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オーダーメイドに挑戦しようという方、必読!


長らくメンズ・ファッション誌の編集者を務めた松尾健太郎さんと、業界でも数少ない女性テーラーであるB.R.SHOPの森沢麗奈が、男のスーツとオーダーメイドについて語り合いました。きちんとしたサイズの服を着る大切さ、自分に合ったよいテーラーの選び方など、これからオーダーメイドに挑戦しようという方には、必読の内容です。




松尾健太郎

松尾健太郎・まつおけんたろう

メンズ・イーエックス、時計ビギンなどの編集長を経て、現在は雑誌ENGINEクリエイティブ・ディレクター。クラシコ・イタリアや本格靴など、数々のブームを牽引。故・落合正勝氏の担当を10年以上務めた経験も。

松尾 女性のテーラーと聞いて、抱いていたイメージと全然違うのでびっくりしました。まだとてもお若いんですね。そもそもこの道に入るきっかけは、何だったんでしょうか?

森沢 美大を卒業後、自分でレディスの洋服を作っていたのですが、洋服というものを突き詰めて行くうちに、メンズのスーツの世界に興味を持ってしまったんです。そこで某老舗テーラーにて、35年間もテーラーを勤められた方に師事して、3年間修業をしました。

松尾 なるほど。やはり、行き着くところは、メンズのテーラードというのは、よくわかる気がします。すべての服の、基本ですからね。

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森沢 そこで、今日のテーマはオーダースーツです。松尾さんなりの、オーダーについての、ご意見を伺えればと思っています。

松尾 はい。私は、男の服というのは、サイズが9割だと思っています。自分の体に合ったものを着るというのは、スーツを着る上で、一番大切なことです。逆に、サイズさえ合っていれば、あとはどうでもいい(笑)。使われている生地が安いものでも、縫製がそれなりでも、きちんとしたフィッティングの服を着ていれば、それなりに見えます。袖のボタンが開くとか、開かないとか、私は雑誌のページで散々やってきましたが、実は些細なことだと思います。

森沢 それはちょっと意外です。メンズ・イーエックスの編集長だった方ですから、すごくディテールにこだわるんだと思っていました。

松尾 ディテールは、最後の最後に、ちょっとだけこだわればいいんです。一番大切なのは、全体のプロポーション。そして、その基本はサイズが合っているかどうか、ということです。私が、一番マズいと思うのは、例えば、背の小さい方が、大きめの服を着ることです。背が小さいと、得てして大きく見せようと、大きめのサイズを選びがちなのですが、これは逆効果です。小さめのサイズの服を、すっきり着た方が、よほど背が高く見えるものです。

森沢 太っている方が、小さめの服をお召しになるもの、よくないですね。ある程度、ゆったりしたシルエットのものを着た方が、スマートに見える。

松尾 太っている人が、パツンパツンの服を着ているのは、最悪ですね。かく言う私も、若い頃と比べると、ずいぶんと肉がついてしまって、昔作ったスーツのウエストは、すべてキツくなってしまいました。困ったものです。

森沢 お直しをされているんですか?

松尾 そうです。きちんと作られたものは、長く着ることを前提に、後からサイズを直せるように考えられています。使われている生地の量が、既製品より多いんですね。だから、より多く出せる。以前、服飾評論家の落合正勝さんが亡くなったとき、膨大なオーダースーツのコレクションを、ヤフーオークションに出品したことがあります。故人とご家族の意志に基づいてやったのですが、ある方から、「すべてオーダーメイドのなんだから、他人が着られるはずがない」とのご指摘を頂戴したことがあります。しかし、実はオーダー品のほうが、お直しさえすれば、より多くの人にフィットするんです。ヨーロッパでは、父親のオーダースーツを息子に譲るといったことが、当たり前のようにされています。しかし、父と子の体型がまったく同じはずがない。やはりオーダースーツのほうが、懐が深いんです。

森沢 初めてオーダーをしてみようという方に、何かアドバイスはありますか?


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松尾 プロの森沢さんを前にして、偉そうなことを言うのは、大変気が引けますが、一消費者としての、「オーダースーツを買うコツ」といったものなら、お話できるかも知れません。私も、いろいろ失敗しましたから(笑)

森沢 今まで何着くらい作られたのですか?

松尾 スーツは、30着程度だと思います。そのうちの半分は、ペコラ銀座の佐藤英明さんに作ってもらったものです。彼とは、もう20年来の友人で、私の体ことを何でもわかっているし、無理難題も聞いてくれるんです。私が店に現れると、嫌な顔をされますけど。「また儲からない客が来た」とね(笑)

森沢 20年は長いですね。

松尾 出会った頃は、お互い、まだ20代でした。彼は当時イタリアから帰って来たばかりで、私がかつて在籍していたメンズ・イーエックス編集部に、ふらりと現れたんですよ。一目見て、「もじゃもじゃ頭の、変なヤツが来たな」と思ったのを覚えています。ところが、実際に服を縫う姿を見せてもらったら、イタリア仕込みの、素晴らしいテクニックを持っていたんです。そこで、いっぺんで彼のファンになりました。

森沢 私のテーラー仲間が、佐藤さんのところで修業をしています。

松尾 私も歳を取るわけですね(笑)。ところで、ひとつのところでずっと作り続けるというのは、オーダーをする上で、大切なことだと思います。オーダー品とはいえ、最初から、100%気に入る服が出来上がるのは、稀です。お互い話合って、お互いのことをよく知って、だんだんと理想に近づけて行くのがオーダーメイドという作業だと思います。止めた方がいいのは、いろいろなところで作るということです。特に、よほど頻繁に行かれる方を除いて、海外では絶対に作らない方がいい。きちんと自分の希望を伝えられないし、お直しだってできない。出来上がったものに対して、文句ひとつ言うのも大変ですから。

森沢 お客様とのコミュニケーションも仕事のうちだと思っています。洋服の話をされるのがお好きな方が多くて、私はそんなお話をお聞きしているのが好きなんです。勉強にもなりますし。

松尾 自分が「ここぞ」と決めたところへ、ずっと通うのが、オーダー道の鉄則でしょうか。「テーラーと医者は似ている」とは、昔からよく言われることですが、まさにその通りで、テーラーは、かかりつけ医のようなものだと思います。長い人生の間で、太ったり、痩せたり、仕事がうまく行かなかったり、妻と離婚したり(笑)。いろいろありますが、そういうところまで、相談できるのが、本当のテーラーでしょう。イタリアなんかだと、お客さんは、サロンのような店内で、半日ばかり喋っていたりしますから。人間的な相性も大事でしょうね。

森沢 ご自分に合ったところで作られるというのが大切だと思います。例えば、お歳を召したお客様が多いデパートや老舗テーラーでは、どうしてもフィッティングを甘くしがちです。お客様からの「窮屈だ」というクレームをもっとも恐れているからです。ですから、今までずっとセレクトショップでお買い物をなさっていたお客様が、いきなり老舗でオーダーをされても、仕上がったものは、大きめに感じられることが多いと聞きます。


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松尾 そうですね。B.R.SHOPをはじめ、セレクトに通うお客さんというのは、お洒落に対して積極的な人が多いですから、まったく畑違いのデパートや老舗に行っても、きっと満足されないと思います。自分が今まで通っていたお店に、オーダーのサービスがあるなら、まず、そこを試してみるべきでしょう。

森沢 私どものところでは、逆に、ぎりぎりまでラインを攻めるリクエストをされる方が多いですね。しかし、攻めすぎると、窮屈になってしまう。そこのところの加減が難しいんです。このへんは、プロとして、ぜひおまかせ頂きたいと思っています。

松尾 やはり、どうせオーダーするなら、こちらのように、今のファッションをわかっている店員さんがいるところでするべきです。ネクタイやシャツまで、トータルでコーディネイトできるところなら、パーフェクトです。日本のテーラー界の最大の問題は、テーラー自身がお洒落ではないということですね。20年前の服を、そのまま着ていたりする。それではダメで、やはりテーラー自身が、お洒落の手本にならなければいけません。

森沢 おっしゃる通りだと思います。最終的に大切になってくるのは、感覚的な部分。なんとなく、美容院と似ているかもしれませんね。切る人によって、センスが違うし、仕上がりの全然印象が違って来る。そういう感覚でテーラーを選んでもらうといいでしょう。

松尾 なるほど。ところで、女性のテーラーというのは珍しいですね。女性から見た、好感の持てるスーツって、どんなものですか?

森沢 あまりにもタイトで、ピタピタな服を着ている男性は好きではないですね。今は細身の服が流行っていますが、やりすぎはよくないと思います。極端に丈が短かったり、裾幅が狭かったりすると、カッコよく見えません。やはり、体と洋服の間に、ある程度の空間があったほうが、キレイに見えると思います。

松尾 私も同じ意見です。男の服に限らず、何事も「過ぎたるは、なお及ばざるがごとし」ということですね。今日は勉強になりました。ありがとうございました。

森沢 こちらこそ、ありがとうございました。



企画・構成 松尾健太郎 / Photo 鈴木 泰之

聞き手 森沢麗奈 B.R.SHOP
個人でアトリエを構えるメンズスーツの仕立て職人に弟子入り後、独立して仕立ての下請けをしていたという、異色の経歴を持つ。女性ながら作りの面からもお客様にアドバイスできる希少な存在。



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