<ゲスト>MUSIC CAMP 代表取締役 宮田 信さん
--たしかに、ファッションの世界でも、いろんなテイストがごちゃ混ぜになっています。アイテムとしては、クラシカルなテーラードジャケットだけど、着こなしはモダンテイストだったり。いろんな業界において、ミックスのカタチが新しいモノを作っていくのかなと思います。だからこそ、私はいちいちそのルーツが知りたくなるんです。この洋服の何ステッチがどうこうという蘊蓄でなく、人間がどういう過程でどういう文化が産まれて、どんな生活様式で、こういう形のものを着るようになったとか。そういう成り立ちの背景のようなものが知りたいんです。
宮田:僕も俗にいう、ワールドミュージックとか民族音楽というものに興味があるわけではないんです。力を入れているもののひとつに、ロサンゼルスのチカーノ系(メキシコ系アメリカ人)音楽がありますが、彼らのフォークアート的な感覚はヒップホップやギャング系ファッションにも影響を与えているんです。うちが得意にしているのは主にアメリカでエスニシティな背景を持ちながら、ロックやヒップホップのアティテュードで作ったものにインドやラテンのテイストが入ったり。ベースがしっかりしているからこそ、ミックスされたときにはまた違った魅力を奏でるんです。
「ムラートス」オマール・ソーサ ¥2,730
ヨーロッパで絶大な人気を誇るキューバ系のピアニスト。先日、青山のブルーノートで公演を終えたばかり。ヨーロッパと北アフリカの感覚を取り入れてた最先端ジャズ。
--私はずっとギターが好きで、実は学生時代にちょっとバンドをやっていた時期がありまして。ややハード、フォーク、クラシックとはまる周期はあるんですが、アコースティックギターはいまでも家でよく弾いています。休みも取れないし、旅行にも行けないので、気を紛らわすってとこもあるんですが。下手なりに自分で弾くってところが、聴くのとまた違っていい。
宮田:自分で弾くのっていいですよね。僕は音楽以外の趣味を持つようにしているんですよ。自転車、大好きです。メカ的でなく、自転車で街を放浪するのが好きなんです。自転車をブラブラこいでいると仕事から離れて、何もかも違う感覚になれるところが最高ですね。
--そういう余裕が大事ですよね。いまは便利な道具は増えたはいいが、かえって忙しくなっている。だから休むと罪悪感を感じちゃうんですよね。例えば2日間絶対仕事するのやめようとすると、これでいいかなってずっと考えちゃって、逆に疲れてきちゃうんです。会社戻った方がラクなんですよ。根本的に日本人気質。洋服やっていると、イタリア人と交流することが多いじゃないですか。イタリア人の感覚っていうのはうらやましいですよ。どんなに納期を早くしてほしくても、絶対8月は仕事しないですからね。世界中から要求されても、絶対仕事しない。1か月間。
宮田:考えられないですよね。
--だからこそイタリア人は日本人が発想できないような、遊び心のある、おもしろい服を考える。日本人が考える服っていうのは、技術はすごいんですけど、遊びがないんですよね。遊ぶと変にアバンギャルドになっちゃったりするんですよ。
宮田:わかりますよ。イタリアの音楽もそうですもん。メロディーが最高に美しいですから。量じゃなくて質で生きてる世界ですからね。うらやましいですね。ちょっとね、時間の余裕というか、心の余裕があると活動がすごく楽になる。
--それはありますね。最近僕は、何に対しても罪悪感を感じてると自分の感性が落ちてきちゃう気がして。だから自分に1時間でも2時間でも時間を作って、感性が豊かになるような行動をするようにしてるんですよ。そうすることによって、いろんなビジネスも新しいアイディアが出てくるし、プラスになることもありますね。実は、将来的にやりたいことのひとつに「ライブハウス」があるんです。Tシャツの人もいれば、ビジネスマンがいたりとか。「こういう系統の人じゃなきゃダメ」みたいなのを一切なくして、それなりのスタンスを持ってる大人ならどんな雰囲気の人だろうが受け入れるみたいな。
宮田:日本人ってこう、同質を好むから、たとえばすごくいつもキメキメの人はすごくラフな人がいる集団の中に入りたがらない。その逆もあるし。いつもラフな人は「俺はこんなじゃねぇよ」っていうなんかあるじゃないですか。それが社交を邪魔して、すごくもったいないことしてるんじゃないかなかって思うんですよね。日本って社交って感覚がない。ライブハウス、いいですね。最近、大人が行ける店が少なくなったから、ぜひ実現してください。そのときは、いいアーティストを紹介しますよ。