今までサルト系のジャケットというと日本のビジネスシーンにはクラシックすぎて馴染みにくかったり、若々しく着こなすには少々難易度が高かったのも事実。「じゃあ今年はどんなスーツがいいの?」という声が聞こえてきそうですが、今季、日本に上陸したばかりのナポリ生まれのブランド「GAIOLA(ガイオラ)」にはなにやら久々に大ヒットの匂いがするんです。ナポリ界の重鎮であるアントニオ・ラ・ピニョッラから独立したデザイナーが満を持して立ち上げたブランドですが、マシンメイドの既製品でありながら彼がモデリングするスタイルは“ナポリ仕立て”そのもの。構築的な肩やアームホール、胸の立体感、極上の着心地はナポリスタイルを継承しつつ、ご覧のとおりパンツは極めて細身のシャープなシルエットで現代風にアップデイトされているんです。しかもパンツを外注に出さず、すべて自社工場で作っているのはとても珍しいこと。デザイナー自ら理想を具現化してくれる工場を捜し歩き、やっと見つけた工場を自社工場として買い取ったというのだから、そりゃ気合の入り方が違いますよね。既製にも関わらず妥協を一切しないモノづくり、サルトリアの気質を継いだ「GAIOLA(ガイオラ)」はいわばハイブリッドのクラシコ。クルマに例えると人気のアウディといった感じでしょうか。ナポリスタイルが初めてという人にも入りやすく、モードにこなしたい人も着やすいとあって、やっぱりただモノではない匂いがしませんか?実はこの「GAIOLA(ガイオラ)」、B.R.SHOPでも一週間で30着が完売ともの凄い勢いで売れているんです。ひとたび着てみると、まるで空気に包まれたような軽~い着心地。違いが袖を通した途端にわかるそうで、秒速で購入を決めていく人がほとんどだそう。仕立てがいいのに今の気分はしっかりとらえているんですね。売れるのにはちゃんと理由があるんです!
スタイリング : 大西 陽一 / RESPECT
文 : 大谷 繭子
ナポリ仕立ての重鎮から独立、’06年に自身のブランドを立ち上げたベネデット デ ペトリーロ。 名門サルトで修業を積んだ経験を糧に古き良きナポリのスタイルを守りながらモダンなデザインを高次元で上手にミックスしています。職人気質でモノづくりに対して並々ならぬ思いがあり、それゆえパンツも自社一貫で生産を行っているというコダワリよう。
ダイナミックでエレガントな服を好む人に向けて作られており、ナポリ湾から望む海原の陰影からインスピレーションを得ているそう。日本人体型に合わせて型をおこしているので、胸元も浮いた感じが一切せず、フィット感も抜群。ぽっちゃりさんはスッキリと、痩せている人も適度にボリュームが加わるので、どんな体型にもマッチして着映度も高いのが魅力なんです。
少しの余りもないギリギリまで攻めたコンパクトシルエット。しかしながら動かしやすいアームはまさにこちらのブランドの真骨頂。袖に強く雨を降らせた“マニカカミーチャ”はいま着るとなると少し恥ずかしディテールですが、それをそぎ落としながら極上の着心地を追及しているあたりがさすが!