TOPIC PATH
home  >  
ACROSS THE BORDER Vol.2【後編】
前のページに戻る

archives

スペースコンポーザー
谷川じゅんじ
>Vol. 002(後編)

スペースコンポーザー
谷川じゅんじ
>Vol. 002(前編)

マネックスグループ株式会社代表取締役社長CEO 松本 大
>Vol. 001(後編)

マネックスグループ株式会社代表取締役社長CEO 松本 大
>Vol. 001(前編)

スタイルは“枠”ではなく“軸”。軸がぶれていなければ最後は必ずその人らしくなる。

アンディ ひとつのプロジェクトが立ち上がる時、アイデアが浮かばないこともあるんですか。

谷川 それだけは無いんですよ。オリエンテーションを聞いている段階から、最初に絵になって空気が浮かぶんです。人がたくさんいるとか、静寂とか、空気感がおぼろげに浮かんで、そこからその空気を実現するための方法論に落ちていく。

アンディ へぇ~、すごいな。

谷川 ここにたくさんある本も全てを熟読している訳ではなくて、その中にいつか使うであろう1枚の写真があるわけですよ。それをとどめておくためにこの本がここにあるんです。

アンディ なるほどね。将来的になにか大きい事考えていたりします?

谷川 教育の事には興味がありますね。特に食育は大切だと思っています。バークレーにオーガニックフード、地産地消の母と言われているアリス・ウォータースさんのレストランがあるのですが、知り合いの農家の食材しか使わないと言っているんです。それだけの極めてシンプルな事ですが、それだけのことを長年続けている中には色々なクリエイションや、人が育ったりという副次的な産物がある。“食べる=生きる”ことだから、食べる行為自体をもっと理解すべきだしその先に社会が見えてくるから、食べることを通じて世の中を見ることをもっとやっていきたいと思います。

photo

アンディ 食、人、モノ、空間と、どれをとってもアンバランスでは成り立ちませんよね。

谷川 やっぱり人が社会をつくるから、人をどう作るかが大切。その意味でいま子供たちの学びの環境はシステマティックには整理できていると思うけど、劇的に世の中の仕組みが変わっていくなかで、したたかに歩みきっていくようなバランス能力、交渉力といった感度を高めていく必要があるなぁ、と感じているんです。僕らの先輩方は今の日本を作るために頑張られたとおもうし、その上に今の僕らの暮らしがあるので尊敬はしている。けれども生み出してよかったもの、良くなかったものとも向き合っているワケですよ。それが分かってきたときに、次の行動を考えていく立ち居振る舞いが大切ですよね。

アンディ ファッションもそうですよね。スキなものを着たい時にきていいということではないし、オケージョンを考えることが大切。

谷川 まわりとの関係を考えないとどう振る舞っていいか、見えてこないじゃないですか。人間は社会の生き物だからそこに出かけていくときに、場違いとか、相手にとって不条理なときもあるわけで。バランスを保ちながらみんなと関係していける事が、今の時代を生きていく人にとっての一つの素養なんじゃないかと思っていて。もっともっと色々なファッションを知っていいと思うし、自分が関わる最初の一歩にファッションがあると思う。何を食べるか、ひいていえば選ぶかがその人の生き方にそのまま戻ってくる。決して高級だからいいのではなく、自分に合ったものを調べて、きちんと選ぶことが重要ですよね。

アンディ 今ではトレンドという言葉も、もはや古い言葉に聞こえてきちゃっているしね。

谷川 僕らバブルの申し子なので、西麻布に行くとみんな黒い服を着ていたときもあるワケですよ(笑)それはその時代で良かったけれど、いまはそういう時代じゃないと思う。全身黒い人を否定はしないけれど、「俺はこういうスタイルだ」「こういうテーマだからこうだよね」というのをどう抜いていくかだと思うんです。

photo

アンディ 話を聞いてすごく興味深いのが、今の話ってじゅんじさんの価値観だったり哲学そのものじゃないですか。人々の価値観の方向性をすでにじゅんじさんが察知していて、当然プロジェクトもそっちを向いたものになっていくのかな。ギラギラ感というよりも、もっとシンプルなものになっていく。

谷川 スタイルという言葉が仕事でもよく出てくるんですよ。でも最初にスタイルを意識すると、陥りがちなのが枠を作ってしまうこと。そして、その枠の中にはめようと一生懸命になる。でもスタイルって実は軸なんですよね。この軸を掴んでいるから、どこまで手を伸ばしても軸がぶれないから、その人それぞれのスタイルの中ですごく自由に生きていたりするんですよ。

アンディ ファッションでもそうですよね。

谷川 カジュアルでもフォーマルでも、軸がぶれていなければ最後は必ずその人らしくなる。色々なことを考えながら自分らしさを合わせていくのは楽しい。僕らは今まで「社交」という教育は受けてこなかったけれども、どんどん話しかけて知らない人と話すべきだし、すれば色々なものが変わると思うんです。そこで、知らない人が自分をどう感じるかの最初の一歩のときに、自分が着ているファッションが大きな役割を果たすと思っている。だから自分に何が似合うかを自分なりに色々試すのは楽しみ半分、自分を豊かに高めていくための真面目なテーマも半分含んでいるんです。だからファッションも奥が深くて面白い!


TANIGAWA’S WORKS

平城遷都1300年祭記念「薬師寺ひかり絵巻」
会期|2010年6月5日・6日
会場|お薬師寺大講堂特設舞台 photo

中国、唐代、仏教の真義を究めるため、長安からインドという途方も無い距離を旅した玄奘三蔵の目に映ったであろうタクラマカン砂漠の星々を、最新鋭のプラネタリウムを使い、薬師寺に現存する建物で最も古い国宝東院堂、国宝聖観世音菩薩と四天王像が祭られた暗室化したお堂に映し出す。視覚のみならず、宮廷音楽“伶楽(れいがく)”を正倉院の復元楽器で演奏。聴覚にも訴える演出で、拝観者に時空を超えた体験を与えた。



ANDY’S STYLE photo

ナビゲーターという自分のスタンスを最大限理解しているアンディのスタイリング。ラルディーニのネイビージャケットと、PT05のデニムパンツというベーシックな合わせをベースに、ふんわりとしたスカーフのような独特の表情を持つタイ ユア タイのネクタイと、発色のいいチーフがアクセント。「見た目の清潔感と、ちょっとした自己主張のバランスに気をつけています。」とのこと。

photo: Kozai Hiroshi
Hair&Make Yoshida Hazuki
text: Ohtani Mayuko





*当サイトの税込価格表示は、掲載時の消費税率に応じた価格で記載しております。
お間違えになりませんようご注意ください。