもいいから、食事でもしましょう」って言っていただいて、遠征先などでお食事をご一緒することがありましたが、必ず先にお店に着いていて「さあ、どうぞ～！」と迎えてくださる。僕らだって15分前には着いているのに！

山本　確かに！　偉い方ほどその気がありますね。

松下　しかも、長嶋さんは絶対に「松下くん」とは呼ばない。どんな若い人も“さん”付けで呼んでらっしゃいますね。

山本　なるほど。僕も今後参考にします。いや～、本日は楽しくてためになるお話をありがとうございました！

松下　いえいえ、他にも色々楽しい話がいっぱいありますから、今度是非第二段でもやりましょう！