先日発売された世界文化社の「本格スーツ大研究」という雑誌仕事で、セレクトショップのオリジナルスーツを解体し、その「真の実力」を探るという取材の一部始終を見させてもらいました。そこで感じたのは、信じられない程手の込んだクオリティーのスーツが、ぎりぎりまで価格を抑えて販売されていること。この時ナポリのサルト、コスタンティーノ・プンツォさんがイタリアのスーツとの違いや仕様の解説をして頂いたのだが、私も見ていて、キートンやベルベストのスーツをただバラして真似たというレベルのスーツではないという事が良く伝わって来た。彼曰く、とにかく有名なセレクトのスーツは、イタリアのスーツをよく研究し、まんま真似するのではなく、しっかりと日本人や中国人の職人の手技をミックスし、日本人の体型に合わせたパターンアレンジしている所がすごい!と言っていた。
残念な事に、この企画にはB.R.SHOPのオリジナルスーツは、出てい無かったけれど間違いなくレベルは同じ水準だと言い切ってもいいものだ。さて、今回のスーツの最大のポイントは、型紙の変化。一見、昨年のものと同じように見えるけれど、その気心地は確実に進歩している。
以前に比べ前肩になり、脇のスペースをせめ肩から脇腹に掛けて体にそった立体的なラインが生まれるようなパターンに改良されている。安さを競うような既製服だと、こうしたシルエットの上着はただきついだけで、腕を上下に動かすと襟が抜けてしまうし、着たまま車を運転なんてしようものなら、腕が突っ張ってハンドル操作に支障が出た。
ところが、今期のスーツではそうしたストレスがほとんどなく、限りなくオーダースーツの着心地とシルエットに近づいてきたように感じられる。コーディネートは、イタリアのファッションスナップで良く見かけるネイビースーツにネイビーの無地タイという王道パターン。Vゾーンがシンプルな分、ネクタイやスーツの生地のクオリティーの善し悪しが目立つ組み合わせだ。ネクタイの色をスーツに比べて明るくするとシャープなイメージになり、逆に濃くするとシックなイメージをアピール出来る。
靴は、イタリア流という事で茶。イタリア人は、茶系の髪の人が多いのでネイビースーツに茶靴が似合うけれど、黒髪の人が多い日本人には、靴以外に茶系の小物をプラスしてバランスをとるとスタイリングがまとまります。
スタイリング・文 : 大西 陽一 / RESPECT
この秋冬から型紙を今まで以上に進化させ、ナポリのスーツのような立体感を持たせつつ身体にそったシャープなシルエットが得られるのものになった。それでいて、着てみると窮屈でないというのが、今回のスーツのすごい所。腕をどのように動かしてもスーツの襟が抜けないところは、まさしくオーダースーツ並みの手作業がされている証。
ネクタイは、プレーンノットで結び小剣をあえて見せるように横にずらせている。小剣をずらす結び方は、ナポリの洋服関係者が良くやっているもので、着こなしにちょっとだけ崩した部分を作り、決め決めのスタイリングにみえないようにするテクニックらしい。それと、ネクタイがその昔スカーフの様な巻物だった頃の結び方のように、ふわっと広がって盛り上がった感じを意識しているともいわれている。無地のネクタイのときは、このくらい遊んでみないとVゾーンにポイントが出来ないのでオススメです。
白のリネンのポケットチーフは夏に限らず活躍するアイティム。シルクだと光沢感が出てちょっとフォーマルすぎるので、あまりビジネス向きとはいえません。今回はイタリアのムンガイのリネンチーフを使用。織り方は、まず正方形のチーフを長方形になるように半分に織り、今度は二つ重なったチーフの角を手で持って交差させます。この時、この角が二つの山になるように重ねるのがポイント。次は、サイドを内側に折り、下に突き出た部分を半分に折りかえせば、写真のように仕上がります。