街の再生を担う漁師に託した想い

大和　震災からようやく一年。多くの支援団体やチャリティイベントなどの活動が行われる中、率直な疑問なのですが、なぜアドボート ジャパンを立ち上げようと思ったのですか。

菅原　震災直後は、裸足のまま逃げてきた被災者の皆さんのために靴を届けに行く活動をしていました。そんな中、釜石を訪れた時に、以前からうちのお店のお馴染みだった方から、兄であるヒロ（佐々木洋裕 ）さんをご紹介いただきました。

佐々木洋　そこで、三陸沿岸部がどんな状況にあるかをお話しさせていただいたんですよ。船やトラック、資材や倉庫に至るまで、仕事に必要なものはすべて流されてしまって、漁を始めたくても始められない、という現状を。

佐々木淳　そうなんです。確かに漁協組合からの援助はありましたが、そんなものではとても補いきれないくらいの損害を、僕らは被ってしまったので。

菅原　そこで僕は、知り合いだったヒロさんに船を購入してあげたい、何とか漁を再開させてあげたいと思ったのですが……。実際、船ってとっても高額で、しかもヒロさんだけにプレゼントしても、三陸沿岸部の復興の根本的な解決にはならないと思ったんです。

大和　というのは具体的に、どういうことなんでしょう。

菅原　たった一人の漁師さんに船を買っても、その人が周りからやっかまれるだけだし、そもそも人口の8割が漁業や水産加工業に携わっている沿岸部の職業環境を考えると、まずは多くの漁師さんが"獲ることができる環境"を整えることができるようにならないと、街は再生していかないんじゃないか、って考えたんですよね。

佐々木淳　そうなんです。確かに漁協組合からの援助はありましたが、そんなものではとても補いきれないくらいの損害を、僕らは被ってしまったので。

佐々木洋　多くの義援金が善意によって集められ、それが被災者の元に届けられている、というような報道を目にすることがあるでしょう。でも、実際には我々には、ほとんどと言って良いほど届いていません。しかも、その大部分は行政を通してしまうため、より公平性を求めて、分配もどんどん遅れてしまっているのが現状なんです。

大和　それでより多くの漁師さんのもとにダイレクトに届く形のアドボートプロジェクトを開始したわけですね。